|
7月1日(金)雨
やっと梅雨らしい本格的な雨が降った。場所によっては局地的な豪雨のところもあって、手放しには喜べないのですが、木々も人もホッとひと息というのが、正直なところです。
前に近代フランス音楽(19世紀末〜20世紀初め)、それも室内楽に雨の日に似つかわしい、しっとりとした曲が多いという話をした。作曲家でいうと、フランク、フォーレ、ショーソン、ドビュッシー、ラベル・・・。
なぜ19世紀後半からのフランス音楽が雨に似合うのか?
イタリアが先進地だったクラシック音楽の主流がバッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルトを経て、19世紀に入ると次第にウィーンが音楽の都の位置を占めるに至る。
そしてベートーベンを経て、シューベルト、シューマンとドイツロマン派音楽が一世を風靡する。その19世紀ドイツに花開いたロマン派の音楽。後半に入るとさらにリスト、ワーグナーの半音階旋律と新たな展開を見せる。
そうしたドイツロマン派、とりわけワーグナーの妖しいまでの官能的な音楽の洗礼を受けて、彼ら世紀末のフランスの音楽家たちは在る。ドイツ風のロマンティシズムに、さらにフランスの、とりわけパリの洗練された雰囲気、エスプリが加わって、都会的な、おしゃれな味付けの音楽になる。
(ここで実は世界史的な出来事が一つかかわってくるのです。19世紀の半ば、大衆政治家(ポピュリスト)の走りともいうべきルイ・ナポレオン(ナポレオン3世)が着手したパリ大改造。
1855年にパリ万国博を開催し、その後パリをヨーロッパ一の都市にすべく、凱旋門からシャンゼリゼといった広場や街路を整備し、あっという間に壮麗な都を建設した。これが19世紀末、パリが絵画においても、音楽においても一時代を画する芸術の都となる要因を作ったと私は思うのですが。)
ところで、そう皆さん、雨の日って普通の日よりおしゃれな感じがしませんか?都会的な感じがしませんか?
田舎の土ぼこりまで、落ち着かせてしまうような。雨に濡れた石畳を、洒落た雨傘かレインコートを着て歩くようなイメージが、フランス近代の作曲家たちの、特に室内楽にはあるように感じるのです。
その中でも極めつけがこのショーソンという作曲家であり、この曲なのです。
エルネスト・ショーソン(1855〜1899)
彼はパリの裕福な家庭に生まれ(ドビュッシーより7歳年上)、家庭教師から十分な教養教育を施され、文学、絵画、音楽いずれの分野にも並外れた才能を発揮したが、父の意向に従い、大学は法学部に進み、22歳で弁護士の資格を取る。
そこで父の許しを得た彼は音楽の勉強を再開。25歳でパリ音楽院に入学し、マスネとフランクに師事。
27歳の時新婚旅行でバイロイトへ詣で、ワーグナーの世界の洗礼を受ける。
そして彼は44歳の若さで不慮の事故(なんと自転車事故で頭部を強打して即死!)で亡くなるまでの20年間に、歌曲を中心に40ほどの作品を半ば日曜作曲家的に遺している。
決して多作とはいえぬショーソンだが、私は彼の作品の殆どが好きだ。「交響曲」「詩曲」「終わりなき歌」「愛と海の詩」とても自分と相性のいい作曲家だと思っている。
好きな曲が一番多い作曲家はモーツァルトだと思うのだが、打率というか効率。つまり全作品数に対して好きな曲の割合が高いのは、私の場合、シェーンベルクとショーソンだと思う。
そのショーソンの最高傑作が、この「ピアノ、バイオリンと弦楽四重奏のための協奏曲(コンセール)」。協奏曲といってもこれは6人で演奏するものだから、純然たる「室内楽」作品なのです。
第1楽章。ピアノによって決然と弾かれる3つの和音。これがこの楽章のみならず、楽曲全体のモティーフとなっていく。師フランクの循環形式を連想させるが、これが何よりも全体の統一感を形作っている。やがて独奏バイオリンによる第1主題の提示。緊張感を孕みながらも、あくまで優美に曲は展開してゆく。
第2楽章。シシリエンヌ。わずか4分にも満たぬ小品ながら、この甘美さ。熟した果実がさらに西に傾いた陽光に照らされて、最後の芳香を漂わせるような、極上の官能。それでいてワーグナーほどべとつかず、どちらかといえばフォーレの持つ清廉さに近い気品を保った名旋律。だが、この世の最高の瞬間のごとく、あっという間に終わってしまう。
第3楽章。再び憂鬱の世界に沈潜していく、瞑想的な楽章。しいて言えばフランクの傑作、バイオリン・ソナタの第3楽章の宗教的な深さに、唯一匹敵する音楽ではないだろうか。
最終楽章。循環形式で第1楽章の主題が提示されながら、第3楽章の宗教的な重苦しい空気を自ら決然と払いのけ、明るく曲全体を閉じる。
とにかく、これだけ最初から最後まで隙のない緻密で濃厚な室内曲を私は知らない。
演奏はジャン・フィリップ・コラールのピアノ、オーギュスタン・デュメイのバイオリンとミュール四重奏団のEMIのがお薦め。(A-CC33-3837)ただし私は持ってなくて、パールマン(Vn)ホルヘ・ボレット(Pf)とジュリアード弦楽四重奏団を聴いています。(1978年の録音)(SONY SRCR2587)
実はこのデュメイがソロを務めて、ミシェル・ダルベルトがピアノを担当した「ラ・フランセーズ」(当時18のエレーヌ・グリモーもいましたよ。)の演奏を昔1988年に松本のハーモニーホールで聴いた。
勿論その時初めてこの曲を聴いたことになるのだが、その生演奏が自分にとって、この曲の最高の演奏であると同時に、実は今まで足を運んだすべての演奏会の中の最高の演奏だったと正直に告白しよう。
この曲自体も、あらゆるクラシック音楽の中で、私にとってベスト3に入る曲である。あれから17年経った今でも。
|
文章から音楽が聞こえてきますよ。久しぶりに聞くために、早速CD取り出しました。もう遅いので明日聞くために。僕の持っているのはアモイヤル、ロジェ、イザイQのDecca盤です。
2005/7/2(土) 午前 2:50
先日のフォーレの紹介で、いろいろ探したところ、私のお気に入りの曲がフォーレだったことがわかって感動しました。今回のショーソンもぜひ聴いてみたいです。
2005/7/2(土) 午前 8:26 [ うらん ]
勉強になります♪(*´ー`)
2005/7/2(土) 午後 2:50
ふじさん、この曲は録音意外に少ないですね。僕はLPではフェラス、バルビゼ、パレナンSQの中古で買った盤を聴いています。
2005/7/2(土) 午後 8:42
うらんさんのお気に入りのフォーレの曲って何でしょう?パヴァーヌ?気になるなぁ。
2005/7/2(土) 午後 8:45
ちゃめぼーさんの四国旅行記、楽しく見させてもらってます。この間の香川のうどん屋さん、おいしそうで、思わずそこのHPしっかりお気に入りに追加しましたよ。
2005/7/2(土) 午後 8:52
私のお気に入りは「シシリエンヌ」でした。「パヴァーヌ」は持っていなかったので、ネットで検索してmidiで聴いてみました。美しい曲ですね。ぜひ演奏で聴いてみたいと思いました。
2005/7/2(土) 午後 10:05 [ うらん ]