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―――― その昔、京の都には【妖怪】と呼ばれるものたちがうごめいていた。妖怪たちは天から舞い降りてきたとも、人間界とは異なる次元、【異界】から来たとも言われる。しかし、中には人間に使われなくなり、捨てられた物に魂が宿り、生まれる妖怪もいた。 妖怪たちは、町の人間たちをあの手この手で驚かせていた。突然不気味な音を出し驚かせるもの、人間が歩いているときに邪魔をするもの、家の食べ物を食い散らかすもの、目の前に突如として現れ驚かすもの……その種類は数え切れない。 なぜ妖怪たちは人間を驚かすのだろうか? ただ人間が驚く姿が滑稽で、おもしろがってやっているだけだと言われるが、実は食事をするためだと言われることがある。彼らは【気】と呼ばれるエネルギーを食べて生きている。その【気】は、人間が驚いたときに多く出されるという。妖怪たちは人間たちを驚かせ、【気】を出させるのだ。 そんな妖怪たちであったが、月日が経つにつれ、人間に危害を加えるものが現れ始めた。 人間たちの村を襲い、金品や食料を強奪。さらには人間をさらっていき、人間を殺めるものまで現れた。人々は妖怪たちを恐れ、都には妖怪たちが溢れかえっていった。昼は人間が、夕暮れから夜に架けては妖怪たちが都を支配していった。 そんな中、妖怪と対等に戦うことができる者たちが現れた。 【陰陽師(おんみょうじ)】と呼ばれる人たちを知っているであろうか。 彼らには、常人の理解を超えた特別な力があった。災いを遙か前に予知し、霊や妖怪といった人成らざる存在を見、退治することが出来た。 そんな陰陽師の中でも最強と謳われたのが、【安倍晴明(あべのせいめい)】その人である。晴明は、霊能力や予知能力が他の者よりも格段に優れ、死者をよみがえらせることも出来たという。晴明は、都に溢れかえっていた妖怪たちを全て葬り去り、人々に【神に最も近い存在】として崇められた。 しかし、晴明を境に陰陽師の力は衰退の一途をたどり、その存在は消え失せていった……。 * もし、あなたの目の前に突然しゃべるカラスが現れて「妖怪退治してくれ」なんて言ったら、あなたはどうしますか? 私はそういうオカルトな存在は全面的にダメなタチなので、布団にくるまってあれこれ考えます。否、考えています。もうかれこれ3時間……。 (なんであたしの所にくるんだよ? 親戚にだって土御門の名字がいるし、親だって同じじゃん) (大体、お化けは大大大大ッッッッッッキライだからぜっっっっっったいやんないもん!!) (映画とかだって怖いやつは絶対見れないのに……ましてや本物だなんて!) ………… コン、コン。 (それにあの白夜ってやつもお化けの類(たぐい)だし……やだ!あたしったらお化けと話しちゃった!) ………… ゴン、ゴン。 (だめだだめだだめだ!! 考えれば考えるほど体が震える!! あぁ夜にまた来るって言ってたからまた来る気だ!) ………… ガン!ガン!! (どうやって追い出そうか……いや、居留守をつかって帰らせちゃおう……そうしよ……) 「ぁあもう!!!!!何度言ったらわかんねん!!はよ開けんかぁぁぁぁぁあああああいい!!!!!!!!」 「ぁひゃっ!?」 聞き覚えのある声に驚き、くるまっていた布団から部屋を見渡すと、あたりはもうすっかり暗くなっていた。カーテンを閉めているものの、部屋はぼんやりと明るい。月が出ているらしい。そして、月明かりでカーテンに映し出されたあの大きな羽と楕円に突き出たくちばし、そしてあるはずのない【3本目の足】は……………… 「びゃ、白夜!?」 「せや!!!!中にいるのはわかっとんねん!!はよ開けんかいな!!」 大きな羽をせわしく上下させ、窓に向かって大声で怒鳴り散らしている。そんなに大声でしゃべってたら近所の人に気づかれちゃうって! でも……… 「ヤダッ!!絶対に開けないもん!!! 開けたらあたしに妖怪退治をさせる気なんでしょ!?そんなのぜっっっったいにイヤだかんねっ!!」 「知るかっ!!!わてはただ晴明はんの命に従って、何千年と時を越えて来たまでやっ!!お前に拒否権なんぞあらへんねん!!!!」 「うるさいうるさいうるさ――――い!!!!!!!!!!晴明はんだかチャーハンだか知らないけど、とにかく中には入れないもんねっ!!!!!」 「にゃにおぅ!?お前がその気ならこっちにも考えがあるでぇ!!ちょっと待っとれや!!」 黒いシルエットはそう言うや否や、羽の上下運動を止めて屋根に降り立ったようだ。何をしようとしているのか気にはなったが、カーテン及び窓はかたくなに閉めたままにした。 …………音がしなくなった。バサバサという羽の音も、あのバカラスの怒鳴り声も、気配さえも消え失せた。晴香は窓に近寄った。あきらめて帰ったのだろうか?…………いや、そんなはずはない。まだ知り合った(認めたくはないが)ばかりだが、あいつはそんな性格ではない気がする。執拗に追いかけてくるタイプだ。でもカーテンは開けてはダメな気がする。ましてや窓は絶対にだ。…………まさか体当たりして壊す気とかじゃぁ……… ボン!!!!!!!!!!! 「はぅぁあっ!?」 突然、背後で大きな爆発音がしたかと思うと、部屋の壁の一部が、丸く、銀色の液状に変化していた。液状とは言うものの下にこぼれ落ちたりはせず、ただうねうねとしているだけだ。でっかい銀色のスライムが張り付いている感じ。 「なっ、何……、これ………?」 突然の爆発音による驚きと、恐怖とであたしは動けなかった。ただ、その突如として出現した銀色のうねうねを見つめ続けた。なんか今日は動けなくなる日らしい(泣)もうヤダっ!!! 不意に、その銀色スライムが盛り上がったように見えたのは気のせいだろうか?否、盛り上がってきた。ゆっくりと、どろどろした液体が突き出てくる。そしてべっちゃっと、床に人の頭くらいの銀色の液体がこぼれ落ちた。そのこぼれ落ちた液体は、だんだんと何かの形になっていくようだ。ぐにゃぐにゃとうごめいて、鳥のような形になったかと思えば、銀色が薄れて黒くなっていった。そして目の前に姿を現したのは…………… 「フッフッフ………白夜さまをなめんといてもらいたいもんやなぁ……なぁ晴香はん?」 黄色っぽい丸みを帯びたくちばし、闇夜を思わせる真っ黒な体、流暢で耳に残る語り口、そして異様な3本の足。晴香曰く、バカラス見参。悪夢再来。 「なっ、なっ、」 「ぁあ〜〜〜、はいはい。晴香はんの言いたいことはよ〜わかりまっせ?『なんであんたがあんなところから来はったんや?』て事やねんな?……あれは【門(もん)】っちゅ〜て、異界と人間界をつなぐ入り口なんや。わては一度異界へ行って門をこの部屋に繋いで来たっちゅ〜わけですわ。月が出てるから、わての【魔力】も使えるようになったからなぁ。」 「う、ぁの……えと、」 「それに『なんでまたあたしの所に来たの?』でっしゃろ?それは後々話すことにして、さっさと行きましょか。時間もないことですしなぁ」 白夜は、そう言うと両方の羽を胸の前で重ね合わせた。すると、紫色の丸い光が、合わせた羽の間から出てきて輝きだした。あたしはまだ何かを言おうと口を開きかけたが、あたしの意識がはっきりとあったのはそこまでだった。 「まったく……こいつは自分の力にまったく気づいてないんやなぁ。………まぁ力使う機会なんてあらへんし、ムリもないけどなぁ」
「……さて、【空間透過移動】は魔力の消費が激しいから使いたくあらへんのやけど、人間を異界に連れて行くわけにもいかへんしな。しゃーないなぁ………」 むんっ、と白夜は全身に力を込めた。すると、意識を失っている晴香が白夜の念力で宙に浮かんだ。白夜は何か呪文のようなものを唱えるや否や、晴香と白夜は、音もなく一瞬で消えてしまった。 |

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