塵も積もれば山となる。

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課題レポート

あけましておめでとうございます。最近は記事を書くのをさぼって、その代わりに本を読んだり色々なことを考えていました。その考えはまだまとまっていないので、記事にはできませんが、あまり更新しないでおくのも何かもったいないような気がするので、あまり出来は良くありませんが大学のレポート課題でも載せてみます。レポート課題は「授業で扱った作品のどれかひとつについて2000字程度で論じなさい」というものでした。これは村上春樹の『風の歌を聴け』について書いたものです。




 この小説の終盤に、毎年クリスマスイヴ(「僕」の誕生日)に「ハッピー・バースデイ、そしてホワイト・クリスマス」と原稿の一枚目に書かれた小説を、鼠は僕に対して送ってきてくれるという話がある。しかし、これは実はこの『風の歌を聴け』が文学賞に応募された時の題名であったのだ。だが、村上春樹は表紙の一番上に英字でこの題名を残しただけで、小説の題名を『風の歌を聴け』へと変更している。では、村上春樹が応募後に題名を変更してまで伝えたかった、「風(の歌)」とはいったい何を表しているのだろうか。
 発表者の考察には、
『風の歌を聴け』のタイトルの「風の歌」と直接言えそうなものは、ハートフィールドの「火星の井戸」の風だけであり、この風は時の間をさまよう存在である。そして、作品に通底している「あらゆるものは通りすぎる。誰にもそれを捉えることはできない」や「時はあまりにも早く流れる」、「そして二度と戻ってはこなかった」といった時の流れの中で過ぎ去ってしまうものへの思いが反映されたタイトルだともいえるであろう。
と、ある。
 しかし、この小説に出てくる「風(の歌)」はこれだけではない。「僕」の三人目の相手が自殺をしたことを語る場面には、「彼女の死体は新学期が始まるまで誰にも気づかれず、まるまる二週間風に吹かれてぶら下がっていた」とある。また、「風(の歌)」が出てくる別の場面がある。鼠が「僕」に対して、以前奈良に旅行に行った際に見た古墳のことを語る場面である。「俺は黙って古墳を眺め、水面を渡る風に耳を澄ませた。その時に俺が感じた気持ちはね、とても言葉じゃ言えない。いや、気持ちなんてものじゃないね。まるですっぽりと包みこまれちまうような感覚さ。つまりね、蝉や蛙や蜘蛛や風。みんなが一体になって宇宙を流れていくんだ。」
 前者においては、風は自殺した女の子の体を揺らしている。後者において風が吹いているのは、古墳(つまりは墓である)の周りである。この二つの場面から見てみると、つまり風とは暗に「死」を示す単語として用いられているのである。小説の冒頭において小説の期間を具体的な日付を書くことによって示し、作中に何回も曜日を出すことによって日数のトリックを仕掛けたことからも、村上春樹がこの小説をとても計算して書いたことがわかる。その彼がわざわざ、「死」を描く場面において「風」という言葉を使ったことがただの偶然とは言えないのではないだろうか。また、発表者が指摘した場面についても、その後若者は銃で自殺していることから、ここでも「風」と「死」は関連しているといえる。
 また、『風の歌を聴け』全体に関していえるのは,「僕」がじつに多くの死者たちに言及していることである。第一章には、「僕が絶版になったままのハートフィールドの最初の一冊を偶然手に入れたのは股の間にひどい皮膚病を抱えていた中学三年生の夏休みであった。僕にその本をくれた叔父は三年後に腸の癌を患い、体中をずたずたに切り裂かれ、体の入口と出口にプラスチックのパイプを詰め込まれたまま苦しみ抜いて死んだ。」とある。別の叔父は,終戦の2日後に自分が埋めた地雷を踏んで,上海で死んでいる。作中に登場する虚構の作家デレク・ハートフィールドも,「右手にヒットラーの肖像画を抱え、左手に傘をさしたまま」エンパイア・ステート・ビルの屋上から飛び下りて死んだということになっている。また、「僕」は,「暗い心を持つものは暗い夢しか見ない。もっと暗い心は夢さえも見ない」といつも言っていた祖母が七十九歳で亡くなったときに,手を伸ばしてまぶたをそっと閉じてやったときのことを思い出している。第一章だけで何人もの死者に関する言及があるが,『風の歌を聴け』にはまだまだ多くの死者たちが登場する。双子の妹を持つ左手の指が4本しかない女のセリフには、
「お父さんは五年前に脳腫瘍で死んだの。ひどかったわ。丸二年苦しんでね。私たちはそれでお金を使い果たしたのよ。きれいさっぱり何もなし。おまけに家族はクタクタになって空中分解。よくある話よ。そうでしょ?」(第二十章)
と、ある。また、前述のとおり「僕が寝た三番目の女の子」についても亡くなったときのことが描かれている。
 『風の歌を聴け』は一六〇ページの中編小説である。その小説にこれだけ多くの死者について言及がなされているのは一見奇妙である。しかし、前述の日程のトリックが、加藤典洋氏が『村上春樹 イエローページ』で指摘してるように、鼠が死者でありその鼠と会うために別の世界を行き来していることを意味するものであったなら、なおさら題名の「風」が表すものは「死」であるといえるのではないだろうか。そして、「風」が「死」をあらわしているのであれば、この小説の長さにもかかわらず多くの人の死について言及されているのは不思議なことではない。つまり、題名の「風の歌を聴け」は、「(鼠を含む)死者の言葉を聴け」と解釈できるのではないだろうか。


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