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現代日本の風2019
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安倍晋三首相が米国に向かっている。2016年11月にドナルド・トランプが大統領選に勝って以来、4回目の米国訪問である。夥しい数に上る電話での会話も数えると、両首脳間の接触のレベルは日米関係史においても前例のないものとなる。

 たが、これまでのすべての米国訪問とは異なり、6月7日に首都ワシントンで予定されている安倍・トランプ会談をめぐっては、わらにもすがる思いといった空気が感じられる。安倍首相は、トランプ大統領が北朝鮮の指導者、金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を決断したことに明らかに危機感を募らせ、4月にフロリダに駆けつけた。
 そして首相は、北朝鮮の完全な非核化という目標の実現に取り組み、いわゆる「最大限の圧力キャンペーン」と呼ばれる北朝鮮の経済制裁を固守するという新たな誓約をトランプ大統領から取り付けることに成功した。

■「こんなにすぐワシントンに来るのは博打」

 トランプ大統領が6月12日の首脳会談を突然キャンセルした際には、日本の政府当局者の間には祝賀ムードが漂った。だが、ここにきて米朝首脳会議の予定が「復活」し、トランプ大統領は「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄 」(CVID)に早急に向かわせるという合意目標を公式に取り下げた。「最大限の圧力」の話は驚くほどの速さで放棄された。そのうえ、トランプ政権は日本や欧州との貿易摩擦をエスカレートさせ、結果によっては日本車の対米輸出に巨額の関税を課すことにつながりかねない調査も始めている。
 「こんなにすぐにワシントンに来るのは安倍氏にとっては博打だ」と、ワシントンにある有力シンクタンク、ブルッキングズ研究所で日本研究チェアを務めるミレヤ・ソリス氏は指摘する。

 「安倍首相がやって来るのは、6月12日会談を歴史的な成功と呼べるようにしたいというトランプ大統領の気負いが結果的には不利な取引を招いてしまうのでは、という懸念があるから。これによって首相のトランプ大統領との個人外交がもうほとんど崩壊に近づいていることを露呈することになるかもしれないが、それも覚悟のうえだろう」
自らの首相の地位を危うくするかもしれない不祥事の数々への対処を続ける中、安倍首相が自国の国内政治情勢を考慮に入れていることは明らかだ。「安倍首相は国内の『観客』に向けて、できることはすべてやっていることを示す必要がある。自分は日本のために立ち向かっているのだ、と自ら保証するために」と、テネオ・インテリジェンスおよび笹川平和財団の日本アナリスト、トバイアス・ハリス氏は言う。

 だが安倍首相は、態度を毎日のようにくるくる変えるトランプ大統領に対し、自分はいまだに影響力があると信じているのかもしれない。首相は大統領に、日本に到達する可能性のある短・中距離ミサイルの脅威、化学兵器や生物兵器といった、その他の大量破壊兵器の脅威、そして日本との関係正常化の前提条件としての拉致問題の解決という、中核となる安全保障上の利益をなおざりにしないよう、説得を試みるだろう。
 表面上は、安倍首相は成功しているかのように見えるかもしれない。「トランプ大統領が金委員長に拉致被害者問題を持ち出す可能性は高いと思う。大雑把なやり方でできるのだろう」と、元対イランおよび北朝鮮政策担当上級顧問で現在はテレグラフ・ストラテジーズのコンサルタントを務めるフェリアル・サイード氏は話す。

 「トランプ大統領にとっては何も犠牲にする必要がないし、大統領はこれを利用して北朝鮮に経済支援をするよう日本に圧力をかけることもできる。一方、安倍首相は日本に帰ってこの課題を議題に載せることに成功したと言い張ることができる」
■トランプは米朝会談実施に超意欲的

 安倍首相がトランプ大統領の対北朝鮮政策を形作ることができるという考え方は、首相官邸にとってかけがえのない信念だが、これは大方において幻想である。米朝首脳会談に向けた準備に詳しい数多くの情報筋によると、トランプ大統領はこの会談を行うことを固く決意している。板門店(パンムンジョム)非武装地帯の「統一閣」会議場で北朝鮮側と会談を続ける米国の交渉担当者が共同声明に向けての進展が大変遅いと報告しているにもかかわらずだ。
ワシントンのある消息筋が語ってくれたところによると、「ホワイトハウスは交渉チームのCVIDを定義しようという努力に反発を繰り返している。ノーベル賞に猪突猛進しているトランプ大統領がCVIDのいずれにも関心がないからだ」。

 実際、新たに浮上してきた首脳会談の中心的「合意」は、朝鮮半島における戦争状態の終結宣言に署名し、1953年に米国の国連軍総司令官と中国および北朝鮮側の同等地位の各司令官との間で締結された休戦協定を事実上終結させることだ。事情に詳しい情報筋によると、トランプ大統領は先週大統領執務室で訪米中の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長と会談した際に、すでにこの長年の要望に譲歩したということだ。この譲歩が何を意味するのか、はっきりとは理解していないようだったが。
 内部関係者が恐れるのは、この見返りとして何も得られなかったら、金委員長が北朝鮮に戻って、戦争状態終結の合意があるのに米国がなぜ半島に軍隊を必要としているのか、なぜ軍事演習を行うのかと問うことになるだろう、ということだ。制裁措置を維持する必要性も損なわれるのでは、という懸念もある。

 一方、日本の首相官邸と外務省の政府関係者は、国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務める強硬派のジョン・ボルトン氏がシンガポール首脳会議におけるこの種の取引を阻止するだろうという考えを崩していない。ボルトン氏は首脳会談中止を伝える大統領の手紙に関与していたようだ。だが、ワシントンの内部消息筋が伝えてくれたことには、これもまた幻想だ。
 首脳会談の準備は、マイク・ポンペオ国務長官の厳密な管理下にあり、その後ろに立つのがマイク・ペンス副大統領だ。金委員長および北朝鮮首脳陣との関与の過程は、ポンペオ国務長官が中央情報局(CIA)の局長を務めていた時代に始まり、CIAと、先週トランプ大統領と会談した朝鮮人民軍および情報機関の高官である朝鮮労働党統一戦線の関係者を繋ぐルートを通して行われてきたものだ。大統領執務室での金副委員長との会談においてはボルトン氏の不在が目立ったが、それはポンペオ国務長官が氏を会談から遠ざけていたためだと言われている。
ボルトン氏の個人的見解がどうであれ、「同氏は目立たないようにしている。ずる賢いだけに、政治資本を投資してシンガポールへと急ぐトランプ大統領を思いとどまらせることは、無意味で危険だということは自分でもわかっているからだ」と、あるワシントンの内部消息筋が教えてくれた。

 ボルトン氏は、北朝鮮政府との取引がすぐに崩壊し、その過程で自らの影響力も増すと計算しているのかもしれない。あるいは、自分の役割を駆使してイランとの緊張の高まりを推し進め、北朝鮮はより重要な前線から注意を逸らすものとして見ているかもしれない。イラク戦争に備えるジョージ・W・ブッシュ政権に起こったことを思い出すといい。
 安倍首相が北朝鮮に対する厳しい姿勢を強く要求した場合、衝動で動くトランプ大統領を苛立たせるだけで終わってしまうかもしれない。「トランプ大統領の動きを予測するのは気の弱い人には向いていない」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)国際研究センター所長で日本学者としても知られる、リチャード・サミュエルズ教授は話す。

 「トランプ大統領は、(廃棄に)短距離ミサイルを含まないうえに北朝鮮を核兵器保有国として事実上認める取引を米国政府が結ぶことによって日本の安全を損なうのではないか、と日本政府が恐れるのももっともな理由を与えている。安倍首相にはそれを未然に防ぐための切り札がほとんどない」
 安倍首相がトランプ大統領に、米国の集団安全保障へのコミットメントが明確でないことから、こうした種類の取引をされれば日本は自らの核抑止力を求めざるをえなくなるかもしれない、と伝えることも考えられる。「問題は、トランプ大統領がその意味を理解できないか、あるいは気にしないかもしれない、ということだ」とサミュエルズ教授。「日本政府は窮地に立たされている」。

 日米における北朝鮮に対する態度の差は、貿易緊張の高まりによって複雑化したり、拡大したりする恐れがある。「国家安全保障」という偽りの根拠に則ってすでに日本に対して行使されている鉄鋼・アルミニウム輸入に対する関税引き上げを欧州、カナダ、メキシコからの輸入に対しても推し進めるという決定は、米同盟国に警戒感を与えた。日本の当局者もこの世界貿易体制への挑戦に対し一斉に唱えられた反対の声に加わり、6月8、9日にカナダで開かれる先進7カ国(G7)首脳会談はこの話題で占められる可能性が高い。
一部のアナリストの見解では、日本は新たな貿易戦争において特に「敵」とは見なされていない。トランプ政権のタカ派にとって、日本は北米自由貿易協定(NAFTA)交渉や中国との交渉と比べると優先順位が低い。だが、トランプ大統領は同時に、日本に対する見方として、1980年代の貿易戦争に深く根ざし、日本人が高級物件を買いあさっていた時代にニューヨークの不動産市場で培った経験で形作られた見方も明らかにしている。
■国内政治の圧力が双方をより衝突に向かわせる

 トランプ大統領にとって、「中国は略奪的だが本当の敵は日本」なのだと、日本で長年の経験を持つ米議会関係者は話す。「トランプ大統領にとって、日本はつねに敵だった。安倍首相は、それをゴルフクラブのプレゼントや自己卑下や特別な懇願によって1年間抑制できていただけだ。その抑制も効かなくなってしまった」。

 それぞれの国における政治的圧力は、両国トップをいっそう衝突に向かわせる可能性がある。「中間選挙を前にして、トランプ大統領は外交政策において大きな勝利を望んでいる。北朝鮮問題の行き詰まり状態の打開、そして貿易関係の揺さぶりがこれにあたる」とブルッキングズのソリス氏は話す。
 「一方、安倍首相にとっては、その逆が真なのだ。まじめに仕事に取りかかって、北朝鮮問題に本当に意義深い成果をもたらすこと、そして開かれた国際貿易体制を守ることが重要なのだ」

 安倍首相は、勝利の瞬間からトランプ大統領を受け入れるリスクを冒してしまったので、方向を変えるにはもう遅すぎるかもしれない。今回の首脳会談は、その投資に対するリターンの最後を飾るものになるかもしれない。
ダニエル・スナイダー :スタンフォード大学教授



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  • そうですね。
    会談やった意味あるかしらポチ

    eigekaii

    2018/6/13(水) 午後 10:26

    返信する
  • 顔アイコン

    > eigekaiiさん
    わかりません。
    3選の理由作り程度ですね。

    セントレア

    2018/6/14(木) 午前 0:06

    返信する

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