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目が覚めたら銀世界だった。
昨夜から冷え込んでいたし天気予報は大寒波が来ると脅迫ニュースを流し続けていたから覚悟はしていたけれど、ここ数年来一番の雪景色に、ちょっと心が踊った。
仕事にいく人は大変なんだろうけれど、気ままな自由業、僕は今日一日休みを決め込んで、もう一度ベッドに潜り込んだ。少しだけ、寝坊するために。
不思議な、夢を見た。
真っ白な雪の中、僕はどこかを目指して歩いている。
雪が深く積もっているのに何故かスーツ姿で、大きな花束を抱えて吹雪の中を歩き続ける。
不思議なことに革靴を履いていても雪に足を取られることもなく、ざくざくと深雪を踏みしめてまっすぐに歩いている。
どこへ、なんのために行こうとしているのかもわからないのに、僕の胸は希望と期待に躍るように激しく鳴り響き、戦士が戦場に赴くように、或いはスポーツ選手が試合に挑むように、挑戦的な高揚感で熱く燃えるようだった。
やがて行く手に明かりが灯る家らしきものが見えてきた。そこへ来てようやく気づいたけれどどうも今は夜らしい。家の明かりは絵本で見るように黄色く暖かそうに僕を誘い、全身を包む高揚感で忘れていた寒さを思い出した。
ああ、僕はここへ来るために歩いてきたんだ、と安堵した気持ちで玄関のチャイムを鳴らす。
誰かが何かを答えた気配がして、おもむろにドアがかちゃりと音を立てて開いた。
そこで目が覚めた。
マジかよ。
何だかすごくいい夢だった気がするのに、と残念な気分でベッドから出て窓の外を見ると、雪は小降りにはなっているが朝よりかなり降り積もっている。
そこに、―――…何か、いる。
僕は思わず窓を開けて外に飛び出した。ちなみに僕の部屋は一階で、掃き出し窓の外には小さな縁側もどきがあって、そこにサンダルを置いている。洗濯物を干したりする時のためだ。
雪に埋もれかけて震えているのは―――雪に紛れそうな、真っ白な、猫。
左右の目の色が違う、金と青のオッドアイ。
寒かったんだろう、僕の姿を見ると駆け寄ってきて胸に飛び込んできた。
子猫でもないのにこんなに警戒心がないのは飼い猫だろう、と思ってよく見るとこれまた紛らわしいような白い首輪がついている。
飼い主はきっと探しているだろうけれど、この雪では難しいだろうからとりあえず保護しておこう、と白猫を抱えて立ち上がると、そこに聞こえた声。
「スノウ、スノウ、どこにいるの?」
思いがけず早い飼い主の到着にホッとしたような、残念な気分で振り返ると。
子猫みたいな可愛らしい女性と、目が合った。
雪の朝・完
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