【左ピッチャーは有利か?】
答:有利です。
以上
・・・ってワケにも行かないのが世の中で^^;
左投げのピッチャーの優位性はよく語られます。
「左のピッチャーはどの球団も欲しい」「左ピッチャーのストレートの球速145Km/hは、体感的には150km/H以上の急速に感じられる」「左打者外角への左ピッチャーのスライダーは極めて有効な勝負球」・・・・いろいろと語られるものです。
一体その説はどこから来るのか。そもそも本当のコトなのか。
それをちょっと考えてみたいのです。
日本人全体での「左利き率」は11%〜12%だったかと思います。
そして、日本のプロ野球に於ける、支配下登録されている左投げのピッチャーの割合は30%を余裕で超えており、33〜35%くらいだったと思います。
すでに、「日本人の左利き率よりもプロ野球に於ける左ピッチャー率が高い」、と言う時点で、“少なくとも左投げには何らかのメリットがあるからプロ野球での左ピッチャー率が高いのだろう” と推測することは出来ると思います。
そして、
その、“何らかのメリット” は、
けっこう単純なコトなんじゃないか?
そう思うのであります^^;
私は、小学校3年生のリトルリーグ(大人と同じ硬式球使用)から、何らかのリーグ・チームで野球をやって来ました。
私は右利きで、主に投手や三塁手をやっていました。
私は、「右投げ左打ち」です。
打撃に於いて、利き目が右目だからとか、右腕の力が強いので右腕のリードでスイングしたほうが速く強くボールにコンタクトできるからとか、そもそも左打席のほうが一塁ベースに近くて内野安打になり易いとか、いろいろ理由は付けられるのでしょうが、単純に言ってしまえば「よく打てるから」と言うシンプルな動機で左打ちになっていました。(けっこう自然に)
バッターボックスに立った時、特に左投げのピッチャーに苦手意識はないのですが、やっぱり打率は対右ピッチャーよりも3分〜5分くらい低かったと思います。
技術的には苦手意識はないけど、
成績を見てみると打てていない。
そんな感じです^^;
その理由は何なのか。
ちょっと考える機会があり、
自分なりに結論めいたモノに至りました。
それは、
そもそも左ピッチャーって少ないからじゃん?
です。
小学生の野球は、当然ですが所詮「こどもの野球」です。
ピッチャーをやる子が投げる球は遅いですし、変化球を投げる子なんてそうそういません。
バッターも子供ですから、それで釣り合いがとれるワケです。
私にはン十年も昔のコトなのに忘れられない試合があります。
それは、私が小学校4年生の時にピッチャーとして臨んだ試合でした。
私は父親の仕事の関係で社会人野球の選手の方々と接する機会が多く、社宅にも社会人チームの選手や監督やコーチが住んでおり、毎週のようにその大人相手に野球を教わりました。(もちろん普段着のままで遊びの延長でしたけど…)
投手の方には速い球を投げるにはどのように身体を使ったら良いか、とか、カーブ、スライダー、シュートなどの変化球の握りやリリースの仕方を教わりました。
野手の方々に教わったのは、「ショートバウンドでの捕球が一番エラーにならない確実な捕り方なんだよ」と言ったことや、フライを捕る時は、「ボールが落ちて来るまでは“おでこで捕る”気持ちで落下点に入ることだけ考える。落ちて来るボールが近づいたら自然にグラブは出せるものだから心配ない」と言った事を教わりました。
その“指導”のおかげで、私は4年生にしてエース兼三塁手みたいな存在でした。同学年の子には打たれない自信がありましたし^^;、同学年の子のボールは高い確率で打ち返せる自信がありました^^;
私は少し天狗になっていました^^;
そんな子供天狗の鼻っ柱を折られたのが「忘れられない試合」です。
私はピッチャーで先発し、ほぼストレートとカーブだけで相手の打線に点を献上しませんでした。 最終回(7イニング制)まで投げ抜いて零封し、結局ヒットは一本も打たれませんでした。四球を2個出してしまいましたが、私はノーヒットノーランを記録しました。
しかし、勝てませんでした。
我がチームの打線も1点もとれなかったからです。
しかも1本もヒットを打てず、四死球も得られませんでした。
すなわち、
勝敗は0-0で引き分けでしたが、
”完全試合を達成されての引き分け”でした。
私も含め、我がチームが相手のピッチャーから一本もヒットを打てなかった理由はハッキリしています。
『相手のピッチャー・浜松君(仮名)の球が速くてバットにかすりもしなかったから』です。
浜松君はアタマ一つ背が大きく、体形も大人並みにガッチリしており、さほど力感のないピッチングフォームにもかかわらず、彼の投げる球は「とてもじゃないけど子供には打てない」ものでした。 我がチームの何人かは、浜松君の球が怖くてロクにバットも振れないほどで、7イニングの中で打球が前に飛んだのは私の一塁ゴロ1本と四番バッターのピッチャーフライの計2本だけだったと思います。 ようするに、前に飛んだ2本以外、私も含めて他の打席は全て三振だったんです。
浜松君は左投げでスリークォーター(上手投げと横手投げの中間)くらいから投げ込んで来るのですが、ゆったりと自然体で投げて来るにもかかわらず、ボールはアッと言う間に飛んで来て、バットが全く間に合わないんです。
彼は私と同じ4年生でしたが、その後シニアリークに入り、高校では甲子園には手が届かなかったものの地区予選では多くの完封勝利を重ねました。大学以降の消息は分かりません。
とにかく、浜松君の球は、「初めて見るスゴい球」でした。
私が放った一塁ゴロは、あまりに速い浜松君の球に遅れまいと“早めにバットを振り出して”、たまたまミートできただけであり、「タイミングを計ってスイングする」と言ったバッティングではありませんでした。
プロに於いても左ピッチャーに優位性があって左ピッチャー率が高いのも、基本的には私が浜松君の球を打てなかったのと同様の論理だと思うんです。
小学校の頃、同学年くらいの子が投げる球は打てました。
中学校になっても、同学年の子が投げる球は打てました。
高校生になっても、同学年の子が投げる球は打てました。
社会人になっても、同レベルの人が投げる球は打てました。
成長して行くに従って、相手ピッチャーが投げる球は速くなり、変化球を織り交ぜて来るけれど、バッターのほうも速い球や変化球への対応を覚えて行くので打つことができるんです。
しかし、それぞれのレベルで突出した存在、まさに浜松君のような存在が出現すると、その余りのレベル差ゆえに対応できなくなってきます。
きっと、1970年代、高校野球の栃木予選で作新学院の江川卓投手と対戦したバッターは怖かったと思います。見たことも無い速さで飛んでくるボールに恐怖を抱いたことと思います。
そして、ここからが本題。
例えば、私が小学校の時、浜松君の球が打てなかったのは、初めて見るスピード感や伸びであったことも大きな要因ですが、『初めて見る“本格的な左ピッチャー”だった』ことも大きかったように思うんです。
浜松君以外にも、速い球を投げる身体の大きな子は居ました。
4年生の時に6年生ピッチャーの球を打つ機会もありましたが、自慢のようになってしまうんですけど「速いだけだったら結構打てた」んです。
ピッチャーがモーションに入って、足を上げて、ステップ(踏み出し)を始めるくらいのタイミングで自分も始動してタイミングをとる。
ピッチャーによっては小さなステップで「立ったまま投げる」タイプもいますから、その場合は”クッと腰が入る小さな動作”を見てタイミングをとります。
ピッチャーには、それぞれに「タイミングをとるための引き金になる動作」があり、それを見つけることがそのピッチャーを打つための大切なポイントになるんです。
速い球を投げる6年生のピッチャーでも、タイミングのとり易い子の球なら少なくとも当てることは出来る。
だけど、浜松君の球は、いくら早めのタイミングで始動しても、当てることすら難しい。
その理由が何となく感じられるようになったのは、シニアの時でした。
とある試合で左投げのピッチャーの「九丈君」と対戦した際、投球練習をするそのピッチャーを遠目で眺めている時は「球は速くないな。あと、ちょっとだけ曲がるスライダー?みたいな変化球を持っているな。」と感じました。
投球フォーム的にも「大きく踏み出すと同時にカクッと腰が落ちるからタイミングとり易そう」と思いました。
でも、左バッターボックスに入り、そのピッチャーの第一球を見逃した際、「あれ?!?!」と感覚に異変を感じました。
カクッと落ちる腰に合わせて始動してミートしに行っても、タイミングは合ってるんだけどミートしにくいんです。
ストレートも、小さなスライダーみたいな球もダメでした。
かなり自信を持って振っても、上手く打てない。
一番強く手に残ったのは“前に飛ばない”と言う感覚。
タイミングを早めにとると思い切り引っ掛けて一塁ベンチ方向に飛んじゃうし、引き付けて打とうとすると三塁方向へこすったようなファウルになってしまう。 “前に飛ばない”んです。
結局そのピッチャーが打てずにチームは負けたのですが、私にとっては左投げのピッチャーが打てなかったことがすごく強く心に残りました。
「なぜ球も速くないし大きな変化球も無いのに打てなかったんだろう…」と言う想い。
リトルやシニアでは左ピッチャーは比較的少なく、対戦経験も少なかったのですが、左ピッチャーと当たるたびに「浜松君はともかく、なんで九丈君が打てなかったのか」を考えたことを覚えています。
そして、高校に上がる頃に自分なりの結論を出しました。
「左投手は、“球が飛んでくる方向が違う”し、そもそも左ピッチャーが少なくて慣れる時間が無い」
「そんなの当たり前じゃん!」とお思いになるかも知れませんが、それ以外に理由が見つからなかったのが実感でした。
浜松君と九丈君の共通点と言えば、「左ピッチャーであり、スリークォーターから腕が出て来る」ことくらいなのですが、浜松君のように速くない九丈君の球でも、『真っ直ぐ(垂直に)ミート出来ない』んです。
硬式のボールでも真芯でミートすると手に柔らかく心地好い感覚が残ります。
しかし、九丈君の球は、「捕らえた!」と思っても、バットとボールが真っ直ぐに当たってくれないので十分に力が伝わらない、気持ち悪さがあるんです。
そもそも、たくさんの試合をやっても、九丈君のような投げ方、ボールの軌跡を描く左ピッチャーに当たることが少ないんです。
練習が出来ないんです。
それが一番の原因だと思いました。
日本人の左利き率である11〜12%が、プロのピッチャーになると33〜35%に上がるのは、小中学校で10試合のうち1回程度しか確率的に当たらない左ピッチャーが、高校〜大学〜社会人とレベルが上がって行くうちに淘汰されつつも、大多数を占める右ピッチャーは慣れられ易いゆえにもっと多く淘汰されて行くため、結局左ピッチャー率が上がって行く、そう言う仕組みなんだと思います。
剛球を投げる浜松君は当然のように高いレベルのリーグまで生き残るでしょうし、ミートしにくい九丈君もきっとそこそこのレベルまで残ります。
冒頭のほうに申し上げた、
そもそも左ピッチャーって少ないからじゃん?
なんです。