クラシック歳時記in松本 (あるいはモーツァルトとともに1年を)

今春発売の内田光子/テイトのCDでようやく好きになれました・・・モーツァルト ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」

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1月29日(日)快晴(朝7時の気温ー8℃)

 今朝早く、家人を駅まで送った帰り、西の雪を頂く北アルプスの峰々がだんだんとピンク色に染まっていくのに気がついた。あわてて近くの量販店のビルの屋上駐車場に車を停め、しばらく西の空を眺めていた。

 そうなのだ。この時季、天気の良い朝早く太陽が昇る寸前の一瞬、西の雪の山々が朝焼け(モルゲン・ロート)に染まってピンク色に輝くことがある。

 しかし実際のところ、普段は通勤前の忙しい時間帯でなかなか見ることができない。今朝は6時半頃から小1時間、刻々と変化する山の色合いにしばし見とれていた。

 午前7時前後の数分間が、常念(岳)をはじめとする大天井(おてんしょう)、燕(つばくろ)、餓鬼(がき)、蓮華(れんげ)、爺(じい)ヶ岳の雪を頂く北アルプスの山々が最も紅く、ピンク色に変容した神々しい瞬間だった。

 その後徐々に色はうすれ、東の美ヶ原の少し南の位置から太陽が昇った7時20分頃には、あのピンク色はうそのように消え何ごともなかったかのように、ただ陽に輝く白い山容に戻っていた。

 そんなこの時季の、快晴の朝の一瞬のドラマを震えながら見ていた私の中で、ワーグナーの歌劇「ローエングリン」の第1幕への前奏曲が鳴っていた。

 ヴァイオリンだけで小さく、しかしはっきりと宝石の輝きのような旋律が奏でられる。その旋律の震えは歓びに、幸福に、憧れに満ちた陶酔を表わす。

 それは次第に木管、金管楽器へと受けつがれ、やがて管楽器のフォルテシモが奏される時、聖杯グラールを護る騎士ローエングリンが現れる…。

 歌劇「ローエングリン」はワーグナーの比較的若い時の作品で、1848年ワーグナー35歳の年に完成した彼の7番目の歌劇である。

 彼はこの作品に自信を持っていたらしく、リストへの手紙の中で「僕は今回、音楽を台本とか劇の筋に対して非常に明瞭かつ安定した関係におくことに努めたので、自分の仕事については完全な確信が持てる」と述べている。

 事実彼が「タンホイザー」など古典的な歌劇の手法で書いた作品は、この自信作「ローエングリン」が最後で、これ以降の作品は、音楽と文学と造形芸術とを1つに融合させた総合芸術ともいうべき「楽劇」という名称で呼ばれるようになる。

 あらすじは「タンホイザー」と同じく中世ドイツの伝説に基づいたもので、10世紀の北ドイツ、ブラバントを舞台にくりひろげられる。

 この国の領主の子ゴットフリートが魔法使いのオルトルートにより白鳥の姿に変えられ、さらに姉エルザが無実の罪に落としいれられるのを、白鳥のひく小舟に乗って現れた騎士ローエングリンによって救われる。

 しかしローエングリンと結婚したエルザが、オルトルートにそそのかされ夫の名と素性を問いただしたため、自分は聖杯を護る騎士ローエングリンであることを告げ、去る。

 この第3幕の結婚式の場のために書かれたのが有名な「ワーグナーの婚礼の合唱」で、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の「結婚行進曲」と並んで結婚式によく使われる曲であり、そのメロディを聞けば「あぁ、あれか」という方も多いと思う。

 演奏は新しいものはたくさんあると思うのだが、やはりブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団の昔の(1959年)演奏を聴いてしまう。

 耽美的にたっぷりと旋律を歌わせ、しかし曲の持つ自然な流れをこわすことのない、ワルターの慈愛に満ちたワーグナーである。(LP:SONY SONC10213-4)

 ところでこのワーグナーの「ローエングリン」前奏曲を映画「独裁者」に使ったのがチャップリンだ。

 当時飛ぶ鳥を落とす勢いの独裁者ヒトラーを敢然と風刺したチャップリン演ずるところの独裁者ヒンケルが「あなたこそ世界の覇者になるのです」と部下にそそのかされ、ひとり執務室で風船でできた地球儀と戯れる有名なシーンにこの曲を使った。

 ワーグナーを愛し、ゲルマン民族の優秀性を信じて疑わなかったヒトラーを皮肉り、世界制覇の野望にひとり恍惚に震える独裁者の心の内まで見透かしたようなチャップリンの選曲の妙に、改めてこの不世出の喜劇王の偉大さに、脱帽せずにはいられない。

 


 
 

 

閉じる コメント(12)

はじめまして。mariaさんのところから来ました。私もワーグナーと聞くとチャップリンの「独裁者」のシーンを思い出します。

2006/1/30(月) 午前 1:02 [ 森比古 ]

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こんばんは、森比古さん。フラメンコをはじめ多彩な趣味ですね。チャップリンの偉大さは、この場面のすぐ後で床屋がお客の髭剃る時に、ブラームスの有名なハンガリー舞曲第5番を使うでしょ。あれにも唸らされますね。他にクラシック音楽を使った天才映画監督というと、すぐにキューブリックを思い出しますが、ほかにもご存知ですか?

2006/1/30(月) 午前 2:53 gustav

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モルゲン、ロートの描写素敵でした。「ローエングリン」のレコードあると思うので早速聞いてみよう。

2006/1/30(月) 午前 3:43 houmei

ワーグナー・・白鳥の王子様ですね〜〜。関係ないですが、宝塚の舞台でハクスブルグ家が関係するお芝居に、必ず、ワーグナーの曲が使われていますね〜〜(^^;)

2006/1/30(月) 午後 2:27 cla*aa*g*laj*

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houmeiさん、お褒めの言葉ありがたいのですが、自分ではあまり上手く表現できなかった気がしてます。これ初めて見る人はホント感動ものだと思うのですよね。一瞬のできごとですから。聴いて想像していただければ嬉しいです。

2006/1/30(月) 午後 11:24 gustav

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クララさん、ハプスブルク家のお芝居というと「エリザベート」かな?確かにワーグナーを愛した狂王ルードヴィヒ2世は彼女の親しい従兄弟でしたから、その影響で、あるいはその関係でワーグナーを使っているのかなぁ。クララさんもエリザベート・ファン?

2006/1/30(月) 午後 11:39 gustav

エリザベート好きなんですが・・使われているのは(ワーグナー)”うたかたの恋”(エリザベートの息子、ルドルフのお話です)のほうですね。あと、トリスタンとイゾルデ(そのままですね;;)なんかにも使われてました・・

2006/2/1(水) 午前 8:55 cla*aa*g*laj*

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宝塚で「トリスタンとイゾルデ」やったんですか。知らなかったなぁ。そりゃぁまたオペラと違って見てみたいですね。

2006/2/2(木) 午前 6:27 gustav

バウ公演(小劇場)のほうでやったんですよ(^^)。結構面白かったですよ☆

2006/2/2(木) 午前 10:38 cla*aa*g*laj*

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ワルターのワーグナーですか。興味をひかれますね。相変わらずブログの調子がわるく、さきほどコメント(クライバーの記事)に気づきました。お返事がおそくなってしまい申し訳ありません。

2006/2/5(日) 午後 3:05 kal*s*974

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数年前の夏ですが、立山でモルゲンロートを見、その美しさに見とれたのを思い出します。わたしが撮影したピンク色の空とともに、父が撮影した、わたしがボーッと上方を眺めているアホづらの写真も残っています。ワルターのヴァ−グナーですか。今まで興味はありませんでしたが、聞いてみたくなってきました。

2006/2/7(火) 午後 3:26 zar*th*s*rafu*i

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ふじやんも山でのいろいろな良い思い出がたくさんありますね。夏のモルゲンロートは爽やかだったことでしょう。冬山のモルゲンロートは純白の雪肌が染まるので、紅ではなくてピンクなんですよね。写真でお見せできなくてごめんなさい。

2006/2/9(木) 午後 8:18 gustav


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