クラシック歳時記in松本 (あるいはモーツァルトとともに1年を)

今春発売の内田光子/テイトのCDでようやく好きになれました・・・モーツァルト ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」

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4月16日(土)晴れ

 予想通りこの週末、信州松本は満開の桜、桜、桜…。午後は自宅から、湯川の土手の桜のトンネルをくぐって自転車で美ヶ原温泉(湯の原温泉)の「白糸の湯」へ。

 この湯川の桜は松本の隠れた桜の名所。桜の枝のトンネルでは時ならぬ突風で文字通り桜吹雪。そしてここからの北アルプス、とりわけ常念の眺めは、市街地よりも標高が高く、遮るものがない分、絶景だ。

 そして夕方は松本城へ。花見にお城にわざわざ行くのは生まれて初めて。何せこれだけ桜の満開と週末と好天が重なったのは、ちょっと記憶にない。

 さすがの「ずくなし」(信州の方言でめんどくさがり屋のこと。)の私もじっとはしておれぬ。6時頃、無料開放のお城の中の公園へ。アルプスのシルエットを背景に夕闇に浮かび上がるお城と桜の木。

 「清水へ祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢う人みなうつくしき」ご存じ「みだれ髪」の与謝野晶子の名歌だが、今日のお城の庭園内で会った人もみんないい顔をしていた。

 さて帰ってから何を聴こうか。最近お気に入りのモーツァルトのバイオリン・ソナタ第35番K.379を取り出す。クラシック音楽というのは何十年聴いていても、必ず新しい発見があって、厭きることがない。特に傑作揃いのモーツァルトがそうだ。

 これは昨年の夜のFM番組で堀米ゆず子が弾いていて、再発見した曲だ。43番まであるモーツァルトのバイオリン・ソナタの中で最高の曲、というより、全く他と隔絶した独自の世界を披瀝している。とにかくしゃれている。おしゃれでスマート。

 形式的には2楽章だが、第1楽章の長いアダージョの序奏は一つの楽章と考えてよく、そう考えれば、伝統的な3楽章スタイルのソナタだ。洒脱な洗練された印象はこの第1楽章の序奏部分と、第2楽章の主題と変奏(thema and variation)のせい。

 桜の花びらが風にのって軽々と舞い落ちるように、あっさりとモーツァルトは作曲したように聴こえる。モーツァルトの傑作というのは、この世の重力の法則からただひとり免れている感がある。質量がないのだ。

 それをひらひら浮遊する桜の花びらのイメージに重ねようとしたのは、ややこじつけかも知れないが、「春の風景にはバイオリン・ソナタがよく似合う」ということで、以前バロック時代からの代表としてヘンデルの4番を紹介したので、今日は古典派(ウィーン古典派)作品の代表として、この曲を紹介したい。

 蛇足ながらもう一つ。第2楽章主題と変奏の最後から2番目の変奏は、バッハの有名な「ゴルトベルク変奏曲」を思わせる書きっぷり。おそらくモーツァルトが先輩バッハを研究し、この曲から受けた影響の一つの成果ではないだろうか。

 もう一つ。よく「癒しのモーツァルト」とか「頭の良くなるモーツァルト」などと、最近では大脳生理学の発達と健康ブームでクラシック音楽の効能(脳にα波を出させる)が説かれ、その中でもモーツァルトの音楽が一番その効果があるといわれる。

 が、さらに私の経験上、そのモーツァルトの曲の中で、最も仕事の能率を高めてくれるBGMとしておすすめの曲。それがバイオリン・ソナタ集である。

 仕事柄、何回か徹夜をしなければならない機会があり、一晩中、クラシック音楽の入ったテープをとっかえひっかえ聴きまくったが、一番邪魔にならず、仕事の効率が上がったのが、バイオリン・ソナタ集であった。

 おそらくピアノとバイオリンという最小限の編成、それにピアノもバイオリンも一方的に自己を主張せず、お互いのパートナーの音をききながら対話しているある種の慎ましやかさが、聴く人に押し付ける感じを全く抱かせない、心地よいBGMになるからではないだろうか。

 そんな曲をお探しの方、是非一度お試しあれ。

 私の持っているレコードはヘンリク・シェリングのバイオリン、イングリット・ヘブラーのピアノによるモーツァルト・バイオリン・ソナタ全集からの1枚。(1972年録音)  (LP: PHILIPS SFX-9511〜13)
 
 シェリングについては、また稿を改め、ゆっくりと語る機会を持ちたいと思います。

 CDではグラムフォンのパールマンとバレンボイム1986年の演奏を聴いています。(UCCG-6034)

 
 
 

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