carmencのライオンズに恋をした!

試合実況&綴るライオンズ愛… 料理&音楽&たまにエッセー

小説 仮題「ノン」

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NO.4

どうしたんだろう・・・・
明日7時に出なきゃ行けない、寝なきゃ・・・・
でも、気になる・・・・
あいつから電話するって言ったんじゃない?
あいつは自分でも言ってたけど、ホント、お調子者じゃん・・・・
何年ぶりにちょっと会っただけだし・・・・・
そうよ。あの人の事知らないのよ。
確かに、付き合った事もないのに望美が勝手に作り出している神田のイメージで判断しているに過ぎない。
好きだったって言ったけど、過去形だし・・・
あたし、何やってんだろう・・・・

さっきの電話を思い出しながら望美は自分に腹が立ち始めている。
高校卒業から3年が経ち、その間他の恋も経験した。裕太も神田もとっくに越えた筈だった。
なのに振り回される自分に望美は腹を立てた。
社会人になるという事は、たとえ小さな存在であっても組織の一つの歯車で、責任を負っている。仕事にミスは許されない。望美は睡眠を充分とって脳と身体を万全にと心がけているのに、ここの所、寝不足つづきである。二人の登場に依って、更に悶々とする日々になる。

恋して憧れた人の声だ。芝居の時の舞台の張った声とも違う。すれ違い様に聞こえた、遠い記憶の中の神田の声が、さっきまで望美の耳元でしていた。好きだったとか、そこへ行くとか、抱いてあげるとか夢のような言葉を言うんだもの。高校時代、こんな状況をどんなに夢見た事か。今も夢じゃないかと思う。それだけアンフェアじゃんと望美は思う。
それに俳優を目指してるだけあって甘く歯切れが良い声なのだ。容姿もかなりのものである。裕太がシチリアの漁船に乗る青年風とすると、透き通る白い肌と薄い抜けた色の瞳に小顔で長身の神田は、まるで東欧圏の男優のようである。そのうえ生徒会長になるほど男子の間でも人望も厚い。性格も良いとなったら完璧じゃないか。
望美は裕太が気になリ始めた。裕太はしっかり足を地につけて社会人として歩いている。仕事の現場では色んな厳しい場面もあるだろう。それは毎日繰り返されている筈だ。
中高生の頃、裕太の少しとっぽい雰囲気が女子を惹き付けた。時折甘えるような目で下から見つめ、影があり、シャイな感じがたまらなく母性本能をくすぐった。修羅場をくぐり抜けて腰が座ったような堂々とした振る舞い、それに職業柄身に付いた細やかな気遣いと逞しさが加わって、成長した裕太は、更に男の魅力を増している。でもどこか危険な匂いが残る。中学生の時からそんな風に感じさせる風貌のせいなのだろうか。職業柄なのだろうか。

裕太と初めてのあの出来事が、ぼんやりと雪の降る夜道の街灯に照らされるように浮かんで来る。
見かけと違って望美はオクテで知識も無かった。何故キスで終われない人がいるのか分からなかった。それ以上を求められるのを拒否して断ると、それで離れて行く人がいた。拒絶しつづけるのも、エネルギーが必要で面倒な事だった。周りの友人たちに経験者が増えて、さすがに焦った。覚悟していたとも、待っていたとも言える。いつかそうなるなら裕太と会う約束の日をその時にしようかと、よぎったのも事実だった。
あの夜を思い出すと、一瞬の内に甘美な感覚が望美の身体に蘇る。裕太が気になる。会いたい。恋しい。理屈じゃない。

静まる夜の音のしない中で寝返りの音だけがして、神田の事も気になり却って眠れない。ラジカセのスイッチを入れてFENに合わせる。眠りにつきながら英語を流していると、何気に語学が身に付くのではないかと、望美はたまにそうしているのだが。
リ〜〜ン電話が鳴った。神田?すでに2時になろうとしていた。



ーーーーーーーーーーーーーーcontinuedーーーーーーーーーーーーーー

読んで下さっている方へ
いつも稚拙な文を読んで下さり、ありがとうございます。
小説なるものに挑戦し始めて3年目、これが3作目で、この試みは初めてです。
アップしてから加筆修正を何度か繰り返しますので、ご了承を下さい。



尚、この作品の著作権は作者本人にあり、無断転載、使用を禁じるものである。




ーーーーーーーーーーーーsquel−ーーーーーーーーーーーーーーー
    
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NO.3

「もしもし・・・」自分からは名前を名乗らないようになっている。
「山岡?俺、わかる?」
「あ、分かる。神田君でしょ。そんな風に言う人今までいないし」
「え?そおお?いないって俺だけ?」
「うん、だって男の人から滅多に来ないし。山岡って呼び捨てもね」
「あ、悪い。ごめん、ごめん」
「いいの、それは。分かり易いし」
「そお?い〜い?俺、ビックリしたよ。山岡がいるからさあ」
「私だって。ビックリしちゃった」
「そうだよなあ。しかも杉野もいたしさ」
「あ、うん、そう。そうね」
「あいつと付き合ってんの?」
「うん〜〜う、ううん。どうなのかなあ」
「だってデートじゃないの?」
「そうだけど・・・初めてのね」
「え?初めて?そうなの〜〜?え?いいの?聞いても」
「聞いてもって、そんな、もうずいぶん聞いてるじゃん」
「アハハハ。ホントだ。ごめん。失礼な俺です」
「うん。でもいいんだ。神田に会えたんだから、それくらい」
「オッ!嬉しい事いうね。山岡ってそんな人?」
「そんな人」
「イカしてるぜ、山岡〜今日・・・会えてホント嬉しかったよ」
「私も・・・」
「思い出したんだけどさ。文代って覚えてる?」
「あ〜〜文代って、あの?神田と親しい?」
「そう、文代がさあ、俺、あいつに言われたんだよ」
「何を?」
「うん、ノンって言う子が、俺を好きだから会えって、付き合ったらって。知ってた?」
「ううん、知らなかった。それで?」
「うん、それでさ。ノンって子を知らないから、どんな子か知りたいって言ったら、新聞部だっていうじゃん?俺、行ったんだよ、新聞部に」
「アッ!ア〜〜それでなの〜〜あれ、あの時のあれ。ひどい〜〜神田〜〜」
「やっぱ、覚えてたか〜〜ごめん、ごめん」
「それって私を?見に?それで、やめたって事?でしょう?」
何なんだ。知らなくって良いのに余計な事を。何たるガサツさだ!何が嫌いかって、がさつな人間。デリカシーに欠けた、人への配慮の無さ、人の心を読み取ろうともしない奴。言うべき事を言わずに言わなくてもいい事を言う奴。もう、充分失恋を味わったというのに、癒えた傷にからしを塗るようなもの。そんな事をしに来たなんて、それも信じられない。
「もしもし・・・山岡聞いてる?大丈夫?ここからが大事なんだよ。俺の言いたい事はさあ。もうちょっと我慢して聞いて。お願いだよ」
お願いされたら聞かない訳にはいかない。ノンは武士だし。そう、いつも心の中で整理する。望美はスパッと他を受け入れる場合こんな風に心の中で言う。武士のような潔さがどういう訳か身に付いている。家系が武士とは聞いてないが、もっと元を辿ればそうなのかもしれない。案外小さい頃見た時代劇のせいかもしれない。
「いいけど」
「長くなるね。ごめんね。それでさあ、俺、ノンって子、勘違いしたんだよ。何人か同学年のS中から来た子、いたでしょ?」
「うん、いたわ。私の他に二人」
「それ、そのどっちかをノンって子と思ってさ、勘違いなんだよね。完全に」
「それで?どっち?誰を?あの時、新聞部、みんな喜んだんだから、男子が来るって。しかも演劇部のあの子だって言って。そうしたらそれっきり。誰も何も言わなかったけどね」
「ごめん、君を見に行った訳なんだけど。結局全く意味の無い偵察だったよ。それで・・・」
「断ったのね。そんな事?」
「いや、違う。君が気になっていたんだよ。ホントは君ならいいなって思っていたのはホントだよ。なんで勘違いしたかって、典子っていたよね?それノンって思ったんだ。早まったよね。どの子でなんて名前?なんて聞けないし。俺、お調子者なんだよ。新聞部のあの子いいなって思っていたんだ。時々目が合って笑わなかった?」
「笑った・・・」
「だよね、ほら、やっぱり俺そうだったんだ。ちゃんと聞くべきだったなあ。それで」
「ねえ〜じゃあ、聞くけど〜い〜い?聞くわ。私の番ね」
「勿論いいよ、ちょっとこわいけど」
「あの、体操部の人は?」
「あ、あれ?あれは、向こうから言って来て、俺ノンに失恋したじゃない?だからいいかって、付き合っても。でもちょっとだよ。3ヶ月も無いな。あれ?やっぱ知っていたの?」
「そうよ。会ったじゃない?帰りに、学校の近くのパン屋さんの前辺りですれ違って」
「そうだったっけ?都合の悪いのは記憶から消す傾向にあると言う事だな」
「そう?男よ、それ、男の特徴よ。お父さんがそうだったわ」
自己分析して口に出来る神田の素直さは望美の相手としては大事な人間性だ。
「それでね、あの子とは、すぐ終わったんだ。バレー部が3年の2学期で終わって、演劇と生徒会が最後まであったし、受験勉強してなかったからさあ。そこから頑張ったんだよ。だから入れたんだ、大学」
「ほんとう?頑張っていたんだ〜応援していたよ。合格するようにって」
「ホント?そうなんだ。それは感激だな。秀樹感激!アホです。俺って。それだ、入れたのは。山岡のお陰だ。あの時分かってたら、もっと楽しく頑張れたのに。え?でもさあ。先輩と付き合ってたよね。そんな中、俺の事を?」
「え?あの事?知ってた?」
「うん、何度か部活終わった時とか、廊下で見かけた」
「そうなの?見られていたか。でもすぐ終わったんだよ」
「え?君も?」いつの間にか君に変わり、深夜0時を過ぎている。
「うん」
「俺、諦めた頃なんだよ。その頃には終わってたってこと?」
「そうみたいね」
「俺、さっきから決めつけてるけど文代の言った事本当だったんだよね。君がノンで、ノンは俺の事好きだった?」
「そうね、ずっと、好きだった」
「俺も、そう。好きだったよ」
「嘘、ホント?」
「ホント。でもさ、不思議だね。あんな出会いがある為に青春のバカな勘違いがあるのかもな」
「いい事言うじゃん。そうかも・・・」
なんて的確で素敵な言葉を吐く人なんだろうと望美は感動していた。
「あれ?何時?もう1時じゃん。電車終わったな。俺、すぐそこへ山岡の所へ飛んで行きたいよ。金ないしな。タクシーって訳にいかないよ〜〜」
なんて事だ。信じられない。あんなに苦しんで悲しい思いをしたのに。家族に聞こえないように枕に顔を埋めて大泣きしたのに。若いってこういう事なのね。ちゃんと意思疎通をしないで勝手にストーリーを作っちゃうんだわ。
「どの辺なの?山岡のアパート。南口降りたらどっち?」
「左に行くの」
「じゃあ、あの通り?あそこ行くだろう?どっかで曲がる?」
「肉屋さんを通り過ぎて次の角で右に入ったらすぐよ」
「なんてアパート?」
「Fフラッツ」
「へ〜分かり易い?」
「うん、そうね。白い建物でFって書いているわ」
「分かった。明日仕事?」
「うん、仕事。寝なくっちゃ」
「そうだよね。何処まで?」
「日本橋、東京駅」
「東京まで?」
「うん、そう」
「俺行く。明日待ってる東京駅で」
「え?しご・・・」
「帰りにだよ」
「あ〜〜そうか、もうおバカになって来てる」
「ゴメン。何処を通る?何処で待つ?」
「明日にならないと、時間がわからないの」
「じゃあ、明日電話するよ」
「うん。分かった」
「良かった。電話して。話せて」
「もう、興奮して眠れそうにないわ」
「俺も」
「うん。神田〜〜神田って言うの可笑しいね。なんて言えばいい?」
「そうか。それもそうだね。何だっていいけど、みんなは神田が一般的だけど。ヒデと言う奴もいるよ。オデキと言う奴もいるけど〜ハハハハ・・・」
「やっぱ、神田っぽい。今の感じ、高校の神田っぽいね。ヒデって言う?」
「いいよ。君が言い易いので」
「じゃあ、名残惜しいけど・・・」
「うん、明日あるし。そうだ。寝る前又電話し合う?眠れるように、俺が歌ってあげるよ。ノンを抱いてるように。ノンがいいなら。あれ?俺ノンって言ってる。お調子もんだな、俺って。こんな奴ですが、ヨロシクお願いします」
「はい、こちらこそ。神田〜あ、ヒデ、ノンでいいよ。その方が好きなんだ、私、名字嫌いなの」
「え?そうなの?今度ゆっくり聞くよ。その話も、君の悩みを。OK。じゃあ、寝る準備したら電話していい〜?」
「そう?いいけど」
「オウ!じゃあ、また後で。お休み、じゃない。又ね」
「うん、じゃあ、また」
急いで顔を洗い、いつも15分する歯磨きを短縮して、なんとか30分以内で終わらせて電話を待った。
しかし中々電話が鳴らない。どうなってるの?寝ちゃったのかしら?
電話をかけると言ったのは神田だ。なのに何をしてるのかしら?それとも30分の間に何かが起きたのかしら?火事?慌てて転んだ?骨折?あ〜〜どうしちゃったの?もう、勝手ね。お父さんも勝手な人だったわ。お母さんがコボしてたもの。男って勝手なんだって。でもそれにしても何かが起きたんだわ。心配で不安に駆られた。落ち着かない。外で消防車がけたたましいサイレンを鳴らして行く。こっちもどっかで又火事なんだ。神田、大丈夫かしら。電話くれたらいいだけなのに。




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この作品の著作権は作者にあり、許可無しに転載、無断使用を禁じる物である






昨日の原稿多少?手を入れてます。主人公の名前は戸谷から山岡へ。
他少々変化してますのでご承知をお願いします。

” 偶然に ”

ーーーーーーーーーーsequelーーーーーーーー


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NO.2

望美が振り向いた。
「・・・?誰?」裕太もその席の方を訝し気に見て言った。
「あっ・・・」
その席の真ん中に座っていた一人がニコニコして望美に向かって言った。
「山岡?やっぱりそうだ。山岡でしょ」
(やだ〜〜何で、ここに?いや、いてもいいんだ。いておかしくはない。だけど、何故、今なの。それに、まさに、このシチュエーションは無いよ〜〜)
全然変わってない。すぐ分かった。
「え?神田・・・君」
「ハッハハ・・・神田でいいよ」
望美は神田を神田としか言った事が無い。学校内でもみんなそうだった。
神田と同じ中学からW高に進学した仲の良いグループの女子が、たまにカンちゃんと呼んでいたが、大抵は神田だ。
「山岡、何でいるの?」
「何でって・・・ここに住んでるのよ」
「えっ?ここ?住んでんの?いつから?」
「う?うん。1年になるかな?」
「1年?へ〜1年か〜〜なのに会わなかったなあ」
「うん、こっち、来ないから」
「あ〜じゃあ南口?」
「そう。南。こっちはあんまり・・・」
「俺の学校あっちだよ。知ってる?」
「うん、知ってる」
「そうか。知ってたのか〜・・・あのさ〜〜じゃあさ〜〜会おうよ。今度、いつか近いうちに」
「う?うん。いいけど〜・・・あ、あの神田君、紹介するわ、この人・・・エッ?」
神田がスッと席を立ち、望美たちの方へ近づいて来ると手を出しながら、
「セッターの杉野君ですよね、M高の・・・俺、神田です。山岡と一緒のW高の。覚えてますか?」
「あ、え〜知ってます。神田さん、しばらくです」と裕太が立って神田に近づくと、望美の目の前で二人は握手した。
何だ、この展開・・・どうなっちゃうんだ・・・頭がグルグル、いいや、なるようになれ・・・気を取り直すってこういう事なのだ。
「そうよね。二人とも同じバレー部で顔を合わせてるんだ〜〜そっか〜〜じゃあ説明いらないね」
「あ〜そうだよ。彼は優秀な選手で名が轟いていたんだよ。でも何?同学年じゃないのに、二人一緒なの?ア〜〜杉野君もこの辺?」
「いえ、僕は江戸川の方に」
「あ、そうなのよ。杉野君は同じ部活なの。あ、バレー部じゃない方」
「そうなんだ。じゃあ、新聞?お前。新聞部だったよな」
「それ、高校。それに新聞と写真と両方だったし」
「え?写真部にもいたの?それは知らなかったなあ。俺もそうだよ。掛け持ち組。結構大変だったよ」と言いながら裕太に促されて望美の隣に座り、話を続けた。
「あれ?じゃあ写真部?中学に写真部って言うのも珍しいんじゃないの?うちには無かったなあ」
「そう、写真部。そこで一緒なの」
「そうか、それで今日はデート?お邪魔だよね、僕。すみません」
「いいです。そんな事でも・・・いえ、実はそうです。デートです」と、きっぱり宣言した。
望美はその男らしさに感心しながら、そんな〜本当なの?とも思いながら裕太を見ると、背筋を伸ばして、たたずまいが闘う武士というか、勝ち誇っている男子というか。
「ちょっとビックリして、懐かしくて、つい・・・そろそろ向こうに戻ります」
「いえ、いいんです。そうですよ。僕も驚いてますから」
「そう、ありがとう。そうだ、聞いてもいいかな?」と手帳を取り出して望美の電話番号をメモして
「じゃあ、戻ります。じゃあな、山岡」と言って席を立った。
杉野が電車に乗る時間が来て、神田の席を通り過ぎながら望美が「じゃあね。バイバイ」と小さく手を振り、裕太が軽く会釈すると、神田がオウ!じゃあな!と高く手を伸ばしてウインクするのだ。あいつっぽい。そういう奴なんだ。
「凄いね。こんな事あるんだ。ビックリだよ。あの神田さんと会えるなんて。しかもノンちゃんと一緒にいる時に。神田さんはカッコいいし面白くてM高でも評判良くってさ、結構憧れたんだよ」外に出ると裕太が言った。
その事に望美は驚いた。明るくてのびのびしていて彼の周りはいつも面白そうに笑顔が取り囲んでいた。それに爽やかだった。あちこちで彼のサービス精神を振りまいて彼の世界に巻き込んでいたんだろうなと、改めて彼のタレント性に感心した。やっぱり私が惚れた男は違う。

神田秀樹。同じ学年、同級生。同じクラスになった事は無い。バレーボール部というより、その前に演劇部の主役として知られていた。1年から主役だった。部活のデモンストレーションの芝居で、彼の見事な演技に感嘆した。高校では演劇部に入ろうかなとも思っていた。いや、新聞部と迷っていた。演劇部を見て決めようと思っていたのだが・・・
大人しい望美は小学校の学芸会の芝居に一度だって選ばれた事が無かった。それが中学の時に国語の授業でグループに分かれて朗読劇をした時、先生に名前を挙げてクラスメートのみんなの前でほめられて目覚めたのだ。同じ中学からの進学者が少ない高校で、今までと違う自分になれそうな予感がした。
でもその心は打ち砕かれた。神田を見て、あんな人と同じ場所に立てないと思う。それに美し過ぎる。そうして望美は演劇部を断念して、もう一つのやりたかった新聞部に入部した。
入学してすぐに彼の存在に気づいていた。顔もだけど何しろ賑やかな固まりの中心にいる彼は目立っていたし、望美が何かで並んでいると身長が近いせいでよく隣の列の2、3人後ろにいる。すると何かと面白い事を言う。望美はよく笑った。すると神田が望美をちらちら見ては、又ふざけた。
いつの間にか望美の心の大部分を神田が占めていた。

ある日の事、いつもの放課後の新聞部の部室。わいわいがやがや、次の号の紙面の編集会議をしていた時、コンコンとノックの音がして、パッとドアが開いた。みんなハッとドアの方を見る。神田が立っている。しばしシーンと時間が止まったようだ。開いたドアの向こうから野球部の練習してる声とバットの音が聞こえて来た。
「あのう、見学させて下さい」
「エッ!」誰もが同じ思いで言った。神田が新聞部に入るなんて考えられない。演劇とバレーボールでしょと。
「新聞部に入ろうかなと思ってます」
「ハァ〜〜?」またもや何人かが同時に。
「えっと〜〜いいですか?ちょっと15分だけでもいていいですか?」
「はい、どうぞ。歓迎です。男子が少ないから男子歓迎よ」と3年の部長が落ち着いた声で言った。
編集会議が中断して、3年の女子がキャピキャピ、まるで神田君へのインタビューに。
15分いてサッと立ち「ありがとうございました」と礼をして出て行った。
これがなんだったのか誰も分からない。その日以来神田は姿を見せない。もっとも校内で相変わらず目立っていたが。
望美の気持ちは誰かの噂で通じていたのか分からない。何も進展が無いままに2年に進級する。
1年先輩に憧れの人がいた。廊下ですれ違うだけだったのに、2学期が始まって放課後の廊下で呼び止められて告白された。放課後の校舎の廊下で度々話し込んでいる姿を見られて噂になった。
その内、元の彼女と言う3年の女子から呼び出されて彼を盗るなと泥棒よばわりされた。目の前で泣く上級生に困惑して、ただ「はい、分かりました」と言うしかなかった。
受験に失敗して落胆した彼は「俺は就職する。あんたとは住む世界が違う」などと言うようになり、卒業と共に次第に疎遠になり連絡が途絶えた。

3年なって神田が体操部の同級生の女子と歩いてくるのと駅に向かう道で出くわした。やはり噂は本当だったのだ。神田と親しいクラスメートの文代がカンちゃんとノンをくっつけたいと言っていたが、現場を見てしまった。この事を望美の耳に入れないようにと文代が箝口令を敷いていたと後で知った。


神田が東京に行くのは分かっていた。彼の志望大学は彼の才能にぴったりで、きっと将来映画かTVで彼の姿を見るようになるだろうと望美は秘かに応援していた。
その大学が結婚した長女の住まいと同じ駅にあった。3年遅れて望美がその町に住んだのは両親から言われて部屋探しをしたのが長女だったからである。

まさか思いがけない形で二人の元片思い相手と会うなんて。同時に3人揃ってだなんて!
2日後、外は雪が降り始めて東京の夜がしんしんと更けて行った。
10時電話が鳴った。





ーーーーーーーーーーーーーーcontinuーーーーーーーーーーーーーーー






尚、この作品の著作権は作者にあり、許可無しに転載、使用を禁じる物とする。




初書き下ろし

小説  仮題  ”ノン”
題名も、結末も、まだ決まってないので 

突然書き始めたブログと同じように突如始まり、
今、突然書き始めている。



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NO.1

駅前の果物屋さんの2Fの喫茶店フレドール。お昼時ともなるとあっという間に満席になるのだが、まだ10時半を少し回ったばかりで他に数組の客がいるだけだった。
山岡望美と杉野裕太は窓際の席に座り外を見ていた。望美がふっと笑った。すると小麦色の肌に白い歯を覗かせ腕を頭の後ろで組んで裕太が言った。
「不思議だなあ」
「うん?」
「まさかね」
「あ〜そうね。まさかね」
「こんな風になるなんてさ」
「うん、ホント」
「え?でも僕は想像はしたよ。あれから考えちゃって、え?全く?少しはしたでしょ?」
「そうね〜それは無いわよ。どうなるのかと思ってはいたけど。だからね、食事は何処にしようかとか、洋服どうしようかとか、家、きれいにしなくちゃって。そんな事で忙しかったわよ」
実際、この2週間池袋や渋谷に洋服を探しに行ったり、インテリア用品屋さんショップ巡りに明け暮れた。家にいる時は、部屋の片付けと、洋服のコーディネイトをチェックしたり忙しく過ごした。自分の範囲内でだが、こだわリを持つ望美は気に入った物が見つかるまでこれでいいやと指定のゴミ袋そのままを部屋の片隅に置いていた。万が一裕太が来るならこれは無いなとゴミ箱探しと洋服選びに奔走していた。
「そっか〜。女性は大変だな」
「そうよ。妄想する暇なんて無いのよ」と裕太の眼をイタズラっぽく見た。
「そんなもんなんだ〜」
「そうよ、そんな事なの。あら?杉野君、やっぱりモテるんでしょ?東京でも…」
「そんな訳ないよ」とちょっと怒るような顔をして甘えるような目つきでテーブルの

メニューを手に取りめくり始めた。窓から差し込む日の光が眩しい。その光が裕太の横顔を照らして、イタリア映画の俳優の顔に似て、そこ儚さを感じさせて、望美の母性本能を刺激した。
煙草に火をつけて裕太にかからないように望美が顔を横に向けて、紫の煙をふ〜っとくゆらせた。
「信じられないよ。あの山岡さんが煙草吸うのもだけど、僕とこうしているのもね」
「ふふ、そうね。自分でもそう思うよ。みんなが見たらびっくりするわね。あ、それなんだけど、山岡さんは止めてよ。ノンでいいよ」
「ホント?いいんですか?」
「うん、嫌だな。そういうのって。なんか固いでしょ。元に戻るようで〜」
「優等生、山岡さんだよ」
「いやだ、それも言わないで」と頬を膨らませ口を尖らせてイタズラっぽく笑って裕太を見た。
「なんだか別れづらいなあ。僕、ずっと居ていい?」
「何言ってんの?ダメじゃない〜お姉さんに叱られるわよ」
裕太は高校卒業して一旦就職したものの職場がどうしても合わず辞めて、年の離れた姉の経営する飲食店を手伝っているのだと言う。飲食店と言っても、深夜遅くまでやるクラブのようなお店らしい。
食材にこだわり、早朝、車で市場に買いに行く時の運転も裕太の役目になっている。

望美の1年後輩である。そもそも中2の夏の事だ。廊下ですれ違い様に、ハッとしたのが始まりだった。夢中になっていたイタリア映画の主人公の若い俳優に似ている!何処か影のあるところも日焼けした顔も裕太に重なった。その俳優と同じように裕太もクリクリっとした巻き毛風の髪をしていた。
廊下ですれ違わないかなあと用事を作って頻繁に職員室に行くようにした。何度かすれ違い、目が合うこともあった。
胸が高まり日ごとに思いが募る。すれ違うだけで充足感に包まれた。

夏休みが終わって、クラブの先輩が引退して2年生に役職を引き継ぎする時期が来た。人前が苦手なのに先輩たちが推薦してくれて望美が部長に決まった。
総会で壇上で部の会計や活動内容を報告する場面で顔は赤く、頭は真っ白になった。そんなことを経験して、少しずつ人前で言うことも馴れていった。
新学期になって望美は3年になった。
生徒が自分の部活を決める時が来た。
入部ツアー週間に興味のある部屋を覗いて最後の日に入部する教室に集まることになっている。
20人ぐらい集まっていた。その教室の後ろの方に裕太が座っていた。
(うえ〜〜どうしよう。あの子だ〜〜)馴れた筈のプレゼンもどう話したのか覚えていないほど上がりっ放しで心臓が飛び出しそうになった。裕太は終始にやけていた。(コイツ不良?もしや、私の気持ちに気づいてからかいに来たの?)と望美は裕太のそんな様子が気になった。新入部員がノートに名前を書いて終わりだ。
へ〜〜杉野って言うんだ〜裕太って友だちが呼んでいるのを聞いた事があるので下の名前は知っていた。
結局裕太は入部した。だからと言って中学の写真部なんてさほどこれと言った活動が無い。たまに行事の写真を撮りましょうと部員に伝えて個々に自由に撮った物を展示する程度だ。その中から卒業アルバムに掲載されるのもあるが。
バレー部の主力選手だった裕太には、そっちがメインだ。県内でも上位クラスだった。試合と練習に明け暮れて裕太の写真部員としての活動は幽霊部員に等しい。すれ違う時に裕太が会釈するようになり、望美もにこっと頷き、たまに「あ、今度写真を撮ったら持って来て」っと言う程度だった。
夏休みが過ぎて学校に行くと裕太が誰かと交際しているらしいと噂が耳に入った。どうやら相手は1年の子でとびきりの美人だ。片思いが終わった。
失恋で落ち込んでいるのに、裕太がすれ違い様にニッと笑って会釈すると、ドッキ〜ンと胸が鳴った。運動能力が優れている裕太が運動してる姿はカッコ良く女子生徒の注目を浴びていた。すれ違うとき裕太はよく友人とじゃれ合っていた。そしてニッと笑って望美を見るのだから、たまらない。
「ノンの事好きだよ、あいつ、いつも見るじゃん」親友の恭子がそういうと、まんざらじゃない。
(そうなんだよね〜見るんだよなあ)と時々思う。でもあの子とでしょと諦めた。

卒業を前にして殆ど高校も決まり自習の授業が多くなって、校庭でソフトボールをしたり、3年生は自由な時間が増えていた。
思い出にとクラスメイトや先生との写真を撮っている日、体育館の通路でばったり裕太と会うと恭子が裕太に話しかけた。
「ね〜〜あのさ〜〜一緒に写真撮っていい?」さすが恭子だ。あっけらかんと聞けるなんて。
「いいっすよ」少し大人びて来た裕太がにやけて、すんなりOKした。まるで馴れているみたいだなあと望美は思った。3年女子からも裕太がカッコいいと言われてるのを耳にしていた。こんな事を何度か頼まれてモデル気分になっているのかしらと思えるような態度だ。
もっと右になどと言って裕太とくっつくようにカメラを構えながら恭子が言って望美のすぐ隣に裕太がいる写真が撮れた。
その写真を見ると裕太は照れくさそうに恥ずかしそうにして写っている。案外裕太は純情だったのかしら。

あっという間に卒業式の日が来て高校に入学した。
電車通学が始まり、裕太と会う事はなかった。

他の町の高校に進学した裕太が望美の学校にバレーボールの練習試合に来た。卒業して2年経っていた。身体が逞しく一段と大人びていて、カッコ良さはいっそう目立っていた。望美は離れた所から眺めていただけでその日が終わり、また裕太との接点はないママと気が流れた。
望美は大学に進学すると同時に家を出てアパート暮らしを始めた。裕太は家族と東京に引っ越したという噂を聞いた。望美は青春を人並みに味わい、卒業後に就職で上京した。

初めて郷里へ帰ったお正月の事だった。駅に東京までの切符を買いに行くと、4,5人の若い男性たちが楽しそうに大声で喋っていた。見ると知った顔がある。裕太だ。裕太も気づいていた。
「あ、山岡さん。久しぶりです」
「あ、杉野君。え?あら、引っ越したんじゃないの?」
「そうだけど、同級会があって。山岡さんは?今、何処に居るんですか?」
「私?東京」
「え?東京?僕も東京だよ。何処?」
「うん、知っている。引っ越したんでしょう?あなたは何処に住んでいるの?」
「俺?あ、僕は江戸川区」
「私は練馬区」
「練馬か〜〜今度会いましょうよ。同じ東京にいるんだから」
「いいわよ」
「じゃあ、デートしよう。僕、次の電車で帰るんだ」 
こんな事が起こるなんて、こんな会話がスムーズに出来て、会おうとすぐなるなんてじくじくとしているだけで何も言えないで過ごす思春期、あの日々はいったい何だったんだ。
そして2週間後に会う約束をして電話番号を交換して別れた。友人の輪の中に戻った裕太は、どうも冷やかされているようだった。

そして今、向かい合っている。昨日からのデートだった。全てコーディネイトしたい望美だが、裕太に任せた。裕太は望美の住まいに近い池袋を待ち合わせに指定した。西口のピザがおいしいと言うお店で食事をしてから、その辺をぶらぶらしながらバーに入る。あまりアルコールを飲む機会がない望美がすぐ酔ってしまう。
「送ってくよ」とタクシーを停めて3駅先のアパートまで送ってくれた。その頃には私鉄は終わっていた。
「大丈夫?僕がお茶でも入れるよ。こんな時はお茶が一番なんだ」と狭い部屋で探す必要もない小さな食器棚から食器を出して馴れたようにお茶を入れた後、お味噌ある?と言って、サッサッとお椀に味噌と鰹節、わかめを入れてお湯を注いで即席お味噌汁を作った。
「これでもう酔いも大丈夫だよ」
さすがに飲食店で働いているだけあるなあと望美は感心して、その光景をぼんやり見ていた。一人で上京して社会の荒波に揉まれている望美の緊張感をほぐすようにも思えた。何故か安心出来るような、でも本当はこの人の事知らないのにと一瞬よぎる不安を、すぐかき消すように裕太はかいがいしく動いた。
一晩を共にする事になった。狭いベッドで肌が触れ合う。自然に唇が触れて激しいキスに望美の身体はとろけて行く。望美にとって初体験であった。あの憧れて、諦めた杉野君が・・・と思うと敗北の青春から女として勝ち誇るような感覚を覚え、感慨に浸った。知らず知らずに望美は片思いの頃に知った名前で裕太と呼んでいた。
そして朝を迎えて、帰りながらブランチをしようという事になる。

けだるさの中で時折ふ〜とため息をつくように煙草の煙を吐く望美の少し上を向いた鼻と蕾のような唇があどけない横顔と、煙草を挟む白い指がスッと伸びて妙に艶かしく、裕太は見とれた。
「やまお・・・あ、ノン、僕たち、これから・・・・」
その時、斜め後ろのテーブルの大学生らしい5,6人のグループから声が聞こえた。
「W高校、S町、・・・」
「・・・?」何、それ、うちの高校じゃん。私の町じゃん・・・いったい何が?
「山岡望美」エ?それ、私?はっきり確かな口調・・・もしや、そういえば、あいつが・・・






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