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6月26日(日)晴れ
ここ数日ごぶさたしていたのは、他でもない。天気のせいだ。
「梅雨の時季に聞きたいしっとりとした音楽」を書こうとしているのだが、さっぱり雨が降らないどころか、昨日は松本で6月の観測史上最高の35.9℃。子どもの頃は真夏でも松本で35℃というのは覚えがなかった。もう酷暑といっていい毎日、しっとりとした雨の音楽どころではない。自然とメロディが浮かんでくるのは「夏の昼下がりに涼しさを感じる」曲ばかり。
という訳で雨の音楽はお休み!
「こんなときどんな曲?」の2をいってみたいと思います。
「ただいま!」と家に帰ると「お帰りなさい。あと2,30分したらご飯になるわよ。」と母(既婚者は妻)の声。そんな時あなただったらどんな音楽を聴いて、夕飯を待ちますか?(いきなり突拍子もないsituationでごめんなさい。)
私だったら、ロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」を聴きながら待ってるとしよう。
レコードに針を下ろす。何だかこれから楽しい物語が始まるような、ワクワクしてくるような序曲。このワクワクには理由がある。世に「ロッシーニ・クレッシェンド」といわれる息の長いクレシェンドがこれからの展開を期待させるのだ。
ロッシーニはベートーベンと同じ、19世紀初め頃活躍したイタリアのオペラ作曲家。代表作「セビリアの理髪師」は彼が23歳の時、何とわずか13日間で書き上げてしまったという逸話がある。
登場人物はセビリアの理髪師フィガロ、アルマヴィーヴァ伯爵、ロジーナ…。そう、あのモーツァルトの傑作「フィガロの結婚」に出てくる人物と同じ。実は2つのオペラは、同じフランスのボーマルシェの戯曲を原作にしたもので、「セビリアの理髪師」は「フィガロの結婚」の前編にあたる。
つまりフィガロの結婚に出てくる伯爵夫人がまだバルトロの屋敷にいた娘、ロジーナで、彼女に恋したアルマヴィーヴァ伯爵が床屋で「町の何でも屋」のフィガロの助けを借りて、ロジーナと結婚するまでを描いたドタバタ喜劇、オペラ・ブッファである。
だから全篇軽い、心沸き立つような音楽に満ちていて、お腹をすかせて夕ご飯を心待ちにする気分にピッタリという訳だ。食いしん坊の音楽といってもいい。
事実書いたロッシーニという人が、音楽史上稀に見るグルメというかエピキュリアン。超売れっ子オペラ作曲家として、あのウィーンでも当時ベートーベンよりも人気が高かったロッシーニは37歳の時、突如音楽界からの引退をする。その後76歳まで長生きをしたにもかかわらず、ほとんど作曲から足を洗ってしまった。
なぜロッシーニは音楽家をやめてしまったのか?また引退後の39年間、何をしていたのか?
実は彼は音楽家よりも、うまいものを食べ、うまいものを作る料理人の道を選んだのです。
引退後彼はフランスではパリで美食家専用の高級レストランを経営し、イタリアではボローニャで熱心に豚を飼育する日々を送ったのです。しかも豚を飼っていたのは、おいしい豚肉を食べるためだけでなく、何とその豚を使って、高級食材であるトリュフを樫の林から嗅ぎ掘らせるためだったのです。
そこまで徹底したグルメだったロッシーニの名前は、「トルネード・ロッシーニ風」という牛肉料理になって今日まで残っているという訳です。
さぁ、そんな逸話の持ち主であるロッシーニの「セビリアの理髪師」。
序曲の後は、夜明け前。ロジーナの窓辺でアルマヴィーヴァ伯爵(テノール)が、愛を囁くカヴァティーナを切なく歌う。でもバルコニーに恋しい彼女は姿を現わさない。
落胆している伯爵の耳に、遠くから陽気なフィガロ(バリトン)の歌声が近づいてくる。「俺は町の何でも屋!皆が俺の名を呼ぶ。フィガロ、フィガロ、フィーガロッ…とね。」と、いよいよ主役の登場っというところで、レコードだと1枚目のA面が終わる。
ちょうどその時、台所からお母さん(奥さん)の声が。「ご飯できたわよ!」
さぁ、お楽しみはこれからだ。食卓を囲みながら、今日一日のできごとを、お互い面白おかしく肴にして、楽しい夕飯食べましょう。
演奏はクラウディオ・アッバード指揮ロンドン交響楽団。
(LP:Grammophon MG-8095〜7)(CD:G POCG3840〜1)(今ドイツ・グラモフォン“オリジナルズ”発売10周年記念「THE ORIGINALSベスト・セレクション100」で2枚組み2100円のお買い得です。(品番)4577332)
ロジーナのベルガンサもさることながら、何といってもこのレコードの聴きどころはヘルマン・プライのフィガロ!ベームの「フィガロの結婚」でもフィガロを歌っているプライ。颯爽として歯切れの良い彼のフィガロ。フィガロと「魔笛」のパパゲーノこそは、まさにプライのためにある役どころだ。
P.S. もしお手元に「セビリアの理髪師」のディスクがない場合には、勿論、モーツァルトの「フィガロの結婚」が代役になれることは、言うまでもありません。その場合前述のカール・ベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団がおススメ。(LP:GMG8004〜7)(CD:G 4497282 3枚組)
プライのフィガロ、ディースカウのアルマヴィーヴァ伯爵、グンドラ・ヤノヴィッツの伯爵夫人、エディット・マティスのスザンナ、タチアーナ・トロヤノスのケルビーノと最高のメンバーだ。
トロヤノスのハスキーなケルビーノで「恋とはどんなものかしら」にうっとりしながら、プライの「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」を聴き終わると、第1幕の終わり。ちょうどご飯の時間になりますね。この「フィガロの結婚」のダイジェスト版のCDも便利ですね。何しろ名曲の目白押しですから。(CC-1064)
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「俺は町の何でも屋!皆が俺の名を呼ぶ。フィガロ、フィガロ、フィーガロッ…とね。」「トムとジェリ−」と言うアニメのとある1話で使われる歌です。このアニメですっかり刷り込まれてしまってから、コンサートではまともに聴くことが出来ません。笑ってしまいそうになるのを抑えるのに必死になってしまいます。
2005/6/27(月) 午後 4:54 [ まぐ ]
「トムとジェリー」とは懐かしいですね。もう一度見たいアニメのベスト5だ。でも刷り込みって怖いですよね。僕の場合タモリの「今夜は最高!」で斎藤晴彦のクラシック・パロディを知り、面白がってそのCD何度も聞いてたら、替え歌の歌詞が耳にこびりついて困りました。治るまで5年はかかりましたね。
2005/6/27(月) 午後 10:57
軽やかでいいなぁ^^セヴィリア、大好きなオペラです。確かにこれを聴いたら、鬱陶しい梅雨も乗り切れるかも!アルマヴィーヴァ伯爵って、後にフィガロでかなりムムムな姿をさらけ出すんだけどなんか憎めないキャラですね!(笑)
2005/6/27(月) 午後 11:36
Cuttyさん、同感ですね。今ならさしずめ「セクハラおやじ」!でも「フィガロの結婚」の最後で perdono (すべてを)「許す」 モーツァルトはすごいと思う。「奥方、許してくれ」このメロディが映画「アマデウス」では、モーツァルトの遺した最も美しい旋律として描かれている。男性だからではなく、人としてモーツァルトの想像以上の大きさを感じる部分です。
2005/6/28(火) 午前 0:06
やはりプライははずせないですよね〜^^わくわくします♪
2005/6/28(火) 午前 8:24 [ gnadejp ]
たびたび失礼します^^最後のフィガロのご紹介ですが、このフィガロ私も大好きなんです。プライはもちろんですが、ヤノヴィッツの伯爵夫人がすっごくお気に入り!二幕は視線が彼女に釘付けになっちゃうくらいです。あの透き通った、厳かとさえいえるような美しいお声と、トボけた演技の対照がたまりません。
2005/6/28(火) 午後 1:05
あれっ、ローレライさんはディースカウ・ファンでは・・・?僕の場合、彼を最初に聴いたのがこのアルマヴィーヴァ伯爵だったので、どうもその印象をひきずっちゃったようです。最近はそうでもなくなったけど。ディースカウの一番好きなのはマーラーの「さすらう若人の歌」フルトヴェングラーとの歴史的共演ですね。
2005/6/29(水) 午前 1:00
Cuttyさん、ヤノヴィッツの伯爵夫人もいいですね。特に「愛の神よ、照覧あれ」のカヴァティーナ。神々しさすら感じます。
2005/6/29(水) 午前 1:20
もちろんディースカウファンですっ!でもフィガロの時はプライです^^cuttyさんのコメントにありますが、ヤノヴィッツがまたさいこ〜に素敵ですよね。
2005/6/29(水) 午後 5:10 [ gnadejp ]
レコードに針を下ろす。何だかこれから楽しい物語が・・・。凄い!、音楽が始まる前にワクワクしそうですね。・・そこいくと、CDはやはり味気ないですね。ロッシーニの逸話面白かったです。自己作品の転用が多いとは聞いていましたが、これで彼に対する親しみが持てました。
2005/6/29(水) 午後 8:23
HS9655さん、ロッシーニではこれから夏に向けて「弦楽のためのソナタ」が涼しさを呼んで、良いですね。
2005/6/29(水) 午後 10:13