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7月25日(月)晴れのち曇り
この前、夏の朝の曲(バッハ無伴奏バイオリン・パルティータ第1番)を一つ紹介したので、今日はそれに続いて第2弾!
まだ温度もさほど上がらず、涼しさの残る朝(信州だからかも知れませんが)に聴いてみたいのが、後期ロマン派の大作曲家グスタフ・マーラーの交響曲第3番の2,3楽章だ。
この交響曲はマーラーが1893年から1896年にかけて、すなわち彼が33歳から36歳の主に夏に(当時ハンブルクの歌劇場の指揮者だったマーラーにとって、創作活動はオペラのシーズン・オフである夏に限られていた)、ザルツブルクに程近い避暑地シュタインバッハ(アッター湖畔)で作られた。
したがって曲全体から夏のイメージが感じられるし、彼の自然描写、自然観が反映した曲と考えられる。
事実彼は当初この交響曲に「夏の朝の夢」という副題をつけようとし、長大な6つの楽章にそれぞれ
1. 夏がやって来る 2. 草原で花々が私に語ること 3. 動物たちが私に語ること 4. 人が私に語ること 5. 天使たちが私に語ること 6. 愛が私に語ること という表題を考えていたという。
それらは作品発表の際に全て削除されたが、マーラーの巧みなオーケストレーションのお蔭で、聴いていて自然とそれら元のテーマが頭の中にイメージされる。
もう少し、創作中の彼自身の言葉を紹介しよう。当時許婚者の関係にあったソプラノ歌手に宛てた書簡から。
「私の交響曲は世界が未だ聴いたことがないようなものになるだろう。その中で自然の全てが発言し、人が夢の中で予感したかも知れない深く秘められた事柄を語るのだ。」
この3番こそはマーラーが自然のすべて、宇宙そのものを交響曲の中に取り込もうとした、極めて野心的な壮大な作品であり、彼の自然への賛歌と考えてよいだろう。
第2楽章はテンポ・ディ・メヌエットと記された緩徐楽章。「野の草花が・・・」という幻の表題が示すとおり、静かで控えめな小曲。
この曲を聴くと、まだ朝露に濡れた夏の草原、または庭園を思い浮かべる。絵画でいったら、同じ世紀末のウィーンで活躍した画家グスタフ・クリムトの「ヒナゲシの野」(1907,ウィーン・オーストリア美術館蔵)とか「白樺の生えた小作地」(1900,同館蔵)といった、はかなげな印象の草原の絵を連想させる、可憐な楽章。
第3楽章はスケルツァンド、まぁスケルツォの楽章ですね。「動物たちが・・・」という訳ですが、ここは絶対マーラーの幼い頃の思い出が一杯つまった音楽ですね。
ボヘミアの森で動物たちを友達に遊んだこと。年に1度の村のお祭りで広場のあちこちから聴こえてくる、回転木馬、射的、人形芝居の手回しオルガン、軍楽隊の男たちの合唱…。それらの音がポリフォニーとなって、彼の耳にこだまする。おもちゃ箱をひっくり返したような「大騒ぎ」の音楽。
そのスケルツォの中間のトリオで、遠くから聞こえてくるポストホルンの響き。このメロディそのものは、当時ヨーロッパ中で大流行した、スペインはアラゴン地方の民謡舞曲ホータ・アラゴネーサだそうだが、これは明らかにマーラーの生家近くにあったオーストリア軍の兵舎から聞こえてきた、幼き日に聴いたであろうラッパの音が、時間を隔てて今、マーラーの中で鳴っているのだ。
夏の朝の気分ということで、第2,第3楽章のみを紹介したが、他の楽章も魅力いっぱい。
豪快に夏が行進してくる第1楽章、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」の一節をアルトが深々と唄う第4楽章、少年合唱隊が天上から天使のように歌いかける第5楽章、そして有名な第5番の第4楽章アダージェットにも負けない官能的、感動的な弦楽合奏による終楽章、と全曲1時間45分にも及ぶ、長大な交響曲作曲家で知られるマーラーの中でも特に長大なこの第3番。
「ベニスに死す」で使われた5番のアダージェットでマーラーが好きになり、4番、1番と聴いてきたあなたが、真のマーラー・ファンとなるのはこの3番を好きになった時ではないでしょうか。(実はこの3番も「ベニスに死す」の中で使われています。)
演奏はバーンスタインの物が定評がありますが、私は1980年にクラウディオ・アバドがウィーン・フィルを指揮したレコードを愛聴しています。(GRAMMOPHON 52MG0412〜3)
少年合唱は勿論ウィーン少年合唱団で、アルトはジェシー・ノーマン。これ以上ない組み合わせではないでしょうか。
もう一つ、多少録音は古くなりますが、ラファエル・クーベリックがバイエルン放送交響楽団を指揮した1967年の演奏もお薦めします。(GRAMMOPHON MGX-9923〜4)
第3楽章の例のポストホルンがノスタルジックに、あたかも天国からの音楽のように聞こえてくるのは、この演奏が一番じゃないかなという気がします。
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おはようございます。。マーラーって若干苦手であまり^^;聴かないのですが^^;−−−はじめて聴いたときにこんな御指南役がいたらなあ!うん、次回どこかの演奏会で触れるときは、先入観を捨てて望みます★
2005/7/26(火) 午前 6:50
らぶさんへ>GUSTAVさんのコメントにもう一度「御指南お願いしま〜す」と書いたら、喜んで教えてくれますよ。 僕も、マーラーはGUSUTAVさんに手取り足取り、教えて貰えましたヨ。
2005/7/26(火) 午後 7:05
↑エッ=””☆そ、そうなんですか???汗ーーーマーラーとブルックナーがなぜか苦手なこんな私でもでしょうか(爆)
2005/7/28(木) 午前 7:37
らぶ子さん、そう怖がらずに。やっぱりピアノからクラシックに入った方からはマーラー、ブルックナーの交響曲は一番遠いと思います。マーラーの5番の第4楽章やブルックナーなら4番「ロマンティック」から入るのが、いいでしょうか。ただどちらも実演で生のオーケストラで聴かないと全体像がわからないということはあると思います。
2005/7/28(木) 午後 3:20
私もマーラーは3番と5番ばかり聴いていますね。しかしグスタフさんの造詣は本当に深いですね。感心します。3番はショルティの1968年以外を聴いたことがないので、今度クーべりックを聴いてみたくなりました。
2005/7/28(木) 午後 10:30 [ 中世 ]
本当はマーラーもブルックナーも社会人になってからは、学生時代ほどは聴かなくなりました。やっぱり大曲を聴くにはエネルギーが必要なのでしょうかねぇ。でもその分あの頃には見えなかったものが見えてきたり、言葉にできなかったことができるようになっているかも知れませんね。
2005/7/28(木) 午後 11:22
こんにちは、コンコン、GUSTAV先生の門を叩く、らぷ子です(汗)ーーーー実はマーラーやブルックナの良さがわかりませぬwなぜか聴いてて構造もワカリマセンwwおっしゃる実演、勇気も要りますが、、どうすれば楽しめますでしょうか、ご指南下さい〜〜〜〜。。。。。(オソルオソル)
2005/7/29(金) 午後 8:10
らぶ子さん、逆説的な言い方をすればピアニストにとって、マーラーやブルックナーの交響曲の良さがわからなくたって、一向に構わないじゃないですか。まっブルックナーの交響曲の構造は大変複雑で…とか色々ありますが、「音楽」ですからまずは自分が聴いて楽しくなければ…。無理しない、無理しない。例えばマーラーの5番の4楽章のアダージェットを聴いていいなと思う。そしたら他の曲の緩徐楽章も聴いてみる。そんなゆっくりペースでどうですか。
2005/7/29(金) 午後 11:37
ありがとうございます(ホッ)・・・一向に構わないかどうか(笑)なんだか、ウイスキーボンボンの美味がわからないお子ちゃまのようで・・アハハ・・・♪そうですよね。マーラー5番。4楽章デスネ、そのあたりから。ゆるりとまいります!感謝☆
2005/7/31(日) 午後 9:06
私も3番は大好きです。夏の音楽の候補に入ってます。やはり終楽章は最高の音楽でしょうね・・・
2005/8/2(火) 午後 9:53
shogoさん、同じ聴き方をされてる方がいるというのは心強いです。第6楽章はある意味5番のアダージェット以上ですね。より陶酔的で、より感動的な。あぁ何だかまた「ヴェニスに死す」を見てみたくなりました。
2005/8/2(火) 午後 11:26
おはようございます。トラックバックありがとうございます。深く聴き込まれていますね!アバドは6番だけ、と言ったのはBPO盤の事でして、VPOとの3番は初期のCDで、シカゴ響との2番をLPで持っています。VPOは当時既に現在の機能性を持ち始めており、画期的な演奏でしたね。クーベリックのスタジオ録音は全集を持っています。私の宝物です。同好の士がいらして、とても嬉しいです。
2006/5/11(木) 午前 7:48 [ - ]