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いよいよ今年最後の号になってしまいました。今年1年、皆さんにとって、
どんな1年だったでしょうか。10月より取り上げてきた「子ども特集」の
最終回であるこの号では、「子どもと遊び」について見ていきます。「子
どもの仕事は遊ぶこと」などとも言われます。子どもにとって遊びとは何
か、考えてみましょう。
【コンテンツ】
★ 世界にある子どもの遊び
★ 子どもとおもちゃ
【世界にある子どもの遊び】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
世界にはたくさんの遊びがあります。子どもの生活について知りたいと
思うとき、子どもがどんなことをして遊ぶのかも知りたくなります。しかし、
所詮、遊びは遊ぶための手段でしかありません。ただ動き回ることでも、
子どもが遊びだと思えば、それは遊びと言えるでしょう。遊びについての
知識は、子どもがどうしたら遊べるかを知る手段にはなり得ません。それ
を踏まえたうえで、世界における子どもの遊びを紹介します。
★世界共通の遊び★
遊びの種類には世界的に共通するものが多くあります。鬼ごっこ、チャ
ンバラ、棒引き、唄あそび、竹馬、騎馬戦、馬とび、逆立ち、こままわし、
木登り、水泳、野球、たこあげ、かざぐるま、昆虫採集などは、一見日本
独自のものにも思えますが、名称は異なっても、他の国にも昔からある遊
びです。歴史を見ても、石蹴りは、ローマ時代に発明され、日本には明治
時代に輸入されていますし、お手玉も、紀元前700〜1200年前からある世界
的に長い歴史を持つ遊びです。現代においても、いくつかの国の間で共通
する遊び、遊ぶ方法、遊び場は多数あります。テレビゲーム、コンピュー
ターゲーム、トランプ、ウノ、ディズニーランド、日本のアニメ、映画、
スポーツなどなど、挙げればきりがありません。
★地域特有の遊び★
地域特有の遊びもあります。遊びの天才とも言える子どもとはいえ、環境
により遊びは限定されざるを得ません。逆に、地理的・気候的にその国だか
らこそ可能な遊びもたくさんあります。ところが、今現在の地域的な遊びを
探ろうとすると、一つの困難にぶち当たります。世界に共通する遊びが増え
る一方で、地域的な遊びは急速に廃れ始めているのです。今でも子どもが地
域特有の遊びをしているのかはわかりません。日本においては、昔ながらの
遊びを「学習」する機会を設け始めた地域もありますが、子ども自身が「遊
んでいる」と感じていないならば、それを「子どもの遊び」と呼ぶことはで
きません。そこで、何をして遊んだかが比較的はっきりしている、少し前の
時代、具体的には1970年代〜1980年代の遊びを紹介します。
〈遊ぶ環境が整備されていない地域〉
東アジアは文化的に共通点が多いためか、遊びにも共通点が多く見られま
す。台北やソウルでは、ゴムとび、石蹴り、陣取り、唄あそびなどの遊びが
ありました。一部の人里離れた地域では、商品化されたおもちゃが少なく、
おもちゃを作ること自体が遊びのうちでありました。具体的には、パチンコ、
水鉄砲、竹馬、人形、土の粘土、弓などの製作です。ヨーロッパの都市でも、
人口に伴う住宅地の急増で遊び場が少なくなりました。そこで、トラックで
木材クラフトの材料を運び、移動型の遊び場を作ることで補うなどの工夫が
なされました。アフリカは特に遊び場の整備されていない地域が多く、チュ
ニジアのチェニスでは、スラムの空き地でサッカーをする子どもが多かった
ようです。
〈遊ぶ環境が整備されている地域〉
ある程度遊ぶ環境が整備された国にもまた、さまざまな地域の特徴によっ
て異なった遊びがあります。中国における遊びは、文化のみならず、政治に
も大きく影響されました。特に都市の北京では、一人っ子政策が過保護的傾
向を呼び、児童科学公園など学習と遊びが結び付けられている形態のものが
生まれました。北アメリカの遊び場には圧倒的な広さがあり、工夫を凝らし
た施設が充実していました。ロサンゼルスでは、バスケットボールなどスポ
ーツを自由にすることができ、ボストンのチルドレンズ・ミュージアムでは、
車椅子の体験ができるなど教育的な遊びが豊富でした。トロントでは、冬の
極寒を利用してコートを自前で作り、アイスホッケーをしていました。ドイ
ツのハノーファーには、プレーパークという登録制の公園があり、大人が介
在することなく、自分たちの家を作る木材クラフトや動物の飼育などができ
ました。これらは、子どもたちの自立に役立つと親たちからの評価も高いも
のでした。オランダのハーグでは、マドローダムという25分の1のミニチュア
の街が大流行しました。
★現代的な遊び:テレビゲーム★
テレビゲームやパソコンでのゲームというものは、ある一定のインフラが
整備されていないと遊ぶことのできない特殊な遊びです。それは、身の回り
のものだけでできる昔ながらの遊びと違う大きな点でしょう。ゲームをする
には、ハードやソフト、そして電気が必要となります。電気というインフラ
が整っていないと、遊ぶことができません。途上国、特に農村部などでは、
まだ電気が整備されていなかったり、また常に電気が使える状況でなかった
りします。行政が整備した電気が完全に機能せずに自家発電でまかなってい
る例もあります。また、環境が悪く、そういったインフラ設備の設置そのも
のに適さない地域もたくさんあります。
途上国すべてがそういった状況というわけではありません。きちんと電気
が整っていて、テレビゲームができるところもあります。スタディーツアーに
参加してホームスティをしたら、せっかく大自然の中で遊べるのにずっとホ
ストファミリーとテレビゲームをしていた、という話もあります。しかし、
自宅にそういったものを購入することは難しいので、店に置かれているゲー
ム機で遊ぶこともあります。日本のネットカフェのような感じでパソコンが
設置され、子どもたちがゲームをしている様子を想像してみてください。
【子どもとおもちゃ】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
★おもちゃ「玩具」という言葉★
玩具という言葉は、日露戦争の頃に行われた明治政府による国語統一運動
の中で作られました。玩具という言葉には「もてあそぶ」という意味がある
ため、太平洋戦争中には、不健全なニュアンスがあるとして「遊具」と変更
させられました。しかし、国民にとってなじみのある言葉であったので、戦
後になって「玩具」が再び使われるようになりました。日本以外の国でも、
「玩具」という言葉はあまりいい意味を持っていません。英語では「くだら
ないもの」、フランス語では「笑い者になる」という意味があります。
18世紀以降、子どもの人権についての意識が変化するにつれて、玩具につ
いての認識も変わりました。ドイツの教育家で幼稚園の創設者、F. フレーベ
ル(1782〜1852)は自らの考案した玩具を「恩物」と名づけ、イタリア人で幼
児教育の研究者である M. モンテッソリ(1870〜1952)は自ら開発した玩具を
「教具」と表現しました。子どもの成長には遊びが不可欠であり、玩具の果
たす役割は重要であるとの考えが広まっていったのです。
★おもちゃの起源★
現存する最古の玩具は、古代エジプト時代の墳墓から多く出土しています。
その中には、人形、動物や舟のミニチュア、ボール、こま、がらがらなどが
あります。これらの玩具は元来、子どもが遊ぶことを目的として作られてい
たのではなく、多くは大人の宗教的な目的のために作られていました。例え
ば、がらがらは中世ヨーロッパでは、その音を魔除けと信じて使われており、
日本でも宮廷の儀式用に使われたこまは、専門のこま師が用いるなど神儀性
の強い道具だったようです。
現代になっても使われている古くからある玩具としては、次のようなもの
があります。ネイティブ・アメリカンの鹿皮のボール、ニューギニアの木の
葉を利用して作った帆舟、北アメリカのホピ・インディアンが儀式を終える
際に子どもに与えるという人形、アフリカのコーサ族のトウモロコシの穂軸
で作られた人形などです。人形は、多くの民族において慰霊の意味を持って
います。また、動物のミニチュアは、新石器時代からのアニミズム(自然界
のあらゆる事物に霊魂が宿ると考える)やトーテミズム(特定の動植物を守
護神として崇拝する)に端を発しているとされています。
★おもちゃの機能★
玩具は子どもの成長における機能の面から、大きく2つに分類されると考
えられます。一つは、様々に遊び方を変えることで想像力を駆使し、工夫し
て遊びを生み出し発展させ、創造力の開発に役立つものです。こま、あやと
り、けんだま、たこ、輪回し、ボールなどが挙げられます。これらは、その
物自身に独特な機能をそなえているのが特徴です。こうした玩具のほとんど
は時代や民族を超えた普遍性を持っています。
もう一つは、人間社会のできごと、約束ごと、人と人のふれ合いなどを遊
びの中で反復し、より確かなものにしていく役割を持つものです。人形や動
物、乗りものなどのミニチュアのたぐい、そしてテレビや漫画のキャラクター
玩具などです。玩具の大半がこの部類に属します。これら日常生活を模倣し
た玩具の特徴は、時代や民族の文化や文明と密接な結びつきを持ち、様々に
変化していくことです。
子どもたちは、玩具を使って遊びながら模倣と創造を繰り返す中で、勝負
して勝ち負けを味わい、その気持ちをバネに熱心に技を磨いたり、身体を鍛
えたり、そして友人とのコミュニケーションを深めたりしてゆきます。「模
倣と創造」という子どもの成長にとって、さらには人類の進歩にとって、欠
くことのできない二つの要素が玩具の機能の中には含まれているのです。
10月号から3号にわたり、「子ども特集」として、法律や文化・慣習など
から見た「子どもの定義」、「子どもの成長と重要な他者」、「子どもの成
長と教育」、そして、最終号で「子どもの遊び」について取り上げてきまし
た。国際協力NGOにおいて通常、扱われるのとは少し異なった切り口で「子ど
も」というテーマを考えてきましたが、いかがでしたでしょうか。これから
もいろいろな角度から国際協力を考えられるメールマガジンを作っていきた
いと思います。来年度のメールマガジンもお楽しみに!!
【編集後記】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
名前のない遊びって、実は一番面白かったですよね。(シロウ)
ままごとではいつもお父さん役でした。(めぐ)
子どもたちにとって12月は何かと楽しみな月ですね!
みなさまも体調に気をつけて良い年末を☆ (さちこ)
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