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さて、タンゴの基本は前回解説した「4つ打ち」であるが、ずっと4つ打ちだけやっていては、リズムに変化がなさ過ぎる。そこで、4つ打ちとともに頻出するのが「チャチャッチャ」というリズムだ。いい言い方がないので、音で聴いた通り、「チャチャッチャ」形とここでは呼んでおくが、譜面的に書き表すなら、こんな感じとなる。
どの例でも、「チャチャッチャ」という共通パターンが見えてくるが、この形のリズムが、タンゴという音楽を非常に豊かなものにしているのは間違いない。それまでは4つ打ちでずっと進行してきて、クライマックスになるとこの「チャチャッチャ」形のリズムで、勢いを変える。場合によっては、音楽はさらにドライブしていくし、場合によっては、このリズムによって音楽の粒がそろって、すごく引き締まったものにもなる。とにかく、4つ打ちと並んで、タンゴでは最重要リズムと言っていい。
この場合も、2/4で書かれているタンゴの譜面では、上記のようなシンプルな形でしか普通は書かれていないが、跳ねるようなリズムを弾き出すのであれば、本来の表記では、以下のように書くべきなのだろう。
このように、通常はこのリズム形態が出てきた場合、このような短いスタッカートで音を切りながら演奏するのが普通だ。タンゴの譜面というのは、見えない休符を感じて弾くようなものと言ってもいいかもしれない。こういう弾き方をすると、たとえば、ダリエンソとかカナロのようなチャキチャキ系のタンゴにピタリとはまる。そして、こういうリズムの場合、アクセント記号が書かれていなくても、たいていの場合、下記の位置にアクセントが来る。2番目の音にアクセントを置くのが、奏法的にもごく自然だし、休符が一種の跳躍のようにもなるからだ。
ということで、この形をよく見ると、初めから2音目のアクセントというのは、基本の4つ打ちに当てはめると、1拍目の裏拍であることがわかる。タンゴは4ビートで、しかも1拍、3拍にアクセントというのが基本だと前回書いたが、このリズム形が出てくると、裏拍にどうしてもアクセントが来ることになる。つまりはシンコペーションしているわけだ。だからこそ、リズムが変化した!という感じをリスナーやダンサーは強く受けるはず。このリズムチェンジは、なんとなく「悪戯っぽい」感じや、「やんちゃな」感じを聴いている側にもたらす。それまでのオーダー通りの4つ打ちから解放されたような感じというか。この気まぐれっぽい跳躍感が、タンゴの本場、ブエノスアイレスの人達の気質にすごく通じているのだと、僕はひそかに思っている。これこそまさに「ポルテ−ニョ」な感じなのだと。
ただ、このリズム形態は、単にチャキチャキと跳ねるような感じだけにはとどまらない。それについては、また次回まとめてみようと思う。
(続く)
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