楽譜de散歩〜CARSメンバーだより

CARSメンバーの日ごろの雑感をリレー形式で紹介します

CARSメンバーだより

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「人は皆、同じ音楽から違う音を聴いている」と書くと、「その意味は何?」と思われるかも知れません。哲学的な話、それとも聴覚障がいの話?と。が実は、私も含めて本当に皆、同じ音楽から違う音を聴いているのです。
 
 人間の可聴域は20Hz20000Hz(20kHz)の間と言われています。ピアノの最低音が約27Hz、最高音が約4200Hzくらいなので、20000Hzがかなり高い音であることは容易に想像がつくと思います。時報の最初の3つの音「プッ・プッ・プッ」が440Hz、最後に上がって「ピーン」が880Hzです。また最近では、ご飯が炊けても、洗濯が終わっても、電子レンジが温め終わっても「ピーーー」と鳴る、あれがほぼ1000Hz(1kHz)の音です。この1000Hzの音は、信号として人に注意を喚起するのに効果的な周波数とされていますが、昨今、高齢者でこの音が聞こえないという声も耳にします。
 
 さて、このブログを見に来て下さったあなたは、「何を言い出すのだろう」と思うかも知れません。ここは、CARS(楽譜コピー問題協議会)のページ、「楽譜のコピーが、音楽を滅ぼす」と吠えるページではないのか、と。しかし、私たちが作曲した曲が、楽譜の形で演奏家に渡り、演奏されて「音楽」になり、お客様に聴いて頂く、というプロセスの中で、その根幹に関わる「音」そのものの秘密を解き明かしておきたい、それがわかると「音」が愛おしいものとなり、それによって表現される「音楽」への愛は深まり、よもやその元となる楽譜をコピーしようなどとは思わなくなるのではないか、という期待を込めて「音」に迫ってみようというわけです。
 
話を元に戻します。人間の可聴域は20Hz20000Hz(20kHz)というのは本当でしょうか?もちろん本当ですが、これは、「全ての人にとって」ではありません。実は「聞こえる人もいる」ということです。子どもたちは、ほぼ聞こえます。が、18歳、大学1年生数十名に簡単な聴力テストを試みると、様相は変わってきます。低音の20Hzはほぼ全員が聞き取れます。問題は高い方の音です。1000Hz刻みで、音を出し「聞こえたら手を挙げて」「音が止まったら手を下げて」とテストします。標準の440Hz(ラの音)、炊飯器の1000Hz、ピアノの最高音の4000Hzあたりは、順調に通り過ぎ、更に上ること12000Hz13000Hz14000Hz15000Hz、この辺までは、全員が躊躇なく手を挙げます。16000Hz17000Hzと進み、18000Hzになると、ここで、ほぼ半分の学生が「聞こえない」反応を示します。19000Hz2人か3人は聞こえます。可聴域と言われる20000Hzでは、1人だけ聞こえる、あとは全滅です。もちろん、年によってバラツキはありますが、20000Hzが聞こえたのは、数年間やって1人です。かく言う私は、16000Hzから上は聞こえません。
これを大学院生(24歳くらい)でテストしたところ、2019年の7月のあるクラスで、18000Hz3人しか聞こえないことが判明しました。この結果は、もちろん年によるバラツキ、個人差によるところが大きいので、統計的に正確ではありません。が、私のクラスの事実です。
 
 「高い周波数」が聞こえるかどうかが、何を意味するか。これは「音色」に大きな作用を及ぼします。例えば、トランペットとフルートの音色の違いの最も大きな影響は、高い周波数の倍音が司っています。例えば、トランペットの音から、電子的フィルターを使って、高い周波数成分を減らして行くと、フルートのような音に近づいて行きます。ということは、20000Hzが聞こえる子どもたちと、15000Hzまでしか聞こえない私とでは、聞いている音色が違う、という事になります。概ね、年と共に高い周波数の音は聞こえなくなるのが人類の宿命で、今の所それを回避する方法はありません。言い方を変えると、年と共に、音は柔らかい、マイルドな方向に聞こえるよう衰えて行く、というわけです。これを敷衍すると、実は、「同じオーケストラを聴いても、皆違う音色を聴いている」ということになります。ただ、芸術の素晴らしいところは、受容する側は「皆違って良い」というところにあります。同じ音楽を聴いて、皆違う感性で、皆違う音色で、皆違う感動を受け取る事が出来る。これこそが本物の「共有」です。「共有」が皆が同じであることを要求しないのが、芸術的感動共有の美しいところなのです。子どもたちも、大人も、高齢者も、聴覚障がい者も、皆それぞれ別々の「音世界」を持ち、それによってコミュニケーションをする事が出来る、そう考えると「音楽」は愛おしいものに思えませんか?
 
ここはCARSのページですので、一言。と書きながら、作曲家側としては誠にマズイ考えが浮かびました。高齢者は高い周波数が聞こえないのだから、音楽著作権使用料も30%offとかにしてくれ、と言われたら反論の余地がありません。それには黙って口をつぐみ、「愛おしい音たち」をコピーなどしないように、お願いしたいものです。



CARS代表幹事 菅野 由弘

音楽の素晴らしさ

 先日、FCA前理事である平井丈一朗氏の演奏活動65周年記念チェロリサイタルを聴く機会がありました。
今更言うまでもありませんが、巨匠パブロ・カザルスの後継者として我が国が世界に誇るチェリストである同氏の演奏は、80歳を超えた現在でもエネルギッシュに溢れ、長時間の演奏にも年齢を全く感じないばかりか、指使いが魔法にかけられたように楽器を奏で、多くの聴衆に感動を与えました。改めて音楽の素晴らしさを、そして音楽を具現化する演奏者の力を感じることができました。

 いずれにしても、作品の演奏には楽譜が必要になります。したがって楽譜に接する方は、音楽を聴くことを楽しむ一般の方に比べて、演奏者や歌唱者として、プロ・アマに関わらず、音楽に近い立場にいる方々といえます。そのような方々だからこそ、作品を具現化する楽譜を大切にしていただきたいと願っています。
近年のデジタル・ネットワーク化の流れの中で、複写方法・技術の発展も目覚ましく進歩するとともに、複製利用も年々簡便化されています。

 一方で、権利保護よりも利用・流通の拡大ばかりが優先され、創作物である作品を「もの」としてしか捉えない最近の風潮に危機感を覚えます。文化国家、知財立国を標榜する我が国にとって、文化の発展がいかに社会に喜びや潤いをもたらすことになることを、根気よく世間に訴えていくことは、創作者団体として重要な責務です。
音楽創作者団体を代表する立場にあるFCAは、音楽文化を後退させる楽譜の無断複製問題について、今後もCARSと連携して適法に利用するよう、地道にアピールしてまいります。
 
 変化の激しいデジタル時代の現代においても、音楽は人の心に活力や潤いをもたらしてくれます。FCAは、演歌・歌謡曲、ポップス、現代音楽、童謡、児童音楽、訳詩等の様々なジャンルの音楽創作者団体が会員として加盟しています。

 FCAのホームページをご覧いただくと、各会員団体HP等連絡先が掲載されており、団体が主催する事業(コンサート等)について、スケジュール等、開催案内を確認することもできますので、是非とも興味のある「催し」が目に留まりましたら、音楽を聴きにご来場いただければ幸いです。

2019.8.1

関 孝一(CARS監査役/FCA事務局長
CARS(楽譜コピー問題協議会)のホームページ http://www.cars-music-copyright.jp/


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