クラシック歳時記in松本 (あるいはモーツァルトとともに1年を)

今春発売の内田光子/テイトのCDでようやく好きになれました・・・モーツァルト ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」

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 (つづき)Die Liebe 愛、恋。これこそモーツァルトが「魔笛」で歌い上げたかったテーマのひとつ

だ。映画「アマデウス」の中でだが、皇帝から「ドイツ的美徳とは何か」と聞かれ、モーツァルトはこう

応えている。「愛です。イタリアのオペラでは男が金切り声で太った女を追い回す。愛どころか滑稽で

す。」つまりモーツァルトがいいたかったのは、かけひきとしての恋ではなく、男と女が純粋に生涯の良

き伴侶を求めようとする、人間のごく自然な、素朴な感情を大切にしているのが、野暮ったいといわれよ

うが、それがドイツ人が誇る素朴な民族性なのだということではないか。従前のタミーノのアリアにして

も、このパミーナとパパゲーノの民謡のような素朴なアリアも、第1幕でメイソン員モーツァルトが最も

歌い上げたかったところのように僕には聴こえる。

 さてこの後、3人の少年に導かれてザラストロの神殿までやって来たタミーノは、門の前で弁者と対峙

する。この場面からフィナーレまでの第1幕は、聴く者に息つぐ暇を与えないほどの緊迫感と音楽的充実

に満ちている。門を前に武者震いするタミーノ。思いがけない「下がれ!」"Zurück"の声。パミーナは

生きていないかも知れないという悲観的な気持ちを持ちながらの、弁者との緊迫感あふれる問答。おご

そかで、それでいて何て深い悲しみに満ちた音楽なんだ。(このマイナー(短調)の音楽も、ワーグナー

『ワルキューレ』第1幕のそれに真っ直ぐ繋がっている。)タミーノはパミーナの存在に一縷の望みを持

ちながらも、自分の微力では助けられないのではと悩む。タミーノの笛の音を聞き、喜ぶパミーナとパパ

ゲーノ。一転モノスタトスの一味に捕まるが、パパゲーノが天使たちにもらったグロッケンシュピールを

鳴らして、窮地を脱する。しかしそこへザラストロの凱旋車がやって来て「今度こそお陀仏だ」と観念す

るパパゲーノに「"Die Wahrheit"(真実)を語りましょう」と覚悟を決めるパミーナ。そして最後はザラ

ストロの心眼の美徳と正義に救われる。この間の刻々たる事態の変化に、一喜一憂する登場人物の微妙な

心理を描き出すモーツァルトの音楽の何と雄弁なこと!

 そしてそのことを我々に強調してくれるのが、節目節目で連呼されるドイツ語のリフレイン。

   "Zurück! Zurück! (パミーナ救済に門から入ろうとするタミーノに僧たちが)

   "Bald, bald…"(「もうすぐ、もうすぐ(希望の光がお前にも差し込むだろう))

   "Sie lebt? Sie lebt?"(「パミーナは)生きている、生きているんですね!」)

   "Umsonst, umsonst!"(「だめだ、だめだ!(やっぱり救うことはできない!)」)

   "Vielleicht…, vielleicht…"(「きっと、きっと」あの人に会える!)

   "Nur geschwinde, nur geschwinde"(「さぁさぁ、急いで急いで」ここから逃げましょう!)

   "Die Wahrheit, die Wahrheit"(「真実を、本当のことを」話しましょう!)

「愛」をドイツ語(Die Liebe)でこそ高らかに歌い上げようとしたモーツァルト。当時ロンドンで破格

の待遇を受けていたダ・ポンテからの誘いを断ってまでウィーンに残り、ウィーンの庶民の国民語である

ドイツ語のオペラを、残り少ない命の炎を燃やし尽くしながら民衆のためにつくり上げたのだ。私は「魔

笛」以上にドイツ語の響きの持つ美しさに気づかせてくれるオペラを他に知らない。

 第1幕の最後は群衆が「美徳と正義が偉大な道に名声をふりまくならば、この地上は天国となって、人

間は神々のようになるだろう」ザラストロの徳をたたえ、大団円となる。ここのところのアレグロであり

ながらの堂々たるフィナーレ、終結のしかたは、モーツァルトの最も神々しいシンフォニー「ジュピタ

ー」のそれと瓜二つ。古今のオペラの中で私が最も好み、かつ聴くたびごとに熱いものが胸にこみ上げて

くるフィナーレである。

 

 

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このオペラ、見所・聴き所。。いっぱい!素晴らしい解説!

2007/4/22(日) 午前 7:58 Miyako 返信する

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今度「魔笛」を聴くときは、セリフのひとつひとつにもっと耳を傾けようという気になりました。GUSTAVさんの「魔笛」への思いがとてもよくわかる記事でした! 傑作!

2007/4/22(日) 午前 8:07 そにあ♪ 返信する

面白い解釈の物もあって、夜の女王とザラストロは夫婦!(@@;)最後は仲直りで大円団という、版もありますね。こちらの方が好きかも!より平和的な気がします(^^;)。

2007/4/22(日) 午前 8:48 cla*aa*g*laj* 返信する

「魔笛」はモーツァルトのオペラで一番好きです。楽しくためになる解説ですね。この後が楽しみです。

2007/4/22(日) 午後 10:24 JinK 返信する

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モーツァルトが言いたかったのは、男と女が純粋に生涯の良き伴侶を求めようとする素朴な感情、素朴なドイツ人の民族性、というくだり、目から鱗でした。パパゲーノとパパゲーナは素朴な我々そのままだし、タミーノとパミーナもやはり純粋。引用されているレチタティーボのくだり、"Sie lebt? Sie lebt?"と喜び叫ぶタミーノには、いつもドキドキします。ウィーンで魔笛を聴いてきますが、また今までとはちょっと違った目で見れるかも知れない気がしてきました♪いつもながら素晴らしい記事をありがとうございます。

2007/4/22(日) 午後 11:04 [ nakkun ] 返信する

お久しぶりです。愛について、再確認しました♪魔笛大好きです。 純粋で楽しいんだもの〜〜〜。

2007/4/23(月) 午前 0:19 ♪ふらん♪ 返信する

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グスタフさん、ゲストブックにご挨拶を書きました。5月に信州に伺うつもりです。お会いできたらいいな、と思っております。

2007/4/23(月) 午前 1:15 スピンネーカ 返信する

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週末魔笛全曲聴きました。この記事もう少し早く見つけていたらさらに味わい深いものになったのに・・・。続きも楽しみにしております。傑作プチして帰ります。

2007/4/23(月) 午後 8:03 |◎|TANNOY|◎| 返信する

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魔笛、大好きです。筋がめちゃくちゃですが、そこがまたいいですね。いろいろ好きな部分が多いですが、パパゲーノがモノスタートスと遭遇して、"Das ist der teu--fel si---cherlich !"と途切れ途切れにいうところ、いつ観てもおかしくて仕方がありません

2007/4/24(火) 午後 10:38 Key 返信する

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Miyako先生、ありがとうございます。「子どもにも親しめて、大家といえども窮めるのが難しい」魔笛はモーツァルトの作品一般に言われること、そのものですよね。

2007/4/29(日) 午後 11:56 gustav 返信する

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たぶさん、ポチッありがとうございます。僕にとってはイタリア語のレチタティーヴォよりも、ドイツ語のせりふの方が聞いてて心地良いですね。

2007/4/30(月) 午前 0:06 gustav 返信する

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クララさん、僕も夜の女王とザラストロは元夫婦、という解釈に賛成ですね。何かその方が自然!ベルイマンの映画もその解釈だったような気がします。夕べ偶然NHKでカナダの「魔笛」のバレエやってましたね。

2007/4/30(月) 午前 0:09 gustav 返信する

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JinKさん、ありがとうございます。「魔笛」後編(第2幕)でこのブログの締めにしようと思っています。

2007/4/30(月) 午前 0:17 gustav 返信する

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なっくん、今頃はウィーンで音楽三昧でしょうか。うらやましい!いつか自分もウィーン、ザルツブルク、モーツァルト三昧の旅をしてみたいです。お土産話楽しみにしています。

2007/4/30(月) 午前 0:26 gustav 返信する

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Fran♪さん、お久しぶりです。「魔笛」は子どもの童謡のような親しみやすく、口ずさめるメロディの連続なのに、奥深さを感じさせる大人のメルヒェンですね。晩年のモーツァルトの魅力のすべてがあります。

2007/4/30(月) 午前 0:36 gustav 返信する

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スピンさん、お待ちしております。5月の信州は新緑と残雪が共存し、それはそれはおススメの季節です。

2007/4/30(月) 午前 0:50 gustav 返信する

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タンノイさん、プチありがとうございます。つづき、明日書けるといいのですが…。

2007/4/30(月) 午前 0:53 gustav 返信する

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hiroshiさん、「魔笛」ではモノスタトスの存在が結構重要ではないかと思っています。その辺を後編で書ければなぁと思っています。

2007/4/30(月) 午前 0:58 gustav 返信する

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