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制作年:2016年 制作国:日本 上映時間:126分 日曜の“1100円で邦画を楽しむ友の会”は最近話題のアニメ作品を公開拡大なった 新宿ピカデリーで観賞.副長にとっては本年累積172本目. 戦時下の広島の軍港都市・呉を舞台に、この街に嫁いできたのんびり屋のヒロインが、 物がなく苦労が絶えない日々の中でも持ち前の明るさとしなやかさで、つましくも 心豊かな生活を送っていくさまと、そんなささやかな幸せが徐々に戦火に呑み込まれていく 残酷な現実を、丁寧な日常描写の積み重ねで描ききったこうの史代の傑作漫画を 「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督が長編アニメ映画化した珠玉の感動作. TV「あまちゃん」で一躍国民的人気女優となった能年玲奈が“のん”名義で アニメ映画に初挑戦し、ヒロインの声を好演. 1944年(昭和19年)2月.絵を描くことが好きな18歳のすずは、急に縁談話が持ち上がり、 あれよあれよという間に広島市から海軍の街・呉に嫁にやってくる.彼女を待っていた夫・ 北條周作は海軍で働く文官で、幼い頃に出会ったすずのことが忘れられずにいたという 一途で優しい人だった. こうして北條家に温かく迎えられたすずは、見知らぬ土地での生活に戸惑いつつも、 健気に嫁としての仕事をこなしていく.戦況が悪化し、配給物資が次第に減っていく中でも、 すずは様々な工夫を凝らして北條家の暮らしを懸命に守っていく. そんなある日、道に迷っていたところを助けられたのがきっかけで、遊女のリンと 仲良くなっていくすずだったが…. 以上は<allcinema>から転載. ―――――――――――――― なぜこんなに観客が押し寄せるのだろう、というのが最初の感想. とにかく席が取れない.公開劇場が少ないのが原因だが、この暮れにすこし公開が拡大. それで今回観ることが出来た.それでも今回は前から2列目の席だ.観ていて首が少し疲れた. 製作配給公開を一挙に引き受けたテアトル系はこの一作で株価が急上昇した. もっとも、製作費用はファンドたよりだったようで、エンドスクロールの後にだらだらと 出資者たちの名前のクレジットが続いた. 観客層は圧倒的に20代30代だ.40〜60代がそれに続く….「君の名は。」みたいに ご老人は少ない.戦争を知らない世代への戦争中の物語. 中身はヒロイン;すずの淡々とした暮らしの描写がほとんどだ. 昭和10年辺りから昭和22年までを対象とする. おっとりと言うか、ぼんやりした性格で、絵が上手いすず. 兄や妹との三兄弟で、家族で広島に暮す.19歳の時、見染められて呉に嫁に行く. 大半は呉での戦中の生活の描写が主になっている. 良く取材したようで当時の生活の描写が秀逸. 配給統制に灯火統制、竹やり訓練に地域ボランティアでのわらじ作り、闇市の様子…と 我々が経験したことのない世界以外も一般市民の普段の生活がたんたんと綴られる. 病院では敵勢音楽とされたJAZZを楽しむ風景も. この時代に流れるグレンミラーの調べはまったりとして素敵だ. おっとりした性格のすずは決して悲壮感なく、日々の生活を続ける. 愚痴を言うでもなく、与えられた条件の中で最大限の努力で生きている…、 この部分に感銘を受ける方々も多かろう….良く言えば日本人の特質である部分である. 辛抱強いこと、耐えることが美徳とされる…、今も変わらない事をあえて見せつけられると、 これは果たして特質なのかどうかと怪しく思えてきてしまう. もうひとつ感じたこと、戦争だからという言い訳は無視してやはり米軍の攻撃の非道さに 怒りを覚える.呉は軍港、造船の街、よって爆撃の対象となるのは当然の理なのだけど、 一般家屋に落された焼夷弾や時限爆弾は無力な一般市民を殺傷する目的以外の何物でもない. 事実すずは町中に落ちた時限爆弾で、幼い姪:はるかの命と、そのはるかの手を握りしめていた 右手を失う.それでもけなげに淡々と生きようとするすずの姿に感情移入する観客は多かろう. そして起きる8月6日の広島への原爆投下.すずの実家で妹だけが生き延びるが、原爆症に 冒されている.それでもすずは「限られた中で暮すのが我々の役目です」と生きていく. そんなすずが怒りの表情を見せるシーンが一か所だけ.玉音放送を聴いてから 町中に朝鮮国旗が高らかに掲げられるのを見て、裏山に駆け上がり怒りをぶつける. 終戦を喜ぶでなく、自らが信じてきた体制が手のひらを返すがごとく裏切った事に対する 怒りと取るべきだろうか.それともそんな為政者に従ってきた自分への怒りだろうか. 原作では語られている部分が欠落していて、この部分の解釈が難しい…. うーん原作を読みたい.ここは本作品の主張がみなぎる一番のピークシーンだろう、 言葉足らずが惜しい気がする. 映像的にはやさしい画質基調なのだけど、すずが描く画の表現が素晴らしい. これは随所に見られ、少女時代の画、結婚してからの画、特に廃墟となる前の“原爆ドーム” の画は素晴らしい….画は描かないのだけど爆撃を受けている最中の風景を、もし画にしたなら …と空想する画がまた素晴らしい. 右手を失ってからすずは画を無くしてしまうのだが、空想の世界なのかエンドクレジットで 紅を使ったすばらしいスケッチを見せてくれる.こんな素敵なエンドクレジットは久しぶり. 主演の吹き替えはのんと偽名を使う能年玲奈.好演といえるだろう. 他はプロの声優を使ったのも功をそうしている気がした. やはりプロの声優ならでは、の部分が多いのだ. もう一度最初の疑問に戻る.なぜこんなにウケているのだろう. 知らない戦争の悲惨さを見られるから? だとするならほとんどの観客は本作の本質を見誤っている. 本質は反戦であり、すずが見せた唯一の怒りが主張であろう.体制に従ってはいけない. 体制の中で“従”を演じた自らへの怒り…そこが見のがしてはいけないポイントかと思った. もちろん大半に描かれた“従”の生活への悲壮から反戦を感じてもらってもよいのだが…. . |

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本質は反戦である、と思いますが、そう見てはいない観客も多いのでは?という気がします。
副長さんがおっしゃっていられる通りで。。。
>良く言えば日本人の特質である部分である.
辛抱強いこと、耐えることが美徳とされる…、今も変わらない事をあえて見せつけられると、
これは果たして特質なのかどうかと怪しく思えてきてしまう.
この部位分がどうにも気になるのです、それが美徳かどうか?
2016/12/26(月) 午後 10:10
> 流浪の民さん
見る人によりますね.どうにでも解釈できるように作った?
だとしたら凄すぎます….
ナイスありがとうございます.
2016/12/26(月) 午後 10:17
> 小梅ママさん
ちゃんとした本名?芸名で出てこられるようになって欲しいと思います.
ナイスありがとうございます.
2016/12/26(月) 午後 10:18
> じゃむとまるこさん
今は美徳じゃないと思ってます.まして今後はそういう部分を捨てていかないと、為政者の思うつぼです(怒).
本当に観る人によって本作はころころ色を変えますね.カメレオンみたいだ.
ナイスありがとうございます.
2016/12/26(月) 午後 10:20
> チャコティ副長さんへ
そうなんです、そうなんですよ、激しく同感。
2016/12/26(月) 午後 10:24
> じゃむとまるこさん
もうほんとに今どきの政治状況は腹が立つ事ばかり…煮えくりかえってます.
2016/12/26(月) 午後 10:46
この内容をただの物語と受け取っているのでしょうか
実際に幾らでもあったことだろうに
自由すぎる今若い人には物語にしか見えないかも
2016/12/27(火) 午前 10:13
この1年はアニメの当たり年でしたね。でもそれぞれ語りたい部分が違う。本当は1作1作それぞれ感じることも違いますね。
この作品は、原作者のファンでもあり、映画化されるのを予告編で見て、ある意味どこまで映像化にしてくれるのか楽しみにしていました。
ただ原作を読んだのが結構前だったもので、映画で思い出しながらという部分もありました。
私もアメリカの攻撃の狡猾さ、それは今も通じる戦いのプロというか、勝ってナンボという戦法は今も変わらないと思いました。
公開直後に見たんで、ファン予告編に惹かれた人が多かったのですが、今は若い方も多いんですね。
真面目に真っ直ぐ見てくれたらいいのですが。
こうのさんの作品は自然体の作品が多いですし、そこにさりげなく彼女のメッセージが入り込んでいる。
のんちゃんの声がそこに上手く嵌っていたと思います。
TBお願いします。
2016/12/27(火) 午後 3:29
> きみちゃんさん
多くの人たちが観て、記憶に残すことだけでも大事かなと。風化していく事象ですものね。
ナイスありがとうございます。
2016/12/27(火) 午後 6:28
> atts1964さん
今年のアニメはレベルが高かったです.ジブリは1作も無いのに(笑).もうジブリの次の世代に入りましたね.
この原作者のもう一つの映画『夕凪の街、桜の国』もゆるやかな、でも明確な主張を持った反戦映画でした.この人の持ち味なんでしょうね.
戦争はしょせん人殺しの道具のオンパレード、まったくもって許し難い行為だと腹立ちました.これを観てかわいそう…ではなくて、戦争に対する怒りとか、戦争を推し進める奴らへの憎悪みたいな気持ちを持ってもらいたい…そう、願うばかりです.
ナイスとトラバありがとうございます.
2016/12/27(火) 午後 9:38
こんにちは♪
政治的なこと、反戦思想、それらよりも生き抜く市井の人々に感動しました。
それで号泣!ではなく、希望が持てる終わりに勇気づけられた気がします。
TBさせてください♪
2016/12/29(木) 午後 3:19
> 風森湛さん
そうそう、希望の持てるエンディングでしたね。どうであっても、生きていく…大切な事と思います。トラバありがとうございます。
2016/12/29(木) 午後 4:19
あけましておめでとうございます♪
朝鮮の旗で戦争の正体を知った主人公、映画ではもう一歩言い足りないでしょうね。何故こんなにヒットしているのか確かに見誤っているのかもしれませんね。でも自分は戦争で無くした右手に寄り添う浮浪児に感動しました。TBさせてくださいね。
2017/1/2(月) 午前 0:41
> shi_rakansuさん
あけましておめでとうございます.今年も宜しくお願いします.
ほんとうになんでヒットか疑問です.最後は“絆”でしたね.
トラバありがとうございます.
2017/1/2(月) 午前 8:15
こんばんは。

新宿ではテアトル新宿だけの上映だったと思うのですが、さすがにあの小屋ではこの大ヒット作を上映するのはムリだったみたいですね。
ピカデリーでの上映は正解だと思います。
口コミ効果の凄さを改めて知ったように思いました。
テレビなどで宣伝できない代わりにネットやSNSなどの評判が普段アニメなど観ない世代の人も劇場へ足を運ばせたように思います。
のんさんの「ありゃ〜」といセリフが良かったです。
こちらの記事もTBさせてください。
2017/1/24(火) 午後 7:40 [ kurohyo:r ]
> kurohyo:rさん
テアトルには2回振られたのですよ.ピカデリーさまさまですよ.
のんさんは好い仕事をされましたね.もっと光を浴びる場に出て来て欲しいものです.ナイスとトラバありがとうございます.
2017/1/24(火) 午後 8:50
同じく、なぜこんなにヒットしているのかわかりません。
映像は、心惹かれるものがありましたが、痛みや悲しみや怒りが伝わってこず、戦争って「こんなもんじゃない!!!」と思いました。
そして、戦争を日常にしてしまい、肯定されているようにも思えてきました。
どこに惹かれて、こんなにヒットしているのでしょうかね?
TBお願いします。
2017/2/10(金) 午前 0:03
> やっくるママさん
この流行り方、とりようによっては、戦争に従順な人たちを作ってしまうかもしれませんね。
そんなこと危惧に終われば良いのですが…。
ナイスとトラバありがとうございます。
2017/2/10(金) 午前 6:23
淡々と日常を描いているからこその怖さ、緊迫感、当時を生きた人たちのやりきれない想い、いろんなものが凄く伝わってきました。
戦争をテーマにした作品はなかなか興行成績的に伸びないし、客層も若い人たちがいなかったりするけど、この作品はたくさんの人たちに鑑賞されて凄く嬉しいです。
TBお願いします。
2017/4/3(月) 午後 2:23
> かずさん
その沢山の鑑賞者たちが誤解してないかが凄く心配です.
戦争への怖さがちゃんと反戦へ繫がって欲しいと思います.
トラバありがとうございます.
2017/4/3(月) 午後 6:26