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8月5日(金)晴れ
夏の夜は1年の中でも、クラシック音楽を聴く「極上のひととき」である。
昼間の猛暑は厳しいが、シャワーを浴び、ビールで一杯やった後、まだまだ軽い興奮状態の心と身体を、多少涼しくなった風とともにクールダウンさせてくれるような涼しげな曲に耳を傾ける。
今宵の曲は19C後半、ロシア五人組の一人リムスキー・コルサコフの「シェエラザード」。
一般にロシアの作曲家といえばチャイコフスキーを筆頭に、どちらかと言えば冬向きのイメージの曲が多いと思うだろうが、案外そうでもない。これから何曲か紹介しよう。
まぁこの「シェエラザード」については夏向きの、それも夜の曲といっても、大方異存はあるまい。
この曲の原典はイスラムの有名な「アラビアン・ナイト」(千夜一夜物語)。世界三大奇書の一つに数えられ、話の筋立ては次のようなものである。
「シャリアール王(サルタン)は妻の不貞を知ってからというもの、世の中の女性はすべて
虚偽で不貞なものと信じ、その復讐の方法として毎夜新しい妃を迎えては、初夜の後殺し
てしまった。しかしシェエラザード妃(サルターナ)は賢い女性で、千一夜の間面白い話
を語り続けて王の興味をつなぎ止め、自らの生命を永らえた。興味に惹かれて、王は一日
一日、彼女の首をはねるのを延ばし、ついにその残酷な計画を放棄した・・・・・・。」
この筋立てに乗って、イラン、イラクは勿論、東は中国、西はエジプト、モロッコまで、当時のイスラム商人が股にかけた世界各地の物語を集めたお話だ。
リムスキー・コルサコフは、この物語集からヒントを得て、
第1楽章 船乗りシンドバッドの冒険のエピソード「海とシンドバッドの舟」
第2楽章 諸国を遍歴して歩くイスラム教の托鉢僧(カレンダー)の物語「カレンダー王子の物語」
第3楽章 年若い王子と王女の愛の物語「若い王子と王女」
第4楽章 「バグダッドの祭り、海、船は青銅の騎士のある岩で難破、終曲」
という表題をつけたが、その後削除した。
しかし「オーケストレーションの魔術師」と言われたリムスキー・コルサコフの、色彩的で輝かしいオーケストレーションの巧みさから、我々は音楽からその光景を十分想像することができる。
1,2,4楽章は基本的にサルタン・シャリアールを示す狂暴な主題(テーマ)と、ヒロインのシェエラザードを示す優美で愛らしい旋律(これはバイオリンのソロが奏でる)の2つから構成される音楽で、第3楽章の愛の物語は、交響曲でいう緩徐楽章アダージョの部分にあたる。
作曲者が若い頃、海軍士官として海上生活を体験しているせいだろうか、全体を通して海の情景、波の描写力に優れた曲である。
人気のある曲だけにレコード、ディスクの種類も多いが、一般に定評あるのはロストロポーヴィチ指揮パリ管(1974年) 、新しいところではゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管(2001年)あたり。
だが私の愛聴盤は小澤征爾指揮ポストン交響楽団のもの。(1977年)(LP: GRAMMOPHON MG1158)(CD: GRAMMOPHON 459 577-2)
以前マーラーの「巨人」のところでも書いたが(5/21)、1970年代後半の小澤・ボストン響のコンビの録音はどれもすばらしい。
ボストン得意の弦がいよいよしなやかにして、絹のようなつややかさ。演奏も繊細にして波の起伏の大きくうねる感じを描ききることに成功しています。
もう一つ、シェエラザードのテーマを奏でるのが、ボストンのコンサート・マスター、ジョセフ・シルバースタインのバイオリン。これがまたいい。
これ以上ない繊細さ。線の細さと美しさではピカイチのバイオリンソロでしょう。ベールに素顔が包まれた、柳腰の異国の美女への想像力を大いに掻き立てられる音色です。一度お聴きあれ。
P.S. 昔からそう思っていたのですが、シェエラザードの第2楽章のテーマって、昔のアニメ「タイガー・マスク」のエンディング・テーマ「強ければそれでいいんだ・・・」のそっくりだと思いませんか?何度も何度もこのテーマが出てくるので、私は秘かにこの楽章を「強ければそれでいいんだ」変奏曲と呼んでいます。
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素敵な曲ですよね。本当に御伽噺みたいだし、異国情緒があって、ちさも好きな曲です!
2005/8/6(土) 午後 7:16
ちささん、ロシアって地理的にも、歴史的にもアラブの世界に近いんですよね。だからR・コルサコフだけじゃなくて、ロシアの作曲家がもっと中東を舞台にした音楽をたくさん作っていてもいいと思うのですが。ってか、そういう曲をたくさん聴きたい!
2005/8/6(土) 午後 11:39