■雪と海の、ロマンス ■

大西洋航路の船長航海記を経て、現在は東京を拠点に港と船をめぐる毎日です。

航海記(完)

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帰国

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やや南寄りの大圏航路を辿ってきた機体は、最終的に真南に進路をとって、本州東側にアプローチしていた。
左舷窓側の席にいたわたしは、日本海側から懐かしい北アルプスを目にした。
(まだ雪があんなにあるぜ。)

またこれからも日本にいなければならないわたしだが、久しぶりの帰国となると懐かしい。
昨シーズン、十何年かぶりの早い降雪によって11月にすべることができたが、来季はもっと滑れるに違いない。

わたしは船乗りとして、それなりにやりがいを持って生きているつもりだが、男の人生、それだけでは足りない。

スキーという趣味があって、若い時分から、随分時間と金をかけた。
正直言うと、今の仕事さえ捨てようと思ったことがあるほどだ。
それだけのめりこめて、よかったと思っている。

これからの東京生活、スキーがそれなりにできる環境に置かれる一方で、しばらく海とはお別れだ。


短い乗船だった。
が、船長としてわたしは、努力をし、自分で考え、代えがたい経験をした。
(それだけでいいじゃないか。)
何度もそう繰り返した。


写真
■列島に接近する機内から。日本海から見た北アルプスの山々。


これにて「航海記」は終了です。
次回から本ブログは、「陸に上がった船乗りの情けない日々」を綴って、またぼちぼち続いていきます。

ロンドン (3)

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そういえば、帰国後はすぐに東京で働かなければならない。
通勤用のジャケットもロンドンで着ていたものでは痛みが激しい・・・そのことを思い出した。
ナイツブリッジのハケットHackettで、夏服を2,3点手に入れ、その後ヒースローに向かった。

帰りのフライトはJAL便だが、KIX(関空)便がJALしかなかったので仕方がない。
JALにはあまり乗っているとはいえないが、まあANAと似たようなものだ。
出張族のオヤジの中にはよく、CAの平均年齢を理由にANAを贔屓にしている人がいるが、自分の女になる可能性のないCAの年齢など、わたしは気にしない。
(だが、CAと結婚した友人がいて、これはちょっとうらやましい。ほんのちょっとだけ。)

JALの機体は、いつものヒースローの混雑で遅れたが、ゆっくりと離陸した。
JALもANAと同じように、窓は曇りが少なく、窓側席を選んでよかったと思った。
わたしが住んでいたころには建設中だった近所のウィンブリー競技場が、おおかた完成しているようだ。眼下に見える。

次のわたしの東京での仕事は、またも飛び回る仕事だが、出張では、今度は極東だけ、欧州に来ることはないだろう。
だからもう当分、ロンドンに来ることはなさそうだ。


写真
上■搭乗前のJALの777型機。
下■ウィンブリー競技場。ロンドンオリンピックの会場にもなるという。

ロンドン (2)

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リオからの帰国の途。
ロンドンでの宿泊は、支社にいる元同僚の家に世話になった。

平日だがバーベキューをしてもらい、東京の本社からの出張者とも合流して、情報交換をした。
(というか、飲んだくれただけだったりする。)

ここに来てようやく、下船して任を解かれた開放感を実感した。

集まった仲間たちは、みなそれぞれの部署で多くの仕事を抱え、主体的に動いており、頼もしい。
だが、海運会社は規模に比して少数精鋭に傾きすぎになっている、と思う。
「企業は人」なのだろうが、中期的には人不足が最大の懸念ではないかと感じる。


4月頭、ロンドンは大雪だったという。
もしかしたら、今もアルプスには雪が大量に残っているのではないか、と思った。
だったらフランクフルト経由で帰国して、束の間オーストリーで滑っても良かったかな、とも思う。
(まあ、すでに手遅れだが。)


写真
■お世話になった同僚の住むウッドサイドパーク。ロンドン北部郊外の美しい街。

ロンドン (1)

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結局下船後のフライトはロンドン経由にした。
ニューヨークからKIX(関空)への直行便がないからだ。

経由地がロンドンでもニューヨークになっても、わざと一泊してゆっくりしようと思っていた。
その辺は、船長になった今、自由だ。
(海が好きな若者は商船乗りになったらいい。近年、待遇面では本当にお勧めの仕事になった。)

ニューヨークは、かつて頻繁に出張していたこともあり、なじみの街だという事ができる。
アメリカのくせにかなり洗練された都市で、いわゆる「アメリカン」でないところが良い。
先日、アンハサウェイの「プラダを着た悪魔」を観たが、わたしの中のニューヨークも、まさにあんな感じだ。

一方ロンドンは、生まれたばかりの娘が3年間育ったところで、海外に慣れないわたしたち家族はさまざまな不便に泣かされた。
だがむろん、それとひきかえに日本にはないすばらしさも満喫し、単に好きとか嫌いとかでは言い表せない思いがある。

わが家が去った昨秋以降も、ロンドンは相変わらずのようで、なんとなく安心した。
リオからのBA機はフラットシートで、酒も飲まずに熟睡、到着のわたしにはロンドンの風が気持ちよく、でもどことなく寂しい。


写真
上■相変わらずのピカデリーサーカス。
下■これまたいつものリージェントストリート。

リオデジャネイロ (2)

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リオのダウンタウンにあるホテルで、夕方目覚めた。
腹が減っていたので、街に出た。

ショッピングストリートとは反対方向の、港の埠頭に足を向けた。
むかしはいくつか並んでいたナイトクラブが、かなり減っている。
だが懐かしい「フロリダ」という店だけは残っている。

地元のビールをたのんで、飲んで、そしてなんだかそれだけで食欲がなくなった。
「フロリダ」の2階はストリップをやっている。が、OPENまでまだ時間がある。


当時、若かったわたしは年上の操舵手に(嫌々)連れて行かれ、日本人には見られないような体系の女性の踊りを目にした。
しかし、その踊り子は性転換手術をした男ということで、とたんに気分が悪くなった。
昔の話である。

小瓶を空けたわたしは、早々にホテルに戻って、もう一度眠った。

写真
上■これがそのフロリダ。懐かしく、相変わらずさびれている。
下■朝のリオデジャネイロ。

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