|
Milva - Ave Maria 先日のUOTライブの最後の曲としてお送りしたピアソラの「Ave Maria」。終演後に、数名の方から、「あの曲は感動した。」「思わず涙が出た。」という感想をいただいた。ふだんからピアソラの曲に触れていると、そのあたりが麻痺してくるのかもしれないが、タンゴ初心者の方の多くが、こうした感想を抱いたのは、新鮮な驚きだった。
確かに、この曲はいい曲であろう。ただ、この曲はピアソラの曲ではあっても、タンゴとはとても言えない。だから、タンゴのライブで演奏されることはほとんどなく、YouTubeを見ても、クラシック系のミュージシャンによって演奏されているのがほとんどだ。僕も、この曲についてよく知っているわけではないのだが、「名演というのはどれですか?」というような質問も受けたので、後日YouTubeを見てみてたところ、多くのクラシック演奏に混じって、このミルバ版が見つかった。すでに年老いた最近のミルバではあるが、これはこれで枯れた(失礼!姐さんはいつまでもステキです!)いい味わいが出ている。よって、現状では、これをベストとさせていただき、紹介しようと思う。
聞いてわかるように、この曲は、非常にストリングス向けの楽曲である。先日のUOTの編成でも、4人バイオリンがいたので、それなりに形になったと思うが、弦が少ないとちょっと演奏は厳しいかもしれない。その点、オルケスタの体裁をアマチュアながら整えている我々のような楽団には向いている曲かもしれない。アプローチとしては、タンゴというよりクラシックなので、クラシックの演奏家にとっては取り組みやすいだろう。ピアソラという作曲家は、必ずしもタンゴの作曲家ではない。クラシック(特にバロック)的な要素、ジャズ的な要素、映画音楽的な要素、いろいろなアプローチをしてくる。もちろん、タンゴ的なエッセンスはそこに含まれる。この曲も、基本的にはバロック的なアプローチでありながらも、リズム形態として時折のぞく4ビートや「チャチャッチャ」系のリズム、そして、憂いを含んだタンゴ的なメロディーを含んでいる。まさにピアソラ音楽の極致と言ってもいいだろう。
もちろん「Ave Maria」というタイトルに感じられる、キリスト教の宗教音楽的な響きは全面に広がっている。ただし、ピアソラの多くの曲が、この点では似通っていることを忘れてはならない。ピアソラの音楽では、バロック的な通奏低音が常に流れており、それは、あの有名な「リベルタンゴ」でもまったく変わらない。ピアソラを代表する「天使」シリーズでも、このようなモチーフはあちらこちらに見られる。僕がピアソラの曲を聴いて、「これはまさに破壊と復活、贖罪の音楽だ」と思うのは、まさにそこにあるわけだが、この曲でもそうした彼独特の「赦し」と「希望」は色濃く出ていると思う。そこに人が涙するのは、実に自然なことだ。
そんな曲をしっかりと意味をもって演奏できたことに、自分ながら少し驚いているが、やはり、気持ちは伝わるということなのではないだろうか。もちろん、この曲を演奏するときは、ものすごく気持ちを込める。テンポも普通のタンゴと比べるとものすごくゆっくりだし、メンバーの気持ちをそろえないとカッコ悪い。だから、演奏する側も、メンバーの呼吸を感じながら、演奏することになる。ピアソラのスローなタイトルは常にそうだが、音数が少ない中で、メンバーの呼吸を感じながら、ググッと音楽を高めたりなだめたりしていくのは、演奏する側にとっても、ほかに代えようのない楽しみである。タンゴミュージシャンの端くれとして言わせてもらえるならば、クラシックだけじゃなく、タンゴ的なコラソンとその演奏技法を学んだ我々だから出せるノリもあると思う。そこで生まれる調和と躍動と緩和。それこそが、この曲の醍醐味なのだろう。
何にしても、この曲を見る目が少し変わったライブとなった。やはりライブでないとわからないことはたくさんある。
|

- >
- エンターテインメント
- >
- 音楽
- >
- その他音楽



