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会場に次々と到着するタクシー、降りてくる乗客はみんな笑顔だ。 この日を楽しみに遠方からやってきた観客たちが、会場前で記念写真の撮影をしている。 会場内でにこやかに来場者を案内するボランティアスタッフ。 ホワイエでは赤と白のグラスワインのサービスがあり、過去の演奏会の写真展も開催されていた。 開演時間を10分ほど過ぎたころ、舞台袖から合唱のメンバーが静かにステージに入ってくる。 ひな壇の中央、最後列にまるでマリア像のような存在感を持ったソプラノのソリストが立ち 指揮台を囲むように室内オーケストラ、そしてその後列からフルオーケストラが並ぶ。 25日の同プログラムでは8月3日に亡くなった、※ビル・バーネル氏を悼んで 出演者・スタッフが喪章を付けて演奏会に臨み また、27日は8月25日に亡くなったE.ケネディ議員の死を悼んで 演奏前に観客も含め全員で黙とうをささげたそうだ。 何の予備知識もなく初めて聴いたという同行者が 「こんな恐ろしい、不安な音とは思わなかった」 ともらすほど、この曲は怒りと不安、哀しみに満ちた音が詰まっている。 絵に例えるなら、ゲルニカのような。 冒頭の鐘と安息をと歌う合唱を否定するかのようなテノールのソロ。 「家畜のように死んでいく兵士に何が弔いの鐘だ!」 そう、この曲はレクイエム=鎮魂歌なんてものじゃなく、戦争への批判を激しく表現したもの。 戦場の激しさを表す音や、審判への不安を表す合唱が続く。 そして第6曲、戦場から脱走したイギリス兵が、地下のトンネルの中で瀕死のドイツ兵と出会う。 「不思議な友よ」と呼びかけてきたのは、前日自分が刺した敵国の兵だった。 そして彼は「さぁ、我々も眠ろうでないか」と歌う。 死者の世界ではもう敵味方もないのだから、と。 そこに舞い降りてくる児童合唱の天上からの響き、合唱とソプラノが加わって死者と平和への祈りが捧げられる。 冒頭と同じように鐘が鳴り、最後の無伴奏の合唱 「彼らを平和の中に安らわせ給え」 「アーメン」の響きは、 どこまでが残響かわからないほどの繊細さを持って天界へそっと消えていった。 演奏が終わった後の静けさは、まるで聴衆も黙とうを捧げているかのような沈黙の喝采。 カーテンコールが何回繰り返されても聴衆の拍手は鳴りやみませんでした。 客電(客席の照明)が明るくなってもその勢いは衰えず、 合唱のメンバーだけが残ったステージは、客席からのスタンディングオベーションに包まれました。 オーディションで選ばれて本番まで頑張ってこられた合唱の皆さんの声は、本当に素晴らしかったです。 素敵な時間をありがとう。誘ってくれたRちゃん、感謝です。 ※Williom l.Bernell
47年間にわたって小澤氏をサポートしてきたアーティスティック・アドミニストレーター プログラムの構成、演奏家の選択、新作委嘱のプランなどを行う。 |

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