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今年の夏は梅雨の間はいろいろあったが、梅雨明け後は晴天が続く、典型的な「梅雨明け十日」の安定
した真夏の日々。当地松本では暑いことは暑いが、ここ数年の異常な、terriblyな暑さというのではない
許容範囲の暑さである。何といっても夜そんなに寝苦しくなく、朝は涼しい。ウーン、信州の夏はこうで
なくっちゃと、地球温暖化への愚痴も少なくなる。
そこでここ信州で20年近く、クラシック音楽を聴いて涼しく過ごした「真夏の一日」を再現というか、
紹介してみよう。昨年の「クラシック音楽歳時記」の夏の部と当然ダブることになるのですが、お許しあ
れ!
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朝5時少し前。すでに空は明るく、東の空から陽が登る気配も。窓を明けると白樺の林をぬう高原の風
のような涼しい空気が肌に心地良い。そんな夏の日の爽やかな始まりに、バッハの無伴奏ヴァイオリン・
パルティータ第1番を聴く。(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/7608704.html )
まだ涼しさの残る午前7時ちょっと前。庭に出て芝生を踏んで、その露がひんやりと素足に心地良い。
そんな時間に聴いてみたいのが、マーラーの交響曲第3番の第2楽章と第3楽章。
(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/7766586.html )
第2楽章は「野の草花が私に語ること」という幻の表題が示すとおりの、静かで控えめな緩徐楽章。
伸び放題の我が家の芝生の庭が、「ヒナゲシの野」(1907,ウィーン・オーストリア美術館蔵)とか「白
樺の生えた小作地」(1900,同館蔵)といった、同じ世紀末のウィーンで活躍した画家グスタフ・クリム
トの絵に描かれた淡い印象の草原にでもなったかのようになる。
第3楽章は「動物たちが私に語ること」という訳で、マーラーが幼少期ボヘミアの森で動物たちを友達
に遊んだこと。年に1度の村のお祭りで広場のあちこちから聴こえてくる、回転木馬、射的、人形芝居の
手回しオルガン、軍楽隊の男たちの合唱…。それらの音がポリフォニーとなって、彼の耳にこだまする。
おもちゃ箱をひっくり返したような「大騒ぎ」の音楽。マーラーの幼い頃の思い出が一杯つまった音楽。
中間のトリオで、遠くから聞こえてくるポストホルンの響きが森、大自然への郷愁として聴こえます。
午前8時。すでに陽は高く昇り、通勤の車が動き出し、今日もまた慌しい一日が始まる。信州の夏の一
日はダイナミックだ。涼しい朝、そこから太陽が高度を増すに従って、グングンと温度が上がり、日中は
30℃を超え、上昇した暑さは勢い余って、夕方には大粒の夕立となって落ちてくる。(遠く遠雷も聞こえ
る)そんな夏の日のダイナミックさを先取りするように、ブルックナーの交響曲第7番第1楽章を聴く。
やっぱりブルックナーの音楽の持つ自然な流れを決して妨げないワルターの演奏で聴きたいな。
(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/7995864.html )
お昼(正午)。すでに気温は30℃。盆地特有の天候で、朝夕は涼しくとも日中はグングン温度が上昇する
お昼を食べるのも少しげんなりしてしまうが、ここはひとつバッハのヴィオラ・ダ・ガンバ ソナタ第1番
を風鈴代わりにBGMとしよう。(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/7655633.html )
ゆっくりとしたヴィオラ・ダ・ガンバのチェロに似た低音が、昼日中(ひなか)に感じるわずかな微風
のようであり、それに相和すチェンバロのコロコロと珠を転がしたような音色が、かすかな涼しさをもた
らす水滴のように感じられたら、火炎地獄の中のお慰み。このあと扇風機をかけて、お昼寝に入れたらど
んなにいいだろう。
午後1時。こんな暑さで大脳もヒート・アップしてしまいそうな時は、昼寝に限るでしょう。
そんなお昼寝のお伴は何といっても、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」。これが暑気払いにもってこいの
音楽だ。とりわけロシアのバイオリニスト、ドミトリ・シトコヴェツキー編曲による弦楽演奏版がいい。
(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/8070987.html)
弦楽三重奏版(LP:ORFEO S 138 851 A) 弦楽オーケストラ版(CD: WPCS-21209)
涼しげなバイオリンやヴィオラ、チェロの響きが、暑さに疲れた我々の耳にややけだるく、そして心地
よく聴こえ、うとうとと気持ちよく午睡(お昼寝)に引き込んでくれる。シエスタ、そう夏は日本人もも
っとシエスタしましょう!ラテン系や東南アジアの人たちのように。
シエスタから目覚めたら、もう3時過ぎ。午後の残照。でもこれからはもう温度がこれ以上上がること
はない。そんな昼寝上がりのボヤッとした頭に、クリスタルなピアノの響きに刺激され、弦も気だるく、
かつ涼しく聴こえるピアノ五重奏の傑作を。シューベルトの五重奏曲「ます」です。
(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/8191654.html)
うまく時間に入りませんでしたが、けだるい夏の午後に暑さを忘れ、天国に遊ぶ心地にさせてくれる
2つの演奏として、コレギウム・アウレウムの
シューベルトの八重奏曲( http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/10192385.html )
モーツァルトのセレナード第5番K.204(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/10031520.html)も
ご推薦いたします。(追記 この愛すべきコレギウム・アウレウムのセレナード5番K.204のCDが
7/26再発されました。(CD:BVCD-38143〜45)3枚組「ハフナー」も入ってお得です。)
午後5時過ぎ。太陽が西の山に沈んで、ようやく暑さも一段落。我が家では庭のある東の方角から、夕
方になると風が吹いてくる。さらなる涼しさを求めて庭に水でも撒こうかという、そんなタイミングに聴
きたくなるのがハイドンのチェロ協奏曲第2番。(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/7201367.html)
昼からやたらチェロの曲が多いのは、一般にチェロの音というのは、無論バイオリンと比べて低音だが
ただ低いのではなくて、聴いていて何か心地よい清々しさというか、風通しの良い音に感じませんか。音
の太い分、真ん中が透けるような爽快感がある。朗々と深々と弾くと、自然に爽やかな風を起こすような
そのチェロの音色が涼しさを呼ぶように思うのです、ハイ。
午後7時過ぎ。ようやく漆黒の闇が訪れ、夏の夜がやってきた。夏の夜。それは1年の中でもクラシック
音楽を楽しむのに最も適した時間の一つだ。(これも山国信州だからかも知れないが)昼間は35℃近い猛
暑だった夏の一日も、この時間になると漸く微かではあるが涼しくなってくる。そんな時間、あのまるで
お祭り騒ぎのような昼間の暑さ、喧騒は去ったが、何かその余韻のような、軽い興奮が体の芯に残ってい
る感覚ってありませんか?それを、心地よく鎮めてくれるような、冷やしてくれるようなクラシックの名
曲を聴いて、この夏の一日をクール・ダウンして終わらせることにしましょう。(ここ信州では窓を閉め
ても扇風機さえあれば、それができます。東京なら冷房なしではクール・ダウンもできますまい。)
まずはこの時間帯、露払いにヴィヴァルディのチェロ・ソナタ第1番を聴きましょう。
(http://chikuma46.exblog.jp/)やはり音の真ん中が涼しく透けているようなチェロの音色が、涼
しさを呼んでくれます。
さあ、お楽しみはこれからだ。火照った体に、心では熱く、しかし皮膚感覚としてはあくまでも涼しさ
をもたらしてくれる、クラシックの名曲の数々を、夜が更けるまで聴くとしよう。ここからは順不同で「
夏の夜を涼しく過ごす」候補曲を紹介していきます。
サン・サーンス交響曲第3番「オルガン付」(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/8486903.html )
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番(ただしアルゲリッチがコンドラシンとやったあのスリリングな
ライブ盤に限りますが)(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/8772053.html )
マーラー 交響曲第1番「巨人」(できれば小澤/ボストンのフレッシュな演奏で)
(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/3162830.html )
シェーンベルク 浄められた夜 (http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/8636286.html)
リムスキー・コルサコフ 「シェエラザード」(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/8571935.html)
シェーンベルク 室内交響曲第1番(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/9430156.html)
シベリウス 交響曲第4番(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/9528465.html )
シベリウス弦楽合奏のための組曲「恋人」作品14「ロマンス」作品42(LP: EAC-50051)
モーツァルト フルートとハープのための協奏曲 (LP:CC-1099)
モーツァルト セレナード第7番「ハフナー」(http://blogs.yahoo.co.jp/chikuma46/8974370.html)
「エマ・カークビーの肖像」(ルネッサンス、初期バロック歌曲)(ルーリー/ホグウッド)(POCL-2522)
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さて、いくらかでも涼しく夏を過ごしていただけたでしょうか?
室内の風通しを考える、夕方、庭に水を撒くなどして、とにかく信州に住んでいるのだから、クーラーだ
けは使わないで夏を過ごしたいという思いの実現の方法の1つとしての、「夏を涼しく過ごすクラシック
音楽のすすめ」でした。では日付が変わらないうちに、今日はモーツァルトの「フルートとハープのため
の協奏曲」でも聴いて、ぐっすり眠りにつきたいと思います。おやすみなさい。ZZZZZ…
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夏の夜には、私はシベリウスを選びそうです。北欧の夏の長い昼間を思って。シベリウス特有の霧がかかったような涼しげな曲想もいいですね。
2006/8/7(月) 午前 9:46
たぶさん、「シベリウス特有の霧がかかったような涼しげな曲想」ウーン さすがに聴き込んでますね。ちなみに僕は今日、上記のコレギウム・アウレウムの5番のセレナードK.204や「ハフナー・セレナード」のCDを手に入れたので、これから子守唄に聴くつもりでーす!
2006/8/7(月) 午後 11:20
真夏の夜の夢もいいですよ♪(^0^)。
2006/8/8(火) 午前 8:35
クララさん、ごぶさたしてます!そうですね、夢幻的で。でも僕にはやっぱりあれは夏至の頃の曲だなぁ。
2006/8/8(火) 午後 9:49
暑い日が続いてますが、音楽でも涼を感じることができるのですね〜♪いきなりエアコンではなくて、まずはCDに手を伸ばしてみようかな☆
2006/8/9(水) 午後 9:23 [ mks*eet*105 ]
mkさん、ありがとうございます。そうは言っても今日などは台風一過でここ松本でもterriblyな蒸し暑さ。東京はエアコン必需でしょうね。でも気に入った音楽で暑さを忘れ、エアコン温度を少し上げることはできると思います。
2006/8/10(木) 午後 10:40
「シェーンブルグ」柔らかい音で!!!涼しげに!!!いいですよね。 暑いです!!!
2006/8/12(土) 午後 11:50
シューベルトの五重奏曲「ます」良いですね。涼しげになりますね。去年はヘンデルの「水上の花火」で涼しげな音楽を聴いていました。
2006/8/13(日) 午前 0:11 [ Rボーダー(´・ω・`)つ ]
Miyako先生。松本も暑いですよ、昼間は。夜になると涼しくなって、シェーンベルクの管弦楽の冷やっこい音色が合うんですよ、夏の夜に。
2006/8/13(日) 午前 10:58
Rボーダーさん、そうです。シューベルトの室内楽は基本的には春向きの曲だと思うのですが、「ます」やピアノ三重奏曲などピアノが入ると、ピアノの音がコロコロと涼しい音を奏でて、夏向きなんですよね。
2006/8/13(日) 午前 11:01
こんにちは。
昨日今日とスーツでの移動が暑くてしんどいです。
2006年にお書きになられた文章のようですが〈許容範囲の暑さ〉が気になりました。
子供の頃に信州の親戚宅(相木と小諸)で過ごした夏は確かに涼しかったと思い出しますし、クーラーもなかったです。
湘南はまだ秋が感じられません。
お陰様でまだアルプスモードですが、シトコベツキー版聴いても暑さしのぎにならないかもしれません。
今夜は「三角帽子」や「カルメン」聴きながらタイカレーか麻婆豆腐にしようと思います。
2012/8/26(日) 午後 0:55 [ JH ]
こちらも暑くて、オーディオルームでレコードを聴く気になれません。
しかしあの翌日は「アルプス交響曲」の余韻で、しかしレコードはないので、無性にシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」op.5が聴きたくなり、2日連続で久しぶりに聴きました。後期ロマン派の分厚いオーケストラの音が聴きたくなったというところでしょうか。
とにかくひたすら早くもう少し涼しくなってくれることを願うばかりです!
2012/8/27(月) 午後 10:23