クラシック歳時記in松本 (あるいはモーツァルトとともに1年を)

今春発売の内田光子/テイトのCDでようやく好きになれました・・・モーツァルト ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」

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4月29日(金)晴れ

 春の夜は何ともやるせなく、心落ち着かず、気もそぞろ。何やら人恋しく、自分の感情がコントロールできないような不安に駆られる…。

 そんなおぼろ月夜の春の夜に聴いてみたいのが、マーラーの交響曲「大地の歌」。

 この曲は実質マーラー9番目の交響曲だったのだが、非常に繊細な神経の持ち主であった彼は、ベートーベン以降の大作曲家がいずれも(シューベルト、ドボルザーク、ブルックナー他)

 9番までしか完成しなかったことにこだわり、自分がこの呪縛に飲み込まれることを怖れ、第9番と付けず、交響曲「大地の歌」とした。

 そして次の曲に第9番を付けて(本当は10番!)、自分はジンクスを越えたと安堵したという。

 ところが次の交響曲第10番の作曲にとりかかっている最中に、心臓マヒで死んでしまい作品は未完、名づけられたシンフォニーは結局9番まで、という自らジンクスにはまってしまったというエピソードがある。

 さてこの交響曲は1907年、ベートゲによってドイツ語訳された中国の漢詩を読んだマーラーが、そこにある東洋思想、とりわけ人生への諦観に共感し、その中の李白、銭起、王維、孟浩然の詩にオーケストレーションした。

 第1楽章、李白の「現世の悲しみを歌う酒宴の歌」。

 
 「天は永遠に青みわたり、大地はゆるぎなく立って、春が来れば花は咲く。

  だけど人間はいったいどれだけ生きられるというのだ。

  許されているのは百年にも満たぬ歳月、この世のはかないなぐさみに興じることだけ。」

 
 若い時から死の観念に取り付かれていたマーラーは

 「Dunkel ist das Leben,ist der Tod. 生は暗く、死もまた暗い」とリフレインする。

 冒頭のホルンの咆哮、そして後半のクライマックス、バリトンが歌う


 「(春の)月夜に照らされた崖の上にうずくまる一匹の猿の哀しい泣き声。」


 漢詩の世界では猿の鳴き声というのは、悠久の自然に対する人間存在のはかなさを象徴しているという。

 今まさに春往かんとしているこの日に、李白の詩とマーラーの音楽が作り出した融合の世界にしばし浸ってみたい。

 演奏は1964年録音のオットー・クレンペラー指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団。

 巨匠クレンペラーの悠揚迫らざる指揮と、この録音の直後に不慮の事故で36歳の若さで早世したテノールのフリッツ・ブンダーリッヒの絶唱で知られる名盤です。(LP: EMI EAC-81017)(CD: EMI TOCE59020)

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