|
条件反射とは…
コレである。この反射行動はソ連の生理学者イワン・パブロフにより発見され、犬を使った実験で世界的に有名になったもの。そそっ、例の「パブロフの犬」というアレでゴザイマスよね。この学者はその犬にえさとベルの音を同時に与えつづけた結果、ついにはベルの音だけでも唾液(だえき)や胃液が分泌されることをつきとめた…というワケである。 コレを読んでる皆様だってこんな経験があるのでは?例えば、梅干を想像するとそれまでの経験により認識した梅干のすっぱさを感じる。すると自然と口内につばがあふれ出してくるという現象。コレがまさに条件反射と呼ばれるもの。 この条件反射をアイドル歌謡曲として唄った方と言えば…そう、80年代のアイドル界に産声をあげ、太陽の女王こと松田聖子さんに対抗するかのように出現。そのクールなお姿や歌声から月の女王と比喩されその座に長く君臨したこの方。ここまで言えば大概の方はもうお気づき?そうなの、言わずと知れた中森明菜さんでゴザイマスよね。今回はこの条件反射にコジつけ、彼女が歌ったこの1曲をレビュってみたいと思うのでありまする。 「条件反射」は中森明菜さんのデビュー曲「スローモーション」のB面曲として収録され、1982年5月1日に世に出回った曲。この楽曲は明菜嬢の1stアルバム「プロローグ<序幕>」にも収録されていたが、デビュー曲とこのB面曲を含むアルバム収録の全曲が実はデビュー日から遡ること数ヶ月前の2月に米ロサンゼルスにて録音が完了していたものなのである。コレに関しては当ブログをご贔屓にしてくだすっている皆様ならば、大概はご承知のことかと思われ。また、それら収録曲の中からデビュー曲に相応しいであろう数曲が絞りこまれ、最終的に「スローモーション」が勝ち名乗りをあげた…というのも知られたエピソードか。ちなみに「スローモーション」を除く数曲というのが「あなたのポートレート」「銀河伝説」「Tシャツ・サンセット」だったと聞くが、デビュー曲のB面に堂々収録の「条件反射」はそれら候補からはアブれていたというのことなのか、ナゾ。 それでもデビュー曲のB面として選ばれるくらいだから、それなりに評価は高かった曲なのではないかと勘ぐってみたりもする。というかこの曲…後に「少女A」で大化けすることになる歌姫・明菜の「プロローグ」?まさに序幕的な作品として位置づけてしまっても良いのではないかと感じるのである。なぜならその作風が…
コレだからなの。かといって「少女A」のソレと同じくらいのインパクトやツッパリ色が感じられるのか?と問われれば、ソレはないカモね…とやけに弱気になるワタクシメ。(笑)それでも先述した1stアルバム収録曲のなかでは唯一のソレ系楽曲であるからして…コレはまさしく明菜陣営における先見の明が発揮された作品?要は陣営が彼女の秘めたる可能性を早くから見出していた証と言ってよろしいのではないかと感じるのである。 そんな本曲の作家陣は作詞が中里綴氏、作曲は三室のぼる氏、編曲は船山基紀氏という面々。元々本曲は三室氏がギターインストとして書いた曲だったようであるからして、もしかしたら次作アルバム「バリエーション<変奏曲>」のような構成(インストから始まって楽曲へ移行するパターン)が「プロローグ<序幕>」でも企画されていたのかもしれない。しかしながらギターのインスト用作品のメロを軽々と口ずさんでしまったという明菜嬢…陣営側も驚嘆したあげくの急遽予定変更?歌詞を宛がっての収録と相成ったのカモ。 さて、作詞をされた中里綴氏はかつて江美早苗という芸名で西野バレエ団の一員として活躍された方。金井克子さん、由美かおるさん、奈美悦子さん、原田糸子さん等とともにその一団の代表的存在として一時代を築いた。その後は歌謡曲歌手へと変貌されシングルも数枚発表したが、1974年頃に作詞家へ転向。作家としての代表作は1976年に田山雅光さんが歌ってヒットした「春うらら」(補作詞として|オリコン最高16位、21万枚)、南沙織さん「人恋しくて」(オリコン最高8位、23.2万枚)あたりになるが、他にも珠玉として伊藤咲子さん「寒い夏」、沢田聖子さんの「キャンパススケッチ」や「雨の日のサンシャイン」、80sアイドルの堀ちえみさんには「真夏の少女」、林紀恵さん「えとらんぜ」、河合美智子さん「サマーホリデー」などなどを提供。ワタクシメ的にはかなりお気に入りの作家さんであり、醒めた雰囲気の作品においてはそのセンスの良さがキラリンコンかと。明菜さんの1stアルバムでは「Tシャツ・サンセット」「A型メランコリー」、2ndシングル「少女A」のB面に収録された「夢判断」、別アルバム収録の人気曲「ヨコハマ A・KU・MA」も彼女作である。 ♪ちょっと 写真うつり よかっただけ そして 人あたりも よかっただけ 追いかけるほど 好きじゃないわ ひと晩 眠って忘れる ♪自動扉が 開いて閉じて 日暮れの街に あなた出てゆく ♪生意気涙が こぼれて落ちる 逆流 条件反射 目を伏せたわ ぎりぎり意地くらべ 今 8ビート ジレンマを抱え苛だつ様子を表現したとおぼしきアグレッシブエレキとシンセ音が絶妙に絡まるイントロ。以降の明菜嬢における一連のツッパリ系作品と同等の匂いをプンプンと漂わせる。明菜嬢の歌声に関しては出だしからドキリ!とさせるナニかを感じさせるものの、以降作ほどの迫力はまだ芽吹いておらず…である。まだまだツッパリ切れていない部分も見受けられ、そこらB級アイドルのソレ系小唄と勘違いされる恐れも?だけどそこがまた初々しくもあり、逆に良い点なのだけれども。それでも明菜嬢における独特の持ち味…そそっ、低く轟く翳りのある歌声はすでに頭角を現しているのが確認できる。山口百恵でもない、三原順子でもない、中森明菜という存在がかなり強い主張を携え聴き手に訴えかけようとしている…とでも表現したらよいのかしらん?大化けする直前の…潜伏する歌ヂカラ?ソレはこの曲における歌唱でも垣間見られるのである。 メロ上での特筆は♪生意気涙が〜のトコロ…ナミダの「ミ」にあたる半音使いかと。コレは明菜さんの2ndアルバム収録で伊豆一彦センセイ作曲「キャンセル!」のソレと双璧とも言える。また、♪好きじゃないわ〜のトコロにも要注目!コチラは後の「少女A」における♪関係ないわ〜につないだ引導役?のようにも思えたりで。 生意気、ツッパリ、負けず嫌い…本音とは真逆のことばかりをしでかす主人公。素直でいられるのは夢の中だけ。だけど現実には恋焦がれる彼からの求めに怯えてしまい、それが元でトラブルに。たかがトラブルと醒めてはみたものの…ソレに対して動揺しまくる自分がいる。そのトラブルによる口論の末、彼からは「つまんない女」とでもののしられたのだろうか。そしてオトコは足早にその場を立ち去り、日暮れの街へと消えてゆく。自動扉が開いて閉じて…ひとり残されたこの場所で、他人が出入りする度にその音が耳の奥までしつこくこだまする。自動扉の音と彼…彼女の中で条件付けが確立され、条件反射と呼ばれるモノが構築されてしまった瞬間か。 ♪光る稲妻 急に夕立ち 胸の底までどしゃ降りになる 生意気盛りに ピリオド打つわ 瞬間 条件反射 追いかけるわ 後悔の嵐は 今 8ビート 反射を起こさせる刺激、それとは無関係な第2の刺激…主人公は自動扉により引き起こされている第2の刺激に操られている。どんなに意思の固い人や意地っぱりの人でも、反射行動には決して逆らえないと言う。序盤で「追いかけるほど好きじゃないわ」などとイキがっていた主人公がウソのようなアリサマである。この後の彼女が起こした行動とは…そう、消えた彼の姿を求め日暮れの街を彷徨い歩きつづけた…。どんなに意地はった生意気盛りの主人公ですら、条件反射により引き起こされた彼の残像刺激には勝てなかった…ということなのか。 1番、2番、そしてサビ部分の繰り返しという構成からなるこの曲…よくある歌謡曲上のソレなのだが、おそらくその中では小1時間程度の物語が描かれているのでは?と推測する。本曲に関する人様のレビューを読んでみると、ほめちぎるものは殆ど存在しない。それらの多くが「他愛もないポップス」とか「B面相応の曲」など…おそらくはその内容よりもまだまだ未完成で発展途上だった明菜嬢に興味の大半が注がれてしまっていることによるご感想のように思えるのである。だけど待ってよ…たかが「条件反射」されど「条件反射」?ワタクシメにとりましてはそのように軽くあしらうことができない確固たる理由が…。 ●小1時間という短い間に起きたことを「歌詞」として簡潔・劇的に描く ●電気じかけ、ある程度の重みにより繰り返す動作が生じる自動扉を小道具に ●自動扉と彼をリンク、条件反射の原理を説く ●その刺激に逆らえなくなる主人公の姿を如実に描く どうよ、コレ…。ワタクシメの推測が完全なるハズレだったとしても…条件反射とその心理を巧みに描いていることに変わりはないわけで。中里綴さん!アナタはこの曲でスバラシイお仕事をされた。いや、この曲以外でもワタクシメのツボにハマる歌詞をたくさん書いてくだすった。なのにあのムゴい最期…改めてお悔やみの花束をアナタへ贈りたい。そして本曲をティーンの感性で素晴らしく表現してくれた明菜さん…そろそろ出てきてくださいナ、もぅ。
アナタはまさしく時代の寵児であり、そして輝きに満ちあふれていた。ツラく悲しいこともたくさんあっただろうけれども、アナタというヒトはこのまま終わっていいヒトではないはず!歌姫としてのご使命が…ネ。いつまでもいつまでも...待っておりますからん。 それにしてもこれまで本曲を低評価していた人たちぃ!
状態かしらん、ナゾ。たかがB面、されどB面…あなどれませんのよ。(笑) ☆作品データ
作詞:中里綴 作曲:三室のぼる(1982年度作品・ワーナーパイオニア) |

>
- エンターテインメント
>
- 音楽
>
- 邦楽


