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8月11日(木)晴れ時々曇り
夜はぐっすり眠っていらっしゃいますか?
いくら虫の音の応援があっても、熱帯夜の日はなかなか寝付けませんよね。床に着いても眠れぬまま、すぐ30分、1時間と経ってしまいます。
午前0時を回ってしまった時、私が最後の手段で掛けるのがこのモーツァルトのハフナー・セレナードです。
エー最近の自分のブログで紹介している夏を涼しく感じさせる曲のレパートリーを振り返ってみると、
1.弦楽合奏が主体で、バイオリンなどのその弦の響きが涼やかな曲
2.ピアノの音色がコロコロと鈴が転がるように涼しく感じる曲(ます、チャイコンなど)
の2つに大別されるようです。今日の曲はもちろんその1に入ります。
モーツァルトにはおびただしい数の「セレナード」「ディヴェルティメント」または「カッサシオン」と呼ばれる機会音楽がある。どれも18世紀半ばから後半に栄えた、様々な祝祭や楽しみのために作曲された多楽章の楽曲だ。
つまり当時の貴族や富豪からの依頼で、その家の祝典や食事の際のムードを盛り上げるBGMの生演奏のために作られた作品という訳だ。
セレナードというのはセレ(sere= イタリア語の夕方、晩の意)から生まれた言葉で、夜、戸外で小編成のアンサンブルによって演奏されるものを指し、日本語にすれば「夕べの音楽、夜曲」ということになります。番号の付いたものとしては第13番K525まである。(これが有名な「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」)
ちなみにディヴェルティメントは「喜遊曲」と訳される、同じく小編成で主に室内で演奏する目的で書かれた作品で、番号の付いたものとしては第17番K334まである。
またカッサシオンというのは「通りを進んで行く」という言葉に由来すると言われ、セレナードと同じく夜の野外音楽として人気を博した。カッサシオンの最初と最後にはマーチ(行進曲)が入っているので、おそらくこれを自分たちで演奏しながら、音楽家たちが入場してパーティーが始まったのでしょう。
しかし3つの音楽にはそれほどの高い垣根がある訳ではないので、セレナードとかディヴェルティメントという呼び名はたまたま付いたと考えた方が良さそうです。
いずれにしても今日の本題のセレナードというのは、もともと夜の野外パーティーなどの余興の音楽(BGM)として作られたものなので、モーツァルトの住んでいたザルツブルクの気候から考えて、夏の夜を涼しく快適に過ごす工夫が施された音楽と考えていいでしょう。
この曲の「ハフナー」というニックネームは、ザルツブルクの市長をつとめたことのある名門のハフナー家からの依頼で、その家の娘マリア・エリザベートの結婚式の余興の音楽として書かれたところから付いた。
ところで「ハフナー」という呼び名の作品はもう1曲あって、それはその6年後に、今度はハフナー家の当主ジークムント・ハフナー2世が貴族に列せられた時のお祝いの音楽がそれで、最初セレナードだったものを、交響曲に改めた。これが交響曲第35番「ハフナー」という訳です。
今日の「ハフナー」セレナードK250は、8楽章から成り、全体で60分近くかかる長大な作品。よっぽど宴会が長かったんだろうな。おそらくこれを繰り返し、繰り返し演奏したのでしょう。
さて第1楽章。「タァン、タラララン、タラララン」とひょうきんな、人を食ったようなファンファーレの後の序奏のメロディは、あの「フィガロの結婚」の冒頭のフィガロが伯爵をからかう「もし踊りをなさりたければ」そっくり。
また加速がかかって始まる軽快な主部の第2主題は「魔笛」のラスト、パパゲーノとパパゲーナが幸せ一杯に「初めにちっちゃなパパゲーノ(男の子)、お次はちっちゃなパパゲーナ(女の子)」と神様から授かったたくさんの子どもたちを引っ張り出す時のメロディそのもの。
どちらも茶目っ気たっぷりのモーツァルトそのもののような、全篇愉悦に充ちた音楽が展開されていく。「お気楽」モーツァルトの真骨頂のような楽しい楽章。
そのお気楽ムードは曲の最後まで続くのだが、つづく第2楽章から第4楽章まではバイオリン協奏曲風に、バイオリンの独奏の部分がある。おそらく当日のコンサートマスターが名人芸を披露して、お祝い、お祭りの雰囲気に華を添えるためのモーツァルトの粋な演出でしょう。
短調なメヌエットの第3楽章の後の、第4楽章ロンドがこの曲のハイライトです。
のちにクライスラーによってバイオリンの独奏曲に編曲されたので、「モーツァルトのロンド」という名で単独で演奏されるほど親しまれている。
小オーケストラの中を独奏バイオリンが、まるで蝶々がひらひら跳んでいるように、あるいは4/19付のブログに書いたモーツァルトのバイオリン・ソナタ第42番イ長調K.526 のように、オーケストラとかけっこするように、軽快な、お気楽な旋律を延々と弾き続けていく。
この「ひらひら」舞って「とことこ」駆けていく、気持ちいーいソロ・バイオリンの音色を聴いている頃には、ようやくお待ちかねの「おねむ」に入れるのではないでしょうか。
演奏は先日のNHK-FMでもやっていたカール・ベーム指揮ベルリン・フィルの1970年のものが、今聴いても新鮮かつ夜風のひんやり感が出た(?)演奏です。(Vnソロ:トーマス・ブランディス)(G MG-2402)(そう言えばカール・ベームのモーツァルト演奏は70年前後にベルリン・フィルと、そして70年代後半から80年代前半にウィーン・フィルと録音していますが、全体的に前者が硬質でクールな感じ、後者がソフトで暖かい印象がしますね。ベームの年齢も関係しているでしょうが…。)
もう一つ個性的なのが、古楽器演奏の先駆けコレギウム・アウレウム合奏団の同じく1970年の演奏。いつもながら残響豊かなドイツ、バイエルン州キルヒハイムにあるフッガー城の糸杉の間で、羊腸弦の古楽器で美しく、かつロマンティックに演奏されたレコードは私の大切な宝物です。(Vnソロはコンサートマスターのフランツヨーゼフ・マイヤー)(ULS-3127-H)
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「もし踊りをなさりたければ」と「パパパの二重唱」には、気づきませんでした。ところでコレギウム・アウレウムは聞いてみたいですね。一時、偽古楽と蔑まされた彼らの演奏、近年復権している感じでしょうか。数ヶ月前たくさんCD再発されましたよね。
2005/8/12(金) 午後 0:04
偽古楽の件、あまり知りませんでした。ただ彼らのサウンドが耳に心地よく、解釈はロマン的で聴いていて一番癒され、α波が出ます。他の最近の古楽器演奏はテンポが速くピッチは低く確かに古楽っぽいのですが、あまりサウンド的に楽しめません。CDも思わずモーツァルト関係は全部買ってしまいました。
2005/8/12(金) 午後 2:33
ふじさん、今NHK-FMでラドゥ・ルプーのピアノ・ソナタ13番を聴きました。やっぱりいいですね。この曲をもっともっと深く掘り下げてみたくなりました。
2005/8/12(金) 午後 3:18
何たる偶然!今僕も13番聞いています!レ・ミュジシャン演奏のP三1番の余白に収められたペヌティエの演奏(HMF)。意外にコレがいいんですよ!/ところでコレギウムの件、みんなそうだと思うんですよ。つまり本格的な古楽の登場で、一旦あれは偽物だという風になったんだけど、その「本物の」古楽が当たり前になってしまうと、あの心地よいサウンドが懐かしく思えてきた。あれはあれの良さがあったんだと。評論家でもそうだと思いますよ。あ〜僕もまた聞きたくなってきたなぁ。
2005/8/19(金) 午前 8:17
コレギウム・アウレウムの弾くモーツァルトのセレナードやディヴェルティメントをLPレコードで聴く。いろいろ試しましたが、これが一番α波が出て癒されますね。それから今シューベルトのピアノ・ソナタのCDを買って1番から聴いています。何しろ今までレコード1枚しか持っていなかったので。21番まで全曲聴くゾ!
2005/8/19(金) 午前 9:42
最近眠れなくて困っているんですが切り札があるといいですね!音楽を聴いて寝てみます
2005/8/19(金) 午後 6:32 [ - ]
まつもとさん、安眠のお役に立てるといいのですが…。「ゴルトベルク変奏曲」なんかどうでしょう?
2005/8/19(金) 午後 7:18
ゴルトベルク変奏曲ですか!?探してみます。学校の音楽で習ったぐらいの知識しかないので調べてみます
2005/8/20(土) 午後 5:42 [ - ]
原曲のピアノ、またはチェンバロもいいですが、弦楽合奏版も何か冷やっこくて眠りを誘いそうですよ。ワーナー・クラシックスのニュー・ベスト50という廉価盤シリーズ(\1050)から出ているゴルトベルク・ヴァリエイションズ(CD番号 WPCS-21209)です。
2005/8/20(土) 午後 8:41