Cartouche

肺炎で入院中。リコメ・ご訪問遅れております。

全体表示

[ リスト ]

*ゼロの焦点*

イメージ 1

   ***STORY***            2009年  日本
禎子は新婚七日目に、社用で金沢へ旅立つ夫・鵜原憲一を上野駅まで送っていった。それが、禎子が夫の姿を見た最後になってしまった。憲一はある広告社の金沢出張所長だったが、結婚を機会に東京本社に栄転となり、今度は後任の本多と事務引継ぎをするための金沢行きだった。予定の十二日をすぎても憲一は帰ってこなかった。十一日の夜金沢を発ったということなのに。会社で憲一の同僚を事情調査に金沢へ派遣することになったので、禎子も同行することにした。しかし、憲一が金沢在任中に暮らしていたはずの下宿の所在さえ分らなかった。          gooより

これはすごい!
ナゾ解きの面白さもさることながら、戦争の爪痕が残る昭和30年代という時代に生きた
女性たちの哀しさ、切なさが胸に迫ってくる素晴らしい作品でした。
見た後も”痛い”ものがずしりと心に残っています。

昭和32年
板根禎子は26歳で鵜原憲一といい36歳の男性と見合い結婚しました。
お互いある程度ちゃんとした家のようだから禎子もあまり彼のことを知らないまま結婚して
しまいますが、まあ当時のお見合い結婚ってこんなものだったのでしょう。
しかし東京に戻るための準備をするためといって金沢に行ってから帰らず・・
帰宅予定の8日、高そうな牛肉買って、すき焼きの準備をする禎子の姿が痛々しかったです。
何日経っても帰らないため禎子は釜沢へ・・
あれ〜まだ汽車だったのですね!

金沢で彼の足取りを調べていくうち次々を殺人事件が起こり、新たな事実がわかっていくのですが・・

予備知識を入れずに見た方がいいと思うので、詳しく書けないのですが、私が一番感じたのは、
”時代”でした。
32年というと戦後10年ちょっと経っていますから表面的には復興されていて
人々の生活は向上し始め、安定してきています。
でも当時30歳前後だった人たちは子供のころ戦争に遭い、それを背負って生きてきていました。
でもちょっとトシと状況が違うだけで背負ってきたものは全然違うものでした。
この映画の三人は・・


田沼久子と佐知子。
禎子と憲一の真ん中くらいの年齢だと思われます。
ふたりは戦争によって辛酸をなめ、そして北陸の地に流れ住み、どちらも”安定”を
手に入れました。
ところがそれはふたりにとって永遠のものではなく、特に佐知子にとっては”過去”を
隠し続けていかなければならなかったのです。
大きくて瀟洒な洋館でメイドさんたちに囲まれ、最新流行の服に身を包み、黒塗りのクルマで
出かける暮らしは必死の思いで手に入れたものだったからです。
一方の久子にとって一緒に暮らす人は愛と安定をくれる人でした。
彼女は多くを望まないのですが・・

この作品の語り口は、新妻の禎子です。
上のふたりの女性とはそんなにトシが違わないはずですが、結婚前はやさしい父と母と阿佐ヶ谷の
戸建てで穏やかに暮らしてます。もちろん戦争中は辛い目にも遭ったかもしれませんが
この作品の中では一番戦争の影を引きずっていない人なのです。
この事件では一番の被害者のはずなのですが、背負ってるものは軽いです。
彼女の洞察力の鋭さで事件は解決していく部分もあるのですが、この禎子に同情しきれなくて
犯人の哀しみの方が大きく感じてしまうのがこの映画の面白いところでした。


もう一度、”時代”のことに戻りますが、このころは戦後から新時代への転換期でした。
そのことを痛感し、希望を持って生きていたのが憲一と佐知子だったと思います。
憲一は戦場での辛さと北陸での生活を忘れて、新たな人生を歩んできたいと切望していました。
また佐知子は進歩的な婦人団体運動に加わり、初の女性市長を目ざす人を全力で応援しています。
これは女性の地位の向上を確信し、自分にできないことをこの未来の市長さんに託していたのですね。
そのふたりの想いの強さ、これは当時の人たちみんなが何かしら持っていたものでしょう。
だからこそ戦後の奇跡の復興がなされたのかもしれません。


しかしいつも思うのは、生まれる”時代”がちょっと違っただけで人生ってこうも
違ってしまうものなのですね。
私などほんの数十年しか違いませんが、上昇気流に乗って育ちバブルも味わった一番
お気楽な世代で、こうして戦争によって人生を変えられてしまった人たちのことを思うと
いつも申し訳なくなってしまいます。
それと共にもう二度と戦争が起こらないよう祈るばかりです。


この重い映画を支えているのは映像の力も大きかったです。
低い雲がたれこめ、冬は雪に閉ざされる金沢。
そして一番の迫力は画面いっぱいに拡がる日本海の冬の海です。
伊豆の遠浅の穏やかな海を見慣れてる私にはこれは怖かった〜〜
にび色の海が画面の上の部分を占めると呑みこまれてしまいそうなほど。
やはりこういうのは劇場ならでは・・ですね。

また衣装も良かったです。
新妻の禎子は割合地味目の色のコートやセーター。しかし広末さんがどうも苦手です。
一方の佐知子はマダムらしく豪華で時にマニッシュ。
襟元の立った服など特にお似合いで演じていたのは中谷さん。
悲しい過去を背負った名夫人ぶりが素晴らしかったです。
でもなんといっても印象的だったのが久子=木村さんです。
服装も地味で控えめな役なのですが、ラスト近くで真っ赤なコートに白地に赤い花柄の
スカーフをかぶって崖に立ってるシーンは息を呑むほどの鮮やかさ。
はかなく、哀しい彼女の人生の最後に咲いた花のようでした。


監督・脚本:犬童一心
原作:松本清張
出演
広末涼子
中谷美紀
木村多江
西島秀俊
鹿賀丈史
杉本哲太
崎本大海
野間口徹
黒田福美
本田博太郎

閉じる コメント(43)

私は原作読まないで行ったのですが、予想を上回る展開でした。
女優さん達の演技も良かったので満足です。
TBさせてください。

2009/11/23(月) 午前 8:41 daisygips 返信する

顔アイコン

昨日観てきました。映画の後にこの映画評を拝見すると、本当に的を
得た解説ですね、同感です。中谷さんの役によって映画の出来が左右
されそうなキーパーソンでよく演じられていましたし、この時代に
生き残った人々の背負ったものの重さ、たくましさ、哀しさなども
伝わってきました〜。北陸の暗い海、激しい波なども登場人物の
心情とも重なり奥深さを演出していました〜。清張さんは生前ドラマ
にちょい役で出演されるのがお好きでしたから、この映画にも出させてあげたかったです。。

2009/11/24(火) 午前 0:27 [ mimo ] 返信する

顔アイコン

広末さんですが、『ヴィヨン』よりはこちらのほうが合っていたと思います。 ただ最後の最後、どうしてしなを作ってしまうのかなーと思います。そんなにハジけて笑うとこじゃないんだけど。。。 苦笑 削除

2009/11/24(火) 午前 0:41 [ rose_chocolat ] 返信する

もう戦後ではないと言われながらも、戦争の影を引きずっている人々は、まだ確実に居たんですね。上野駅のシーンで、一挙にその世界に引き込まれました。
原作とは違った結末でしたが、どちらにしても、犯人である妻を愛していたのに。それも切なかったです。
TB返しさせてくださいね。

2009/11/24(火) 午前 9:54 アンダンテ 返信する

前半は「この映画は面白くなるのだろうか・・・。」と思っていましたが、中谷さんと木村さんの車のシーン以降は凄すぎて、ボロボロ涙が出てきてしまいました。映画出演されるたびに、心に迫ってくる感じを映画で見せてくれて、いい女優さんたちですね。松本清張ものは、人間の業と哀しみを描いていて、演じがいもあったのかも。
うーーーん、でも、広末さんの役は嫌いになりました・・・。それが狙い通りだったら、それも凄いです。
TBさせてくださいね。

2009/11/24(火) 午後 11:22 かりおか 返信する

顔アイコン

フェイさん。確かに2時間ドラマっぽいところもありますね。
ラストもなんだし・・
そういう意見もあると思います。

2009/11/25(水) 午前 9:41 car*ou*he*ak 返信する

顔アイコン

デイジーさん。そうでしたか。私も原作を知らなかったので
より楽しめました。
こういう作品は読まないで見た方がいいかもしれませんね。
3人の女優さんたちの競演も見事でした。

2009/11/25(水) 午前 9:42 car*ou*he*ak 返信する

顔アイコン

mimoさん。ありがとうございます。
これただのサスペンスではなくて、昭和32年という時代に生きた
人たちの哀しみがとてもうまく表現されていますよね。
そこのところを汲めないとただのドラマになってしまいます。
そうなのですか。清張さんってヒッチコックみたいに出演されていたのですね。きっと今頃残念がっていることでしょう。

2009/11/25(水) 午前 9:45 car*ou*he*ak 返信する

顔アイコン

rose_chocolatさん。確かにヴィロンの愛人役もなんだか・・でしたからこちらの清純な妻の方が役の設定上は合っていたかもしれませんね。はは・・シナを作ってしまう。今度チェックしないと。

2009/11/25(水) 午前 9:47 car*ou*he*ak 返信する

女優2人(?)の演技はもうほんと秀逸だったと思いました。
広末さんは私も苦手なんですよね(汗)
不満だったのは脚本のミステリー部分がちょっと物足りなかったとこでした。
そうカルさんおっしゃるようにこの時代が印象的でしたね。
みんな生きるためにそれぞれがあがいてましたね。
佐知子の衣装ほんと最初と夫人とパンパンの時、コートを着てる姿とそれぞれ違って印象的でした。
木村さんは少ない出番でも凄いインパクトありましたし、ラストの場面は「哀しい彼女の人生の最後に咲いた花」まさにそうでしたね。
TBお願いいたします

2009/11/25(水) 午後 1:33 ひかり 返信する

顔アイコン

アンダンテさん。原作とラストが違うのですね。
私もあの人が犯人のことをそんなに愛していたということが
ピンとこなくてびっくりでした。その辺がもう少し描かれてると
よかったですよね。
そうですね。上野駅のシーン、悲しかったです。

2009/11/25(水) 午後 4:03 car*ou*he*ak 返信する

顔アイコン

かりおかさん。そうそう前半はイマイチ乗りきれないところも
ありましたが、後半ぐっと面白くなりましたよね。
やはりクライマックスは中谷さんと木村さんのクルマのシーン
でしょうか。赤い花柄のスカーフが哀しみを倍増させてました。
私も元々苦手がヒロスエさんですが、あの○○ーって叫ぶシーンでもうキレました。いくら被害者でもヒドすぎますよね。

2009/11/25(水) 午後 4:06 car*ou*he*ak 返信する

顔アイコン

ひかりさんもヒロスエさん苦手なんですね。
いつも作品にすご〜く恵まれてますがどうしてなんでしょう。
佐知子の衣装もそれぞれの時代ごとにこだわだわってました。
あの時代はまだ戦争の影をひきずっていたのですね。
木村さんは静かでしたがとてもインパクトがあり、重要な役でした。

2009/11/25(水) 午後 4:08 car*ou*he*ak 返信する

アバター

本格派ミステリーで、時代が生んだ犯罪とも言える展開に、ストリーの奥深さを感じました。
やはり女優陣の競演に注目しました。中谷美紀のオーラも凄かったですが、
広末涼子、木村多江も、個性を発揮していたと思います♪。

2009/12/13(日) 午後 0:43 ffa**77 返信する

顔アイコン

ふぁろうさん。殺人事件なメインではなくて初和という時代と
戦争がキーですごく見ごたえある作品でした。
3人とも個性的で素晴らしい演技でしたね。
こういう作品をもっと見たいと思います。

2009/12/13(日) 午後 5:55 car*ou*he*ak 返信する

アバター

この新作が時代設定変えなくて当然でしたね。ドラマの砂の器はまずかったと改めて思いました。お正月に久我美子、高千穂ひずる、有馬稲子の映画観てさすがの高千穂と思いました、早世されて残念です。
広末版は観ていないのですが。

2010/1/13(水) 午後 0:49 hitomi 返信する

顔アイコン

hitomiさん。そうなのですか砂の器は時代設定を変えて
しまったのですね。
そちらも有名ですね。

2010/1/22(金) 午後 4:26 car*ou*he*ak 返信する

顔アイコン

女優が豪華でしたね。

2010/6/16(水) 午後 9:45 mossan 返信する

震災から一週間が経ちましたが、我が家は相変わらず断水中です。
この一週間は震災関連記事をアップしてきましたが、本日から通常営業に戻しました^^
木村多江の演技、中谷美紀の迫力、鹿賀丈史の鬼気、素晴らしかったです♪
ん?広末涼子は…^^;

2011/3/19(土) 午後 10:40 やっくん 返信する

顔アイコン

もっさんさん。そうですね。
やっくんさん。もうそろそろ映画の記事にしてもいいと思います。
はは・・広末さんねえ・・
あ・でも断水中なのですか

2011/3/20(日) 午後 7:58 car*ou*he*ak 返信する

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

開く トラックバック(23)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事