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<今日のモーツァルト>
ディヴェルティメント 第2番 ニ長調 K.131 (1772年 16歳)
ディヴェルティメント 第7番 ニ長調 K.205 (1773年 17歳)
連日気持ちの良い天気が続く。松本の街はGWに合わせたかのようにライラック、ハナミズキ、藤の花
といった街路樹が満開で美しい。
NHK-BSの「毎日モーツァルト」も、今週は足踏みをしている(「今からでも間に合う毎日モーツァル
ト」という総集編で、これまでの足跡を5日間で辿っている。ウィーンで大司教コロレドとついに決裂
し、故郷ザルツブルクを捨てウィーンに定住する決意をする、彼の生涯における重大な転機の前で足踏み
しているのは、その日1781年5月9日に番組の進行を合わせようとしているのでは、と思うのは僕の深読み
でしょうか?)ので、僕も少し落穂拾い的に、これまで番組や僕のブログで採り上げられなかったモーツ
ァルト前半生の曲の中で、これはというものを紹介したい。
それはモーツァルト10代の頃から故郷ザルツブルクで様々な機会に作曲を依頼された「機会音楽」「娯
楽音楽」であるセレナードとディヴェルティメント。
セレナードでは有名な「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」までの13曲のうち、ザルツブルク時代
のものとはっきり言えるのは、先日紹介した第9番K.320「ポストホルン」まで。ディヴェルティメント
の方は番号で呼ばれる最後の第17番K.334まですべてザルツブルク時代のもの。
セレナードとディヴェルティメントの区別は当時の通念からして、(初期シンフォニーも含めて)判然
とは区別しにくいものだが、一応ディヴェルティメントは「喜遊曲」と訳され、小アンサンブルのために
室内で演奏する目的で書かれた作品。これに対しセレナードは「小夜曲」という邦訳のように小アンサン
ブルのため、夜、戸外で演奏するために書かれた曲。
貴族の食卓のBGMだったり、街の名士の娘の結婚式を盛り上げる野外音楽だったり、文字通りの「機
会音楽」「快適音楽」。
しかしこれが「世界一」の快適音楽なのだ。
モーツァルト10代の頃のこれら作品は、前々回触れた傷心の旅の後(1779年)に作られた傑作群ほどの深
みはないが、その分スーッと空に一筆書きしたような爽やかさと屈託のなさ、純真さが何といっても魅力
だ。
ディヴェルティメント第2番ニ長調K.131 全6楽章は、1772年モーツァルト16歳の時の作品だが、一言
でいって「爽やかな」曲だ。(ネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団)(1986年録音)(LP:20
PC-763)
去年の「クラシック音楽歳時記」の5/5に「クラシック音楽で最も爽やかな曲」として同じモーツァル
トのヴァイオリン協奏曲第3番を挙げた(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/2317769.html )時、実
はもう1曲どちらをあげようか最後まで迷った曲が、この曲だった。
鳩時計を模したようなユニークな序奏の後、フルートがめまぐるしく活躍するアレグロの第1楽章のあ
との、第2楽章アンダンテ 緩徐楽章。伸びやかでしなやかな弦楽合奏がさわやかであり、また音楽に独
特の冷ややかさを感じる。まるで残雪の常念を仰ぎ見る、初夏の信州松本の夕暮れの大気の爽やかさと、
独特の冷気を描写したかのようだ。番組の映像で見るザルツブルクも遥かアルプスの高山の麓の盆地に街
を成す。少年モーツァルトもかの地で、山都の夕暮れの冷気を身をもって感じながらこの曲を作ったのだ
ろうか。
このマリナーのレコードの解説(岩井宏之氏)には、アルフレッド・アインシュタインが「この曲をデ
ィヴェルティメントとしたのは間違いで、この曲はセレナードと呼ばれるべきだ」と主張したとあるが、
この第2楽章から受ける、山国の人間でなければわからない皮膚感覚としての冷涼感を感ずる者として、
野外演奏のために作られたとするこの説に大いに賛成だ。
第3楽章メヌエット、第4楽章アレグレット…と他の楽章はフルート、ファゴット、ホルン、オーボエと
管楽器(特に木管)が活躍する、「管楽器協奏曲」とでも名づけたいようなワクワクするような曲想で楽
しい。4楽章の終わりは再び鳩時計の音を模したようなユーモラスな終わり方だ。このように全篇明るく
爽やかで、愉悦に満ちた一曲である。
お次のディヴェルティメント第7番ニ長調K.205 は1773年モーツァルト17歳の時の作品。
コレギウム・アウレウム合奏団(LP:ULS-3134H)(CD:BVCD-38048〜9)
この曲もセレナードと呼んだ方が良いような曲想。第1楽章のラルゴの緩やかな序奏から主部アレグロ
に移っていくその音楽の流れ方が何ともお洒落で洒脱だ。
K番号で1番違いのセレナード第5番ニ長調K.204(モーツァルトの中で僕の最も愛する曲のひとつ。
8/27のブログで紹介。http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/10031520.html )はまるで天上に遊ぶかの
ような心持ちにさせてくれる管楽器のひなびた音色が魅力的だが、このDivertiment7番K.205はコンサ
ートマスター、フランツヨーゼフ・マイヤーをはじめとするコレギウム・アウレウムの弦楽器奏者たちが
奏でる柔らかな羊腸弦の音色が心地良い、「癒し」の音楽である。
結婚式の食事時のBGMに使わせていただいた。懐かしい!!
BSの「毎日モーツァルト」来週はいよいよ大司教コロレドとの決裂、故郷ザルツブルク、そして父レオ
ポルトとの決別、ウィーン時代の始まり。モーツァルトの人生も後半生に入るといってよいだろう。
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快適音楽、とは的を射たり、という言葉ですね。モーツァルトのセレナードをバックに、美味しいお食事とワイン、あー、贅沢です。と、妄想に入ってしまいました(>_<)。
2006/5/6(土) 午後 4:37 [ nakkun ]
我が家も夕飯時には、どれか1つモーツァルトのピアノ協奏曲をかけてBGMにしています。ささやかな食事ですが、気分だけはちょっぴり贅沢な気分になります。
2006/5/6(土) 午後 4:44
読ませて頂きました。本当に参考になることばかりです。モーツアルトをバックにお食事!!その気持ちが素晴らしい!!
2006/5/7(日) 午前 9:31
デイベルテイメントは、色々な振り付けで使われるんですよね♪親しみ深いです♪
2006/5/11(木) 午前 10:15
Miyako先生、昔聞いた話ですが、あるクラシックファンは仕事から外から家に帰ると、まず手を洗い顔を洗ってから、おもむろに何かモーツァルトのレコードをかけて、今日一日職場で、雑踏で聞いた様々な雑音を耳から洗い流すのだそうです。いろんなモーツァルトの利用法があるんですね。
2006/5/11(木) 午後 8:14
クララさんの話を聞くと、いつも今すぐバレエを観に、聴きに行きたくなります。でもバレエ公演だけは地方では、やらないんですよね。是非モーツァルトのディヴェルティメントを使ったバレエの演目名だけでも教えて下さい!
2006/5/11(木) 午後 8:19
モーツアルトは小作品に使われることが多いですね。大きな作品としてはパリオペラ座のル・パルクがあります。(^^。)面白い作品ですよ。お衣装もモーツアルトしてます♪
2006/5/13(土) 午前 8:57
イタリアでは日常生活でよく「アレーグロ」とか「ディヴェルティメント」という言葉を耳にします。モーツアルトもそうだったんでしょうか? 因に私も好感の持てる言葉です。皆がそうであれば人生楽しいばかりなのでしょうね。
2006/6/2(金) 午前 2:17 [ junkokaji ]
せっかくご訪問いただいたのに、さっぱり更新が進まず、すみませんです。そうみたいですね。日本ならもっぱら音楽用語としてしか使われない言葉が、イタリアでは日常用語なんですね。オペラなどのクラシック音楽は、音楽の国イタリアでは演歌みたいなもんなんでしょうね、きっと。
2006/6/2(金) 午後 9:23