NO.4
どうしたんだろう・・・・
明日7時に出なきゃ行けない、寝なきゃ・・・・
でも、気になる・・・・
あいつから電話するって言ったんじゃない?
あいつは自分でも言ってたけど、ホント、お調子者じゃん・・・・
何年ぶりにちょっと会っただけだし・・・・・
そうよ。あの人の事知らないのよ。
確かに、付き合った事もないのに望美が勝手に作り出している神田のイメージで判断しているに過ぎない。
好きだったって言ったけど、過去形だし・・・
あたし、何やってんだろう・・・・
さっきの電話を思い出しながら望美は自分に腹が立ち始めている。
高校卒業から3年が経ち、その間他の恋も経験した。裕太も神田もとっくに越えた筈だった。
なのに振り回される自分に望美は腹を立てた。
社会人になるという事は、たとえ小さな存在であっても組織の一つの歯車で、責任を負っている。仕事にミスは許されない。望美は睡眠を充分とって脳と身体を万全にと心がけているのに、ここの所、寝不足つづきである。二人の登場に依って、更に悶々とする日々になる。
恋して憧れた人の声だ。芝居の時の舞台の張った声とも違う。すれ違い様に聞こえた、遠い記憶の中の神田の声が、さっきまで望美の耳元でしていた。好きだったとか、そこへ行くとか、抱いてあげるとか夢のような言葉を言うんだもの。高校時代、こんな状況をどんなに夢見た事か。今も夢じゃないかと思う。それだけアンフェアじゃんと望美は思う。
それに俳優を目指してるだけあって甘く歯切れが良い声なのだ。容姿もかなりのものである。裕太がシチリアの漁船に乗る青年風とすると、透き通る白い肌と薄い抜けた色の瞳に小顔で長身の神田は、まるで東欧圏の男優のようである。そのうえ生徒会長になるほど男子の間でも人望も厚い。性格も良いとなったら完璧じゃないか。
望美は裕太が気になリ始めた。裕太はしっかり足を地につけて社会人として歩いている。仕事の現場では色んな厳しい場面もあるだろう。それは毎日繰り返されている筈だ。
中高生の頃、裕太の少しとっぽい雰囲気が女子を惹き付けた。時折甘えるような目で下から見つめ、影があり、シャイな感じがたまらなく母性本能をくすぐった。修羅場をくぐり抜けて腰が座ったような堂々とした振る舞い、それに職業柄身に付いた細やかな気遣いと逞しさが加わって、成長した裕太は、更に男の魅力を増している。でもどこか危険な匂いが残る。中学生の時からそんな風に感じさせる風貌のせいなのだろうか。職業柄なのだろうか。
裕太と初めてのあの出来事が、ぼんやりと雪の降る夜道の街灯に照らされるように浮かんで来る。
見かけと違って望美はオクテで知識も無かった。何故キスで終われない人がいるのか分からなかった。それ以上を求められるのを拒否して断ると、それで離れて行く人がいた。拒絶しつづけるのも、エネルギーが必要で面倒な事だった。周りの友人たちに経験者が増えて、さすがに焦った。覚悟していたとも、待っていたとも言える。いつかそうなるなら裕太と会う約束の日をその時にしようかと、よぎったのも事実だった。
あの夜を思い出すと、一瞬の内に甘美な感覚が望美の身体に蘇る。裕太が気になる。会いたい。恋しい。理屈じゃない。
静まる夜の音のしない中で寝返りの音だけがして、神田の事も気になり却って眠れない。ラジカセのスイッチを入れてFENに合わせる。眠りにつきながら英語を流していると、何気に語学が身に付くのではないかと、望美はたまにそうしているのだが。
リ〜〜ン電話が鳴った。神田?すでに2時になろうとしていた。
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読んで下さっている方へ
いつも稚拙な文を読んで下さり、ありがとうございます。
小説なるものに挑戦し始めて3年目、これが3作目で、この試みは初めてです。
アップしてから加筆修正を何度か繰り返しますので、ご了承を下さい。
尚、この作品の著作権は作者本人にあり、無断転載、使用を禁じるものである。