The House of Nomad

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“ジェーン・オースティン”とは、英国を代表する作家であるだけでなく、欧米の白人キリスト教社会における美術、建築、インテリアも含む、一つの文化「英国ジョージアン・スタイル」のキーワードであり、必須アイテムの一つです。

この映画は、18世紀末から19世紀初頭の英国女流作家ジェーン・オースティンの若き日の恋を描いています。 
ジェーンは41年の生涯で6つの小説を発表しました。その小説は、英国ジョージアン時代のカントリーの紳士階級や貴族、中上流階級の人々を風刺しています。また当時の女性の結婚や階級についてのジレンマを描き、愛はないけれども経済的な安定のために結婚するか、あるいはお金はないけれどもロマンティックな恋愛結婚をするかで思い悩む女性達が主人公になっています。
ジェーンの生きていた頃から200年も経った今、現代の自由恋愛と結婚観からは想像できないお話ですが、今の人達にもジェーンの小説は絶大な人気があり、多くが映画化やドラマ化されていて、いわばロマンチック・コメディ作家の元祖のような存在でもあるのです。
この映画は、ジェーン・オースティンの若い頃の恋愛が、彼女の作品の一つである『高慢と偏見』のベースになったという設定で描かれていますが、自叙伝はなく、あくまでも推測で書かれたジョン・スペンスの伝記小説が元になって作られました。つまりフィクションな自叙伝なのです。
真実のストーリーを描こうとするとき、大冒険や大恋愛でもないかぎり、そのままを忠実に描くと凡庸になりがちですが、この映画はその辺を上手く演出しドラマチックなシーンも用意してくれています。

1976年英国、ハンプシャーのスティーブントンが舞台。20代のジェーン・オースティンは、この頃すでに小説などを書き出していました。当時の女性にしては珍しく、ロマンティックな恋愛に憧れ、自立心に富み、田舎町の社交界においても控えめだけど、人を観る目が鋭く、そつなく振る舞います。作家になって自立することを目指していたジェーンは、小説の着想を得れば、所かまわず文章を書き出します。ジェーンの母親は、そんな彼女を、裕福なレディ・グレシャムの甥のウィスリーと結婚させることを願っていたのです。けれどもジェーンにとって、ダンスも下手でドン臭いウィスリーを好きになることができません。ジェーンは、本当に好きな人と結婚したかったのです。そんな時にロンドンからやって来た裁判官志望で、アイルランド人でハンサムなトム・ルフロイに出会います。最初、ジェーンはトムを尊大できざな放蕩者。トムはジェーンを、田舎の未熟で生意気なオママゴト作家と見なします。第一印象はお互いに良くないものの、やがてお互いに魅かれていきますが、貧しいトムとの結婚には問題が多く・・。

トムの存在は、ジェーンの書いた小説『高慢と偏見』の有名なキャラクターであるMr.ダーシーはもちろん、裕福でない生い立ちや自由奔放な所、厳格な叔父には頭があがらない点などから、ウィッカム(『高慢と偏見』)やウィロビー(『分別と多感』)らも連想させてくれます。またダンス・パーティの二人や、最初の出会いの印象の悪さ、二人の恋の運命など、随所にジェーン・オースティンの小説『高慢と偏見』、『分別と多感』などを彷彿させるシーンが盛り込まれています。
2003年に発表されたジョン・スペンスの伝記小説『ビカミング・ジェーン・オースティン』を元に脚本が書かれ、映画化が進みました。
脚本は、ストーリーの落としどころをわきまえていて、口うるさいジェーン・オースティンのファンを向こうにまわして、なかなか健闘していると思いましたが、ジェーン・オースティンのファンの間での評価は、良いか悪いかにハッキリ意見が分かれるような気がします。この映画は、小説に沿ったエピソードで構成されているために、ジェーンのイメージの捕らえ方の違いで考えると、小説のキャラクターとジェーンを同一視しているファンには評判がよいと思います。(特に『高慢と偏見』の主人公エリザベス・ベネットが好きな人には)けれども、あまりにもストーリーがジェーンの小説に沿っているために、結末も予想できてしまい、そういう意味で逆に、ジェーン・オースティンの小説を知らない人の方がシンプルに楽しめるかもしれません。

全体としては、とてもよく構成された映画で、泣き所のツボも押さえていて、ジュリアン・ジャロルド監督(『キンキー・ブーツ』)が英国TV界で長年、評価の高いドラマを撮って来た経験がよく生かされていると思いました。脚本もよく書けていて、丁度良いペースでお話は進み、ジェーン・オースティン調のユーモアも感じられて、下手をすると安っぽいメロドラマになりがちな内容を、巧みに仕上げていると思いました。

主役のアン・ハサウェイですが、当初は英国人女性が、ジェーンの役を演じない事でいろいろ言われていました。しかしジェーン・オースティンの大ファンでもあるハサウェイの才能ある演技力のおかげで、充分に説得力のあるジェーン・オースティンが出来上がっています。もちろんネイティブな英国人が細かくチェックすれば、ブリティッシュ英語の発音になっていない箇所もあるかもしれませんが、明るくハツラツとした、知的で意志の強い、自立したジェーン・オースティンを見事に演じていました。
ジェームス・マカヴォイの演技は、申し分なく、腕白で奔放なトムを魅力的に演じていました。特にジェーンに謝りに来る所の、あの子犬のような目は、誰もが抗えないパワーを持っていました。もちろん他の俳優陣(ジュリー・ウォルタース、ジェームス・クロムウェル、マギー・スミス、アンナ・マックスウェル・マーティン、ローレンス・フォックスなど)もそれぞれ素晴らしい演技でした。ただやはり、『高慢と偏見』や『分別と多感』を描いた、過去の映画やドラマのキャストの人達と比べてしまうのですが、それもそれで、ジェーン・オースティン物につきものの、この映画独特の楽しみ方の一つと思って観たらよいのではと思いました。

映画でジェーンとトムは、露骨に愛を表現しあうことはありませんが、図書室での二人の会話は、言外に官能的な意味を含んだやり取りで、二人の間にロマンティックな恋心が芽生えた瞬間を上手く演出していると思いました。この時の会話で取り上げられていた小説が、英国小説の父といわれるヘンリー・フィールディングの1749年に発表された『捨て子トム・ジョーンズの物語』で、大地主の屋敷に捨てられていた赤ん坊が、トム・ジョーンズと名付けられ、自由奔放で女好きな青年に育ち、やがてお金持ちの令嬢と恋に落ちるが、策略に嵌り家を追い出されて、ロンドンで大騒動を起こすという筋書きです。トム・ルフロイが、実際にこの本を読んでいたという話は、ジェーン・オースティンが姉カサンドラに宛てた手紙で触れられています。

いづれにせよ、実際にジェーンがこの映画のような大恋愛をトム・ルフロイとしていたかどうか、真実はわかりません。けれどもジェーンは自分の知っている世界以外は書かなかったと言われている作家なので、ほんのつかの間の戯れの恋と言われたトム・ルフロイとも、秘められた大恋愛をしていたかもしれません。

ただ一つ言えることは、彼女の作品のなかのヒロイン達の恋愛は、最後には結婚というハッピーエンドで終わりますが、ジェーンは自分が果たせなかった夢を自分の作品の中で成就させているのでしょうか?
今でも多くのファンの想像をかき立てる、謎の多い魅力的な作家です。

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このジャンルは正に門外漢の私ですが、ジェーン・オースチンという作家、そして
それを取り巻くちょっと玄人的なファンが結構いるということを知りました。

ここまで、nomadさんを惹きつけるその作家に興味津々です。

映画も、「ジェーン・オースチンの小説を知らない人の方がシンプルに楽しめるかも」
ということは、知らずに見ても結構楽しめそうな良い仕上がりに
なっているんでしょうね。
興味があまりないジャンルの映画ですが、なんか見てみたくなりました。

2009/11/17(火) 午後 8:53 [ - ]

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zombieさん、最初にBBCのドラマ『高慢と偏見』を観まして、それ以後、いろんな映画や本などで、ジェーン・オースティンの事が取り上げられてて、いろいろ調べるうちにハマってしまってました^^;
ロマコメ映画のお約束的なストーリーを、200年も前に書いてた人がジェーンです。彼女の本の登場人物も皆、いろいろクセがあって面白いんですよ。ただ人間関係やバック・グランドなど分からないと眠くなる可能性もありますが^^;、もし機会がありましたらご覧になってください(^^)/

2009/11/19(木) 午前 0:59 [ nomad ]

わたしは充分に楽しめました。そして、最後のエンディングも、わたしの好きなスタイルで終わってよかったです。日本でも、やっと観れるのですね。

2009/11/19(木) 午後 1:56 NZ_RR

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nzさん、楽しめたのですね!エンディングも、爽やかな印象でなかなかよかったですね。日本で公開されるのに、凄く時間がかかりました。本当にかかりすぎです!もう3年も前に公開されてる映画です。半分あきらめかけていたのですが、劇場で観れてよかったです。
でも日本では2館しか上映していないようです。

2009/11/20(金) 午後 6:57 [ nomad ]

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またまた蒼々たるキャストですね〜。
最近少しづつ見始めたところですが、なかなか期待できそうですよね。
出来ればダンスシーンとかはなくてもOKなんですが〜(^_^;)

2009/11/23(月) 午後 9:35 木蓮

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レビュー、楽しみにしていたのですが、サスガnomadさん!!
こちら、当地ではいまだに上映予定になく、原作も読んでいないので、ほんとうに楽しみですし、早くDVD化して欲しいですっ;;;
脚本もアン・ハサウェイやマカヴォイくんの演技も良さそうですね!
オースティンを題材にした映画やドラマは、最近いろいろ作られてますね。 先日もLaLaTVで現代娘が「高慢と偏見」のリジーになってしまう「ジェイン・オースティンに恋して」、オースティンの晩年を描いた「ジェイン・オースティンの後悔」というTVドラマが放送されていたので観たのですが、「〜の後悔」については、”え?オースティンは自分の人生に後悔したのだろうか??”と疑問に思いつつ観たのですが、内容は「ジェイン・オースティンの手紙」に沿った内容だったので、観て良かったと思いました。(「〜に恋して」は”なんじゃこりゃ^^;”でしたが…笑)

2009/11/24(火) 午後 6:46 kim

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なるほど、自伝的と云っても実際にはどうだったかわからない感じの伝記が原作なのですね。
つぼは抑えているようですが、やはりいろんな意味で少しオースティンの小説よりな解釈の映画なのでしょうか。
人気がある故に冒険も難しいのでしょうけれど大胆な解釈のオースティンの作品や伝記も見てみたい気がします。
美術やインテリアはどうでした?ロケ地とか、その辺も気になります。

2009/12/11(金) 午後 9:55 [ miskatonic_mgs_b ]

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もくれんさん、めちゃくちゃコメント遅くなりすみません;;
残念ながらジェーン・オースティンものとダンスシーンは切っても切れません^^;
だんだん観て慣れる^^;となかなか観ていて楽しくなるものです。踊りながら話すのが、昔の男女の交際の醍醐味だったようですから・・。

2010/1/20(水) 午後 11:24 [ nomad ]

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Kimさん、めちゃくちゃコメント遅くなりすみません;;
なんじゃこりゃ・・の「ジェイン・オースティンに恋して」は、なかなか興味深いですね(笑)そーですか、「ジェイン・オースティンの手紙」に基づいた物なら、信憑性がありそうですね。誰かが書いてましたが、カサンドラも、ジェーン・オースティンの子孫も、ジェーンが亡くなってから、かなりキワドイ事が書いてあった手紙は処分してしまったようですね。特にビクトリア時代に入ってから封建的な考えが美徳とされた時代で、ジェーンの書いた表現が結構、自由奔放で大胆だったので、かなり処分されたらしいです。だから、今残っている手紙からは品行方正な印象がするジェーンしか、出てこないかもですね。そういう意味で、『秘められた恋』は、ちょっとキワドイ会話をするジェーンを描いていて面白かったです。

2010/1/20(水) 午後 11:33 [ nomad ]

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miskatonicさん、めちゃくちゃコメント遅くなりすみません;;
そうですね。どちらかといえば、かなりジェーンの本からヒントを得た作りになっていました。登場人物の何人かは、実在の人物ではなく、ジェーンの小説に出てくる人達がモデルになっていました。
お屋敷のインテリアや衣装は、きっちりとジョージアン・スタイルを満喫できます。ただジェーンの家は、牧師の娘なので、どちらかといえば質素です。そのうち時間ができたら、いづれ、ジェーン・オースティン特集で今までのドラマや映画からロケに使われたお屋敷やロケ地などを特集して書いて見たいと思います。

2010/1/20(水) 午後 11:41 [ nomad ]

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