コパンのうら

熊本県北部の山鹿市にあるちいさなフランス料理店「ビストロ シェ・ル・コパン」の舞台裏です。

日記

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この間、シェフにおそるおそる言いました。

「あのね、作っていただいてる立場で本当に申し訳ないのだけど、正直に言うと、今まかないで使ってるうどん、あれ、まずいです。あれなら、わたしは食べないで、あなたが作った出汁だけ飲んで、あとはあなたが作ったパンをかじって食事を終わらせたい。あのまずいうどんはもう食べたくないです」

わかった、とシェフ。

数日後、定休日に長崎を訪れると、「ふるさと市場」なるイベントで某うどん名産地の手延べうどんが売られていました。せっかくだから買ってみよう、とシェフ。販売員さんは、産地で実際にうどんを作ってらっしゃるらしい女性でした。70〜80歳くらいの痩せ型ですが、キレイにお化粧をされていてとても若々しい。白い割烹着に白い三角巾をつけて、ニコニコとわたしたちのほうへ近寄ってきます。

女性「これね、釜揚げにして、生卵やあごだしスープで食べるとおいしいのよ」

シェフではなく、わたしに向かって話しかけます。

ええ、肉屋さん、魚屋さん、総菜屋さん、八百屋さん……食品が売られるお店へ行くと、たいていの販売員さんはシェフでなくわたしに話しかけます。料理を作るのは男性ではなく女性、と思われるのでしょうね。わたしたちも慣れているので、さりげなく受け流しながら、ふたりでふむふむと説明に耳を傾けます。おいしそうだったので、購入決定。販売員さん、うれしそうです。

女性「どちらから?」
シェフ「熊本です」
女性「ああ、ランタンフェスティバルを見に?」
わたし「ええ」
女性「もうお子さんは成人したんですね? それでおふたりだけでいらしたんでしょう?」
シェフ・わたし「!」

……あ、念のために申し上げますが、心が傷つけられた、とかはないです(←それほどデリケートではない)。これほど疑いなく決めつけられたことにちょっとビックリしただけです。このうどんの産地は離島なので、あちらのほうではそれが100%当たり前なのでしょうか。とくに販売員さんの年代の方たちにとっては、なお。

結局、「ええ、まあ、そんな感じです」と、あいまいに返答しました。これ以上話を広げて謝られても、あるいは逆に異星人を見るような目で見られても困りますし(苦笑)。

先入観、思い込み、あるいはそれに伴う差別とかって、その人の経験値と想像力の問題だと思うので、こういうことがあるとつい「翻って、自分はどうだろう?」と考えさせられます。できるだけ、自分の価値観や考え方について「それがふつうでしょ?」「当たり前じゃない?」「常識でしょ?」などと決めつけず、未知の価値観や考え方にも耳を傾け、広く受け入れていきたいです。「ふつう」なんて、時代、国、あるいは地域、または家庭によって異なるわけですし。それから、他人と知り合った時に、パッと見や肩書きだけで判断しないようにしないと。

思えば、これまで40年近く、いろいろな先入観や差別を受け流しながら生きてきたような気がします(まあ、みんなそうかもしれませんが)。中学時代のいじめに始まり、社会では「新人類」差別や女性差別、外国ではアジア人差別、移住先では出身地差別。学歴、職歴、未婚、子なしとか。かつては「見た目が同性愛者なのにそうじゃないのはおかしい」と同性愛者の方にお叱りを受けたこともありますし(笑)、今でも「美容師さんですね」としょっちゅう決めつけられますし(先週も今週ももまた言われた!)。マジメな堅物と敬遠されたこともあれば(←たぶん人見知りのせいで)、逆にチャラチャラしてるとなじられたこともあります(←たぶん服装のせいで)。

なんだか、これだけ「そうあるべきわたし」をつきつけられると、そういう自分がパラレルワールドのどこかに存在するのでは?という気にさせられます。

そこでのわたしは、毎朝きちんと早起きしてお弁当を作り、あごだしスープをとってうどんを作り、成人して都会で就職した子供とラインでやりとりをし、夫の有給に合わせて夫婦そろってドライブをし、久しぶりに羽を伸ばして長崎ランタンフェスティバルを楽しんでいる……。

で、ランタンフェスティバルでバッタリもうひとりの自分に会うんですね。

わたし1「わっはっは、何、その髪の色。あんた、美容師なの?」
わたし2「ちがうわ。てか、あんたこそ何、意識高い系?」
わたし1「やめて、その言い方。あのね、家族と社会貢献が生きがいなの、悪い?」
わたし2「悪くない悪くない。ステキステキ(拍手)」
わたし1「ケンカ売ってんの? しかしあんた見事に黒づくめねえ、何その革ジャン、ドクマの8ホールって」
わたし2「悪い? 生涯パンクよ」
わたし1「ふうん、そうか、そっちへ行ったわけね。楽しい?」
わたし2「まあね。なんだかんだ言って好きなことさせてもらってるし。あんたは?」
わたし1「わたしは、やりたいことよりやるべきことを優先したんだけどさ、まあ、戦ってるよ、日々」
わたし2「だろうね、あんたは守るべきものがたくさんあるだろうから」
わたし1「まあね。あんたほどの勇気はなかったけど」
わたし2「いやいや、あんたはわたしの誇りだわ。じゃあね、元気で」
わたし1「ありがと。生まれ変わったらあんたみたいに生きたいわ。じゃあね」

ああ、妄想が止まらない。


写真はランタンフェスティバルより。亥年にちなんで。

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大きな声では言えませんが、実は、ファンタジー音痴です。

ハリーポッター、読んだことも観たこともありませんでした。
ナルニア国も指輪物語も知りませんでした。
ディズニーにも関心がなく、ゲームもやらず、ファンタジーとして知っているのはせいぜいグリム童話とアンデルセン童話くらい。

だから、今回訳したファンタジー関連レシピ本、本当に必死に勉強しました。
一カ月で映画30本以上を観て(一日2、3本観ました)、本20冊以上を読み、ネットでとことん調べまくりました。詳しいお客さまに教えていただいたりもしました。

こうして心身ともにファンタジー漬けになり、いざ翻訳。
ドキドキしながら提出した原稿、なんと編集者さんに大好評でした。

しかし、問題は読者の方たちの反応です。

内容がどっぷりファンタジー寄りなので、料理ファンには読みにくくないかしら。
ファンタジーファンには「原作のイメージが狂った」と叱られないかしら。

不安要素はたくさんありました。

ところがフタを開けてみたら、ファンタジーファンの方たちの喜びの声が多数!
「作者と訳者のファンタジー愛を感じます」と書いてくださる方もいて(詳しくはツイッターで検索を)、感涙にむせびました。

この仕事でこれほど「報われた」と思ったのは初めてかもしれません。

レシピについて「?」というところをちょこっと手直ししたり(著者は料理愛好家であってプロではないので、分量や手順にケアレスミスが)、どうしても不明なものはシェフに試作してもらいました(写真下)。

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著者のファンタジーオタクっぷりを十分理解した上で、その距離感を日本人読者向けにするために表現を工夫したりもしました(三人称を一人称にするなど)。


そんななか、そこそこ苦労したことの一端として、「固有名詞の正しい翻訳」があります。

本書で取り上げられている作品、オリジナルは英語で書かれているのがほとんどですが、それをフランス語に訳した時に固有名詞を変えられてしまうことがよくあるのです。

とくに「ハリー・ポッター」関連。

一例を挙げましょう(※)。

ホグワーツ Poudlard(プードラール)
ハーマイオニー Hermione(エルミオンヌ)
セブルス・スネイプ Severus Rogue(セヴリュス・ローグ)
屋敷しもべ妖精 Elfe(エルフ)
ホグズミード村 Pre au Lard(プレ・オ・ラール)
ニュート・スキャマンダー Norbert Dragonneau(ノルベール・ドラゴノー)

いえ、ハリー・ポッターにとどまりません。

グースバンプス  Chair de Poule(シェール・ド・プール)
スラッピー M. mechant garcon(ムッシュー・メシャン・ギャルソン)
エンシェント・ワン(『ドクター・ストレンジ』) l’Ancien(ランシアン)
ダーリン(『奥さまは魔女』) Jean Pierre(ジャン=ピエール)
マジカ・デ・スペル Miss Tick(ミス・ティック)
朝びらき丸(『ナルニア国物語』) Passeur d’Aurores(パスゥール・ドロール)
のうなしあんよ(『ナルニア国物語』) ganipodes(ガニポッド)
この世の果てのはじまりの島(『ナルニア国物語』) ile du Commencement du Bout du Monde
時限ネズミニナール(『魔女がいっぱい』) potion a retardement(ポシオン・ア・ルタルドゥマン)
中つ国(『指輪物語』) Terre du Milieu(テール・デュ・ミリウ)
霧ふり山脈(『指輪物語』) Monts Brumeux(モン・ブリュモー)
木のヒゲ(『指輪物語』) Sylvebarbe(シルヴェバルブ)
レッドドラゴン・イン(『WOW』) Auberge du Dragon Rouge(オーベルジュ・デュ・ドラゴン・ルージュ)
フレンドリーアーム・イン(『WOW』) Brasamical(ブラザミカル)

ファンタジー好きな人なら、読んでいて「ああ、これはあれを指してるんだな」とあっさり推測できるのかもしれません。でも基礎知識がないわたしのような人間には「は?」という感じ。

Auberge du Dragon Rougeなんて、うっかり「赤いドラゴンの旅籠」ってまんま訳しちゃうところでしたよ、危ない、危ない。
Terre du Milieuは「中間の土地」、Chair de Pouleは「鳥肌物語」。
potion a retardementなんて原書に当たるまでさっぱりわかりませんでした(え? 時間差魔法薬?)。

だいたい、セヴリュス・ローグって誰なんだ。ノルベール・ドラゴノーでいいのか。ダーリンはダーリンでしょ、ジャン=ピエールってひどくないか。

……などと、ぶつぶつ独り言を言いながらも、まあ、わりと楽しく訳していたのでした。

まあね、よく考えたら、「白雪姫」という日本語訳だって、なかなかオリジナリティがありますよね。もともとはスノウホワイトでしょ?(フランス語はBlanche Neigeブランシュ・ネージュでまんま) そういやむかしは、シンデレラのことを「灰かぶり姫」と訳してたんでしたよね(フランス語はCendriillonサンドリヨンでほぼまんま)。

それにしても、『ナルニア』の固有名詞の日本語訳は素晴らしいと思いました。訳語のセンスが詩的。訳者の瀬田貞二さん、感服いたします。

ちなみに、1966年に刊行された瀬田さん訳の『ナルニア』では、ターキッシュ・デライト(ロクム)は「プリン」と訳されています。当時の日本ではまったくなじみのないお菓子だったので、読者層の子供たちにわかりやすい訳にされたそうですね。読み手のことをきちんと考えた見事な訳だと思います。瀬田版『ナルニア』を読んで育った人たちにとって、あのシーンのお菓子は「プリン」でなくてはならないと思いますが、レシピ本という性質上、本書では正確な名称を使わせていただきました(と、こんなところで説明したりして)。

本書を訳している最中、どうしてもロクムが食べたくなって、東京の専門店から取り寄せてしまいました。……と、書いてたらまた食べたくなってきた。もう一度買おうかなあ(←レシピ見て自分で作れよ)。

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あ、それから、ハリー・ポッターのバタービールに使うこのルートビアクリームソーダ、初めて飲みましたが意外とおいしかったです。

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あとですね、ファンタジーファンってやさしい人が多いんだな、と思いました。純粋で、寛容で、心が広い。このリアルな現代社会、何かと許容範囲が狭いというか、ぎすぎすした雰囲気が蔓延している気がしますが、ファンタジー世界ではさすがにさまざまなクリーチャーが共存しあっているだけあって、みんな自分と異なる他者に対しておおらかだなあ、と思いました。ファンタジーファンのファンになっちゃいました。

いちおう、リンク貼っときます。



※ 本文中のフランス語のアクサン記号は文字化けするのは省いています。




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自分が死んだら、ということを考える年齢になりました。肉体が消えること自体はまあしかたがないな、と思えるのですが、自分の神経細胞に保存されている、自分しか知らない記憶も一緒に失われることを思うと、うーん……と、まだ諦めがつきません。

まあ、残しておいても何の役にも立たないことばかりなんですけどね。

ふだんの会話にも上らず、それについてずっと考えているわけでもない。でも、ふと、何かの拍子に時折思いだす遠い記憶。輪郭がおぼろげになって、感熱紙の文字のようにうっすら消えかかっているけれど、決して完全に失われたわけではない。

そんな記憶を、ここでたまに書き残しておこうかな、と思いました。この世から完全に消えてしまう前に、今のうちに。




赤いがまぐちタイプのバッグを見かけると、あの子を思いだします。

半世紀前(!)、幼稚園に入園とほぼ同時に水ぼうそうになってしまったわたしは、4月の最初の一週間、幼稚園を休まざるをえませんでした。

水ぼうそうがようやく治り、遅れて幼稚園に通いだすと、クラスの子たちはすでに数名ずつの仲よしグループを作っていました。知らない子たちが楽しそうにおしゃべりをしている輪に、わたしはなかなか入ることができませんでした。

わたしは、トイレに行っても、すぐにまたトイレに行きたくなるようになりました。半べそをかきながら一日に何度もトイレに通う姿を見て、母は病院へ連れていってくれました。「先生はすぐに治るっておっしゃったよ」と、笑う母。その夜、眠れずにいた布団の中で、母が父に「あの歳でストレスですって」と小声で話しているのが聞こえました。

トイレの病気が治ったのは「やべくん」と仲よくなってからでした。茶色くてさらさらの髪をした、色白で、やせてて、目が大きくて、とてもかわいい男の子。透きとおった声で、ゆっくり静かに話をします。お絵かきがとても上手でした。とくにお姫さまの絵が得意で、白雪姫、シンデレラ、眠り姫……いずれももうっとりするほどかわいく描きました。わたしはやべくんと一緒にお絵かきをするのが好きでした。

やべくんは、町で一番大きな5階建てのデパートの真ん前にある、ちいさなおうちに住んでいました。

自宅から歩いて10分ほどのそのおうちへ、いつ、誰と、どうやって行ったのか、記憶は定かではありませんが、確かに、一度だけ遊びに行ったことがあります。

お人形、カラフルな絵本、ぬいぐるみ、ガラス玉やビーズのアクセサリー……やべくんのお部屋にはかわいいものがたくさんありました。わたしのうちは母の教育方針で、人形やぬいぐるみやおもちゃはほとんど買ってもらえず(その代わり、本はいくらでも買ってもらえましたが)、やべくんがうらやましくて、それらのお人形でたくさん遊ばせてもらいました。

やべくんはかわいいバッグやポシェットもたくさん持っていました。「はい」と差し出されたのは、真っ赤ながま口タイプのバッグ。「ふたつ持ってるからひとつあげる」。わたしたちは「おそろいだね」とバッグをぶら下げ、手をつないでお出かけごっこをしました。

やべくんとの記憶はそこで止まっています。

その後、わたしは幼稚園に少しずつ慣れていき、ほかにもたくさんお友だちができて、おそらくやべくんとは疎遠になってしまったのでしょう。あるいは、幼い子供同士で(それなりに高価な)ものをあげたりもらったりする習慣がつくのを恐れて、親同士がそれとなく引き離したのかもしれません。母に尋ねたわけではないので、わたしの勝手な憶測ですが。

でも、心因性頻尿が治ったのはやべくんのおかげでしたし、やべくんと一緒に遊ぶのはとても好きでした。あれはたぶん、わたしの初恋でした。ただ、やべくんのほうは、おそらく「女の子同志」としてわたしと遊んでくれたのでしょうけれど。でも、あの子が男の子だろうが、女の子だろうが、それはどうでもいいことです。あの時も、そして今、こうしてあの時のことを思いだしても。

あの子は今、どこで、どうしているかしら。



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写真は、2月1日に発売された記念切手。発売直後にダッシュで買いに走りました(というか、シェフに買いに走らせました(苦笑))。都内20の名店のスイーツが描かれています。わたしたちが大好きなオー・ボン・ヴュー・タンのカヌレも。雑誌『BRUTUS』監修だそうで、さすがですね。



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どうやらうちのシェフは、料理人の仕事こそ世界でもっとも大変で、苦しく、手間暇がかかり、でも有意義で、楽しく、素晴らしい仕事だと思っているようです。

その一方で、文字を読んだり書いたりする仕事は、簡単で楽ちんで、世の中の役に立たない、ほぼ無意味な仕事だと思っているようです(……と言うと本人は否定しますが、ふだんの言動を考えるとそうとしか思えない)。本人が活字を読まないからでしょうか(料理書は例外ですが)。

そこでわたしは、自分が「怠け者」だと思われないよう、翻訳の大変さをアピールすべく日々努めております。「ここ1カ月ほど毎日4時間ずつしか寝てないんだよねえ」「たまに起床した途端に幻聴が聞こえるんだよ」「深夜仕事している最中に幻覚が見えることがある」など、狼少年にならない程度にちょこちょこと話して聞かせるのですが、どうも本気にされておらず、話が右から左へ抜けているようで一向に効き目がありません。


実は先日、日頃からお世話になっている東京の翻訳会社の方たち(おふたり)が、九州出張の帰途にうちに立ち寄ってくださいました。

社長さん(女性:Yさん)はフランス滞在経験があるフランス語翻訳者でもあり、お連れの敏腕翻訳者さん(男性:Sさん)は社内で「シェフ」と呼ばれている玄人はだしの料理好きです。おふたりともうちの料理を喜んで召し上がってくださいました(よかった!)。営業終了後は、バーに場を移して三人で日付が変わるまでいろいろお話をしたのですが(仕事柄全員宵っ張りなので)、話題のほとんどが翻訳ではなく料理(笑)。どこのレストランがおいしいとか、どういう道具が使いやすいとか、どういう機会に何を作って食べたとか……。

旅行や海外生活の話題になった時、Yさんが若い頃にカステルノダリに長期滞在していたと伺い、思わず鼻息を荒くするわたし。「カステルノダリ! あの、フランス南西部名物料理、カスレの三大名産地のひとつじゃないですか! カステルノダリに住んでいたという方に初めてお会いしました!」と、大興奮。ああ、羨ましい……わたしもカステルノダリのカスレを食べてみたい……(ちなみに、ほかのふたつの産地はトゥールーズとカルカッソンヌ)。ただ、どうやらYさんは白インゲン豆が苦手でいらっしゃるようで、滞在中食べたカスレはすべて豆を残してしまったのだとか(もったいない)。あ、ちなみに、現在うちのお店では期間限定でカスレをお出ししてますよ。本場の味を追求したカスレです。よろしくお願いします(と、ちゃっかり宣伝)。

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閑話休題。

そんななか、「なんだかさっきから料理の話ばかりだけど、翻訳のことで何かあったら言ってくださいね」と、Yさんにご親切におっしゃっていただいたので、すかさずわたしは訴えました。

「あのですね、うちのシェフ、翻訳を『簡単な仕事』だと思ってて、わたしの苦労をちっとも理解してくれないんです。どうかうちのシェフを説得してください」

YさんもSさんも「え、まさかそんな」と、突然表情を曇らせ、眉をひそめられました。

そうです、大変で、苦しく、心身共にくたくたになり、でもちっとも報われない、それが翻訳、と、わたしは思っていたのですが、おふたりともそんなわたしの言葉に真顔で大きくうなずかれます。ああ、この苦労をわかってくださる方にこうしてお会いできる機会を、どれほど待ち望んでいたことか(号泣)。これで報われました。ええ、いいのです、好きでやってる仕事ですから、これ以上の愚痴や不満を言うつもりはありません。ただ、この苦労をわかってくださる方がいらっしゃるというだけで、それだけでこれほどまでに嬉しいのです。ありがとうございます、Yさん、ありがとうございます、Sさん。

すると、Yさんがおっしゃいました。

「実際、仕事のストレスのせいで、長編の翻訳を抱えた訳者さんが仕事中に急死してしまうケースがとても多いの。それほど大変なのよ。第一、このSだって、翻訳の仕事が辛いから料理に逃避してるようなものだから。シェフにもそこは理解してもらわないと」

Sさんも大きくうなずきます。

……そうか、そうですよね。

翌日、さっそくシェフにYさんのことばを言ってきかせます。「仕事中に急死」ということばに、シェフも多少はビビったようす(にやり)。わたしがいくら大変だと言っても聞く耳を持たなかったのに、やっぱり第三者の話はいいなあ、助かるなあ。ほくほく。

さらに好都合なことに、さいきんわたし、よく鼻血が出るんです。子供の頃でさえ一度も出たことがないのに、50をすぎた今になって突然。いいチャンスなので、鼻血が出ると「ああ、鼻血が……」と、わざと悲壮感をにじませた表情をしてシェフに見せます。「やっぱりストレスかしら……」とつぶやいたりして。けっこう効果的です(笑)。

あ、どうぞご心配なく。わたしも少し心配になっていろいろ調べましたが、たいしたことはないようです。頻度も量もそれほどではありません(シェフには内緒)。たぶん、神様がシェフの理解を促すために与えてくださったミラクル現象でしょう。

ちなみに、今は何も抱えてなくて、一休み中。だからこうしてブログをわりとまめに更新している次第です。でもこうして何もないと、仕事がしたくなるなあ。あの苦しさ、辛さ、睡眠不足が恋しくなるなあ。……マゾか? 






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ミントクリーム。

今冬の大収穫、それは、これに出会ったこと。

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ミントクリーム(ミント入り馬油)です。

北海道の会社、北見ハッカ通商さんの商品です。以前から、虫除けのためにここのハッカ油を愛用しておりました。

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秋ごろでしょうか、デパートの催事場でやっていた北海道展にふらりと立ち寄ったところ、こちらの会社のブースを発見。ハッカ油以外にいろいろな商品を出していることを知り、試しに使ってみようと思って購入したのです。ミントの香りが爽やかでしたし。

もう、これが大ヒット。

こちら、見苦しいですが(すみません)、2年前のわたしの手です。

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この後、この赤みが手の甲いっぱいに広がり、痛くてかゆくてつらい思いをしました。利き手なので、お客さまにお料理をお出しする時に見苦しくて申し訳なかったです。皮膚科に行って飲み薬とステロイド剤をもらって治療しましたが、昨年冬も再発してほぼ同じような状態でした(写真は撮りませんでしたが)。

ところが今冬、これを使ったところ、ひび、あかぎれ知らずに。

わかりにくいですが、今はこんな状態です。手のひらだけでなく、指先もまったく無傷。こんなこと何年ぶりでしょう。

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すっごく嬉しいです。

あ、なんだかこちらの会社の回し者みたい? マージンもらってるんじゃないかって? いえいえ、本当にただただ嬉しさ一心でこれを書いてるだけです。

肌質や生活スタイルによって合う合わないがあると思いますが(ひとによっては塗った直後のベタつきが気になるかも?)、わたしは気に入っています。お店の休憩時間と夜寝る前に塗ってるのですが、そろそろなくなってしまうので買い足さないと。もはやこれなしで生きていける気がしない。


おまけ。

今、お店の一角がボウイの祭壇みたいになってます。いただきものです(すべてイギリスの切手です)。Yちゃん、Sさん、ありがとうございます。

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