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5月3日(火)快晴
今朝の松本の最低気温は7℃。そのせいか、雲一つない天気にかかわらず、日中もそんなに暑くならず、気持ちの良い一日だった。
今はあまり見かけなくなったが、この季節、鯉のぼりが揚がっているのを見るのはうれしいものだ。
5月のさわやかな風を口いっぱいに受けて翻る鯉のぼりを見ていると、聴きたくなるのが、ブラームスのバイオリン・ソナタ第1番だ。
ブラームスの室内楽というと、いぶし銀のような渋い曲が多く、一般には秋、それも晩秋のイメージがあるが、この曲は別格だ。
以前紹介した交響曲第2番が1877年の夏、風光明媚な保養地ペルチャッハで作られたように、このソナタも翌1878年の夏にペルチャッハで作曲された。
またそのひと月前のイタリア旅行も影響して、ブラームスの作品の中でもきわだった明るさ、快活さがあるように思う。
第1楽章の主題(CDで1分30秒前後から)をバイオリンが流麗に弾くのを聴くと、遠くにアルプスの残雪、足元に水が入ったばかりの水田という情景の中、さわやかに風になびく鯉のぼりの姿が目に浮かんでしまう。
かつてこの曲をバイオリニストの清水高師の演奏で聴いたことがあるが、演奏前に彼がこんなことを言っていた。
「僕はこの曲を弾いていると、ロンドンにいた時のことを思い出します。ロンドンの天気は晴れていると思うと、急に雨が降ってきたり、厚い雲に覆われているかと思うと、陽が差してきたりと、とても変わりやすいのです…。」
ブラームスが生まれたのは北ドイツのハンブルク。おそらくロンドンと同じような変わりやすい天気の街だったのだろう。
確かにこの曲は明るく快活なばかりではない。太陽が突然雲に隠れたり、また顔を出したりするように、長調、短調が交錯する。
特に第3楽章は「雨の歌」と呼ばれるブラームス自身の歌曲の旋律が使われ、雨のときの気分を歌っているといわれる。
しかし全体はあくまでおだやかで、柔らかく落ち着いた気分が支配する、聴いていて心やすらぐ曲です。
演奏は共にポーランド出身のヘンリク・シェリングのバイオリンと、アルトゥール・ルビンシュタインのピアノのレコードを第一におすすめします。(1960年録音)(LP: RCA RX-2378)(CD:RCA BVCC37254 )
感情に流されないカチッとした楷書風の演奏でありながら、ブラームスの優しくも複雑な情念をきちんと伝える、何よりもシェリングのバイオリン、ルビンシュタインのピアノの音の美しさに心動かされる一枚です。
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素晴らしい表現、発見!です。太陽が突然雲に覆われる、顔を出す。これで納得。ありがとうございます。それと「この曲誕生の地」の事。シェリングの楷書風も私は端正で好きです。
2006/7/10(月) 午後 10:12 [ bar*i*ri_*933 ]
barbieriさん、1年以上も前の記事にコメントいただいて、とても嬉しいです。昨年の4月、5月あたりはまだ見る人も少なく、コメントもない記事もたくさんあります。またお暇な時に覗いていただければ嬉しいです。
2006/7/11(火) 午後 10:44
読ませていただきました。
楷書風の演奏。ニクイ表現ですね。
素晴らしい観察眼です。
私はCDを持っているのですが、レコードで聴きたくなりました。
2010/5/14(金) 午前 1:24 [ JH ]
読んでいただき、ありがとうございました。
レコード良いですよ。
私はシェリングのバイオリンの音を何よりも好む者ですが、
しかしこの録音は1960年と古く、
後の1970年代中葉のフィリップスでの黄金時代に比べると
さすがに見劣りというか(聴き劣りですね)音が荒い印象なのは残念です。
2010/5/14(金) 午後 11:30
前言撤回(^_^;)
久しぶりにLPレコード聴いたら、
CDで感じてた音の荒さというものがなく、
シェリングの音がしなやかで流麗だったのに正直驚きました。
やっぱりレコードはいいですね。
2010/5/15(土) 午前 9:40
ブラームスの「雨」好きでした。そう、そんなに変わりやすい天候の下うまれたのですね。
この曲はサガン原作、イングリット・バーグマン主役の「ブラームスはお好き」で効果的に使われていて特に印象深いです。
2011/10/20(木) 午後 9:24
kiyoiさん、コメントありがとうございました。
信州は例年より少し早く紅葉の季節を迎えました。
勤務先の銀杏は黄葉の盛りです。
これからはブラームスの季節ですね。
2011/10/23(日) 午後 2:54