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5月5日(木)晴れ
立夏。暦の上では夏。信州では街路樹のハナミズキ、ライラックが満開。里山の新緑の黄緑色が柔らかそうで心地良い。
田んぼには次々と水が入って、遠くの山には残雪、と本当に良い季節である。
「不快指数」という言葉が梅雨や酷暑の頃に使われるが、反対に「快適指数」というのはないのだろうか。もしあったら、今頃は間違いなく1年で最も快適指数の高い時季だろう。
こんな季節に合う曲を選ぶということは、クラシック音楽の中で最も爽やかな曲を選ぶということに他ならないだろう。あなただったら、どの曲を選びますか?
私だったら、ちょっと迷った末、このモーツァルトのバイオリン・コンチェルトの3番を選びます。
モーツァルトの音楽というのは、ある意味季節にとらわれることなく、それこそ1年中いつ聴いても違和感がない。
春のイメージのシューベルトやシューマン、秋のイメージのブラームスといったロマン派とそこが決定的に違うのだけれど、しいてどの季節に似合うかと問われたら、初夏か初秋。とにかくさわやかな季節にぴったり。
それはやはり(映画「アマデウス」はその辺のところを強調していたように思うのだけれど)モーツァルトの作品が少しも作曲家の生みの苦しみを感じさせない、少しの淀みもなく流れる音楽だからだろう。
そのモーツァルト作品から何を選ぶか、となると、最終的にはその人の主観ということになってしまうのだけれど…。
信州の初夏ということでいうと、そのさわやかさというのは、どこかひんやりとした感じ。これはもう皮膚感覚で言うしかないのだけれど、夕暮れの、肌寒さに近い冷涼感!
もともと「さわやか」という言葉は涼しさを伴う言葉だ、とお叱りをうけるかもしれないが、東京などに比べると、信州の初夏はもうちょっと「ひんやりとした冷涼感」が強い感じ…。
そんな感覚を、聴いている者に抱かせる音楽という点では、モーツァルトの曲の中でもこの曲が一押し と私は思うのだ。
アルテュール・グリュミオーのバイオリンの艶やかで、たっぷりとした中音域の充実と流麗さ。コリン・デイヴィス指揮ロンドン響のオーケストラの、リズミカルに音楽が前に前に進んで行く推進力。
このレコードの演奏を聴くたびに、ひんやりとした初夏の爽やかさを肌で感じる音楽体験をするのは、毎年のこととはいえ、私の大いなる楽しみ、喜びの一つなのです。 (LP: PHILIPS 15PC-5016)(CD: PHILIPS PHCP21014)
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