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[これまでのあらすじ]
人の忠告を無視して、ほったらかしにしていた虫歯。
痛み出したので慌てて電話するも、1週間後と告げられる。
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さぁ、いよいよ待ちに待った歯医者さん。
会社から車で40分ほどのところにある。
初診なので少し早目に会社を出て、15分ほど前に到着。
待ちあい室には誰もいない。いたって静かである。
手持ちぶさたなので『女性自身』という雑誌を手に取る。
『男性自身』というのはないのかなぁと他愛もないことを考えている。
ふと奥の部屋から聞き覚えのある、それでいてあまり聞き心地の
よくない「歯医者音」がきこえてきて、現実に引き戻される。
前の患者が出てきた。次はオレかな・・・
しばらくして「セフォさん、どうぞ」
しょせん歯医者なんて、と高をくくっていたが妙にドキドキする。
中に入ると日系二世か三世風のドクターとアメりカ人おばちゃんアシスタント。
加えて、田舎の病院のような簡素な作りの診察いす。
たどたどしい日本語で「どうしましたか?」ときかれる。
面倒くさいので英語と日本語をおり混ぜて説明をする。
リクライ二ングが倒され、ロを大きく開ける。
ロびるが乾いていたため、ひび割れそうだ。
患部?に何かを「シュッ」とふきつける。特に激しい痛みは感じないが、
遠くの方で何となくしみている感じがする。
「しみますか?」
正直に「あまリ痛くない」
と言ったら麻酔なしでがりがリいくのだろうか?
すでにゴマつぶで痛みは実証済みである。
少し大げさに「しゅっとしたらしみます。」と訴えることにした。
医者はおもむろに
「神経まで到達していますね」と告げる。
「そリゃそうだ」と思いながら神妙にうなずく。
「神経を抜く必要があるので、麻酔が必要ですね」と医師。
歯科の部分麻酔は何をかくそう私の最も得意とするところである。
あの「歯ぐきにチクッ!だ液がじわっ」という感覚が好きなのだ。
これで上の親不知を2本抜いた実績を持つセフォ。
が、どうしたことだ?この医者は歯ぐきではなく、ほっペたの内側を
線棒でこすっている。これが麻酔汪射前の儀式だということは知っている。
次の瞬間、やはり歯ぐきではなく内ほおにつきさされた。
「痛いぞ!」でもがまん、がまん。麻酔が効いてくるはず…
そんな気持ちとはおかまいなしに、医師は針を刺しながらグりグりと
針先をこねまわす。歯痛とは違った痛さだ。
「これはたまらん!早くその針を抜いてくれぇ〜」
そうこうしているうちに麻酔が効いてきて、ロびるの右側がしびれてくる。
「ロびるがしびれてきましたか?」
医師がおもむろに聞く。
「ここでYesと言えば、いよいよ始まるわけだ」と思いながら、「ふぁい」
アシスタントに何やら指示して、ウィーン音のドリル機器のお出ましだ。
患部のまわりを削っていく。例の音、例のにおい、すベてが同時にやってくる。
「チュイーン、チュイーン、ガガガガ」
振動が不気味に歯茎に伝わってくる。
何となく、遠くの方で痛みを感じるような気がした。
まさか麻酔が効いてないなんてことはないよな?と不安がよぎった次の瞬間、
ゴマの比じゃない超ド級の痛みが直撃した。
「あっうっ」といううめき声とともに椅子からずり落ちる。
アシスタントは哀れみのまなざし。
医師の顔はマスクで見えないが、麻酔の増量を決意したようだ。
またぐりぐりこねこねが始まった。勿論、前程は痛くないが、気持ち悪い。
今後は金属性の猿ぐつわをかまされる。
本格的な治療が始まった。今後は麻酔がしっかリ効いているとみえ、
歯は痛くないがロびるがさけそうに痛い。
早く終わらないかなぁ、考えていたのはただこのー点である。
医師はあれこれ道具を代え、かれこれ30分ほどガりガりしていただろうか。
何か詰め物をして終了した。
「あーっ長かった。」
でもこれで終った。あの痛みともおさらばだ、ざまあみさらせ!
勝利の余韻にひたっていると、
「今日は4本の神経のうちのー本しか抜いていません。今度は2時間かかります。」
…
「何?終ってないの?」しかも次回はもっと長いの?
がっくりして受付けで精算。何と900ドル。全額会社負担だから懐は痛まないが、
アメリカの医療事情をまざまざと。
ちょっと遠いけど、せっかく土曜日もやっている歯医者にしたので、
「次回は土曜日でお願いします」
と言ってみたが、
「2時間コースは土曜日はダメ」
とのこと。
う〜ん、なんだかなあ。
ただ、これはほんの序章に過ぎなかった。
(続く)
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