写生帳

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しろばんば

井上靖の『しろばんば』を読みました。有名な作品ですが、手に取ったのは初めてです。
学生時代に読んでいたらどう思ったか、ここまで面白く感じたかどうかわかりません。
とにかく今の私にとっては、とても興味深く一気に読めました。

魅力の一つはまず、歴史資料的な面白さ。

核家族社会に生きていると、昔の日本がどんな国であったか聞く機会は、あまりありません。
それが、この本を読むと戦前の田舎の日本の風習、文化がよくわかります。それはとても生活臭のする鮮やかなもので、現代っ子には新鮮なものです。
そして、現代日本にも通ずる良いもの悪いものをいろいろと感じます。

『しろばんば』は井上靖の自伝的小説で、主人公は自分をモデルにしています。幼少時代を思い起こせば、それだけでこの鮮やかな小説が生まれたのかも知れません。加えて、作者は若い頃新聞社の記者をしており、作家になってからも歴史、史跡などを詳細に取材して歴史小説を書きました。作品の中に当時の風習、文化が細やかに描かれているのも、その取材力、描写力あればこそのものかも知れません。

誰が何をしたか、村の隅々まですぐ噂になる狭い社会。
大人がする噂話は、子供もする。親がいがみ合えば子供もいがみ合う。
地域ごとに固まる子供達。よそ者は敵視され、身を守るために仲間同士は固まる。
学校の先生がいかに恐れられている存在だったか。
家柄の良い子供は成績も良くないといけない。2番でもとろうものならどれほど大騒ぎになるか。
成績をもらい親に報告するということの重さ。
特別な時に身につける、ハレの着物。ハレとケの区別。
馬車や汽車に乗って旅行することが、どれほど一大事であったか。

・・・今では当たり前のようなことが、昔は一つ一つ、大変なことで、一つ一つに重みがあったのだと感じます。

昔の全てが良かったとは、思いません。
でも、原点を見ることはとても大切だと感じます。
今、モラル崩壊の危機が叫ばれていますが、原点を見てヒントを得ることができるようにも感じます(これはどなたかも公の場で言っておられたことですが・・・)。


この作品のもう一つの魅力。子供の目線で描かれた心理描写。

私が今まで読んだいくつかの日本文学は大抵、大人、せいぜい若くても青年が主人公でした。
『しろばんば』では小学校低学年が主人公です。
そのくらいの幼い心で感じることが、とても細やかに描かれていたのには感心しました。

自分が子供であったならどう思うかわかりませんが、すっかり大人になってしまった私からすれば、子供の心をこれほど理解しているのは素晴らしいことです。これは自伝的小説ですので小さい頃自分がどう感じていたか思い出せば良いはずですが、それを思い出し、明確に書けるということはすごいと思います。

幼い心で理解できること、できないこと、気になること、どうでもいいこと、照れ、不安、嫌悪感、敵意、興奮、喜び、あこがれ・・・。こういうとき、こうだから、この気持ちになったと明確に書いてあります。

そして、いろいろなことを通していつの間にか自分の気持ちを抑えたり、辛さに耐えることができるようになっている主人公。
子供の成長は、どんな子供であれ、涙ぐましく輝かしいものがありますね。
(運動会のシーンでは、本当に泣きたい気持ちになりました。)

あと2作、自伝的小説があるそうなので、ぜひそちらも読んでみたいと思います。

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