クラシック歳時記in松本 (あるいはモーツァルトとともに1年を)

今春発売の内田光子/テイトのCDでようやく好きになれました・・・モーツァルト ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」

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4月15日(金)晴れ

 寒の戻りの雨も上がり、昨日から暖かい良い陽気になった。松本城の桜も満開だ。火曜日くらいまで晴天が続くというので、この週末はお花見に最高のsituationだ。

 「花に嵐のたとえ」もあるように、桜というのは1年間せっかく待って、やっと咲いたかと思うと、すぐに雨や嵐がやって来て散ってしまう。

 そこが桜の良さという人もいるが、私などは何か、こちらの気持ちを知っているくせにわざとじらして口惜しい思いをさせる、冷たい異性を連想してしまい、どうも手放しで好きになれない花なのである。が、今年は十二分にその美しさを長く楽しめそうで、心弾む。

 さて日々春が深まるこの季節、しかし信州では朝夕はまだまだ寒い。昨日の朝は氷点下!昼と夜の寒暖差に体調を崩しやすい時期でもある。そんなことで夜はまだまだ寒いのだが、そんな春の夜に聴いてみたい曲の一つがシューベルトの「ロザムンデ」カルテットである。
 
 シューベルトは春(の宵)に似合う作曲家と何度も紹介しているが、彼の室内楽、とりわけ弦楽四重奏曲は何やら心騒ぐ春の夜にぴったりだ。

 第8番変ロ長調D.112, 第9番ト短調D.173, 第10番変ホ長調D.87, 第15番ト長調D.887などこの季節におすすめの曲が目白押しだ。それに面白いもので、シューベルト若書きの8番が3月初め頃の早春の夜のイメージならば、最晩年の15番は4月終わり頃の晩春の成熟した夜の匂いを感じさせる。

 「ロザムンデ」に戻ろう。この曲は第2楽章のテーマに劇音楽「ロザムンデ」の間奏曲のメロディが使われていることに曲名の由来がある。その優しく、懐かしい癒しの旋律が魅力的なことは勿論だが、この主題が形を変え、繰り返される変奏の形をとるのが、シューベルトの音楽の魅力だと私は思う。その話は…またいずれ。

 第1楽章冒頭の哀切の旋律、第3楽章の愛らしさと怪奇さが同居したような個性的なメヌエット。第4楽章はロンド形式。3、4楽章にはかつてシューベルトが滞在したハンガリーの舞曲の影響があると言われている。

 ハンガリーといえばシューベルトが21の時、エステルハージー伯爵の二人の娘の家庭教師として赴いた土地。

 その娘との悲恋が戦前の映画「未完成交響楽」のテーマ(「わが恋が成就せぬが如く、この交響曲も永遠に終わらじ」ということで、有名な未完成シンフォニーは完成しなかったというストーリーになっているが、本当のところは…?)だったが、この曲にはそんな異国の女性への憧憬と執着がモチーフとしてあるのだろうか。
 
 今回聴いて改めて思ったことだが、シューベルトの音楽は何と言うか、「漆黒の闇の中に咲く可憐な白い花」。

 かつて井上やすしの戯曲に「闇に咲く花」というのがあったが、まさにそんな感じ。「絶望の中のかすかな希望、あるいは憧れ」。「泥沼の中に咲く蓮の花」などというと、何やら仏教的、東洋的なイメージになってしまうが、シューベルトの音楽にはそんな死の向こうにある彼岸を連想させるものがある。

 我々日本人がシューベルトを好む所以の一つはそんなところにもあるのかもしれない。

 春のもやにかすむ月明かりが差し込む部屋で、そっとグラスを傾けながら静かに聴きたい一曲である。

 演奏は第1バイオリン、ギュンター・ピヒラーのとびきりの美音が魅力的なウィーン・アルバン・ベルク四重奏団。1974年録音のレコードをおすすめします。 (LP: TELEFUNKEN K17C-8323)

 CDではアルバン・ベルクの新録音が80年代にありますので、そちらがいいでしょうか。(1984年12月)
(CD:EMI TOCE-14182)

 

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ごめんください。
シューベルトは「未完成」のほかの交響曲や「ます」をきくとうれしい気持ちになりますが、後期の弦楽四重奏曲やピアノソナタとか、「冬の旅」などきくと暗い気持ちになります。
暗い曲も我慢してきいていると何かがみえてくるように思えていました。それがご指摘の「漆黒の闇の中に咲く可憐な白い花」とは、よく言い表すことができるものだなと感心しました。
これからは弦楽四重奏曲もよくききたいと思っています。

2008/11/30(日) 午後 8:00 [ - ]

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kazuさん、コメントありがとうございます。この弦楽四重奏曲にもやっと初めてのコメントで嬉しいです。交響曲などオーケストラ曲に比べ、室内楽は聴く人が少ないのか、どれもコメントが激減します。僕は学生時代はともかく社会人になってからは、室内楽の方がよく聴きます。それだけエネルギーがなくなってきたのかも知れませんが、静かだけど室内楽の方が聴いた後の余韻が残るような気がするのです。とりわけ弦楽四重奏曲が一番好きかな。モーツァルトの「ハイドンセット」が断然素晴らしく、そのモーツァルトのSQの素晴らしさを唯一継承しているのがシューベルトかなって思うのです。シューベルトのSQという宝の山に、どうぞこれから分け入って下さい!

2008/12/1(月) 午後 10:58 gustav


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