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・うつせみのそびらの割れを吹き抜くる風冬をはらみいるなり
・ しずもれる真夜満月の高くして死体のごとき白き車見ゆ
・ 野の獣みなねむれるか月光に見ゆる草木ひっそりと立つ
・ 留学の娘からの便りに友達はマリサ・イサベラ・マリオンなどあり
・ 日本人男性をサムと呼ぶ規則にて留学の娘に国境のなく
・ ちらちらと雪舞うホームに流れくる新幹線最終告げるアナウンス
・ 寒風のホームに並ぶ白髪の男の背に父のイメージ
・ 昼暗きジャズの店開くクリスマス雪降る街にリズム響きくる
・ 今魚を加熱させいるマイクロ波恐怖を持ちて一歩離るる
・ 使う度に恐れ抱ける電子レンジ恐怖の素をテレビは告げいる
・ 弱さなど持つを許さぬ現世かマインドコントロール自らに科す
・ 弱き心癒さんとして飲む薬医師を信じぬ盲目となりて
・ 吾は泣く唐突に泣く未来見えぬ渇ける夜の瞳の痛みに
・ この瞬間エンデバーなる船がゆく未来という名の星を作りに
・ 形なき空気を抱き暗闇に座れるしばし悲という疑問
・ 君は他人を受容できるかとりあえず許せるものか無礼な隣を
・ 一五0余の原始太陽捉えたる望遠鏡に地球は写らず
・ 一五0余の太陽に一五0余の地球あるらん宇宙に
・ 愛という形を走るインパルス悲しみに似て脳駆けゆく
・ 指先に口辺に届かずもどかしき愛という名のパルスの出力
・ 除夜の鐘鳴り終わりたる真夜に流る煮物のかおりいずくの家か
・ あらたまの年の始めの光柔く玻璃戸を抜きてとどくこの朝
・ 怒れるも嘆くもしばし留め置きて正月のしじま保ちゆかなん
・ 正月の静寂破り幼児の「だっこだっこ」と泣ける窓外
・ ぽっかりと穴を開きたるアンニュイの正月という日暮れゆかんとす
・ とつぜんに死にたいと思ったから予防の薬飲みました日暮れに
・ 音楽もいらない程に眠らねば眠らねば項を這える死の触手あり
・ 雲厚く誰にも逢いたくない真昼夜具を被りてベルを無視せり
・ 乾きいて歌にならない声帯を悲しみつつもフォーレつまびく
・ 薬が効いてきましたもう眠ります眠れます起こさないで下さい
・ いずくにか花咲きおらん早春のいまだ冷たき風を聞きいる
・ 早春の陽をあびショパン踊りいる幻飛べば裳裾なびきて
・ ムーブするショパンの中にうつろいて春のモーヴをまといていたり
レクイエムは第二歌集
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