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8月4日(木)曇りのち雨
昨夜のヴィヴァルディを露払いとして、今日から夏の夜に相応しい曲を紹介していこう。
昼間の猛暑でヒートアップした身体と心を、クールダウンさせてくれるような涼しげな曲を。
第1弾はサン・サーンスの交響曲第3番「オルガン付」。
ムード音楽という批判もあるが、全体に大変弦のきれいな、ロマンティックで聴きやすい曲である。
サン・サーンスは19世紀後半にフランスで活躍した音楽家だが、「モーツァルトの再来」と言われる神童だった。
2歳6ヶ月でピアノを弾き始め、5歳でオペラのスコアを簡単に弾いてしまったという。11歳で公開演奏会を開き、13歳でパリ音楽院に入学した。しかしラベルと同じく、卒業時のローマ大賞は取れなかった。
しかし18歳でエリーズ・サント・メリー寺院のオルガニストとなりピアノ、オルガンの名手としても知られる一方、作曲家としても交響曲、器楽曲、歌劇とあらゆるジャンルの作品を多産した。
彼の才能は音楽のみならず、詩集、戯曲も発表し、哲学、美術、天文学にも精通していたというから、彼の86年の生涯は持って生まれた才能を遺憾なく発揮したものと言えるし、それに対しフランス政府も国葬をもって彼の死を悼んだということである。
この交響曲は1886年、ロンドンのフィル・ハーモニック協会からの依頼をもとに作られたのだが、サン・サーンスは尊敬する大作曲家にして大ピアニストのリストにこの曲を弾いてみせ、出版の際には「フランツ・リストの思い出に」と楽譜に記したという。(この2ヶ月後リストは世を去る。)
この交響曲の特徴は2つ。一つは無論オルガンを巧みに使って、その演奏効果を最大限に引き出していること。またピアノの連弾(4手)も入って、響きがとても華麗でゴージャスなこと。
もう一つは2楽章構成で、しかも先輩フランクの手法、すなわち循環形式を採っているため、曲全体の統一感があること。ただし2楽章といっても、それぞれが前半、後半に分かれるから、実質通常の4楽章の交響曲と考えてよい。
その第1楽章(第1部前半)と第3楽章(第2部前半)が良い。ともにアレグロ・モデラートで、一度聴いたらなかなか忘れられない旋律が続く。
第2楽章(第1部後半)はポコ・アダージョ。全体の緩徐楽章に当たる。ここで最低音で静かにオルガンが入ってくる。終始控えめなオルガンの通奏低音の上に、弦が極めて艶やかな旋律を奏でていく。
第4楽章は一転して、オルガンの勇壮で華やかな側面を前面に出して、大団円を迎える。最後の盛り上がりへ持っていく巧みな曲の構成力に、かつての神童の片鱗が窺える。
演奏はかつてはシャルル・ミュンシュの豪快な指揮(ボストンso 1959年)(R BVCC37162)、近年ではデュトワ指揮モントリオール響(1982年)(Dec UCCD5015)、チョン・ミュンフン指揮パリ・バスティーユo
(1991年)(G UCCG9453)などが定評ある。
が、私の聴いているのはLPの最後期に発売されたテラークというアメリカのレーベルから出たユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団のもの。(オルガン:マイケル・マレイ)(1980年)(TERARC 20PC-2008)(DG-10051)
この曲はパイプオルガン、ピアノといったゴージャスなサウンドを持つ曲だけに、録音の成否の影響が大きい。当然最近のCDに良い音が多いのだろうが、LPで聴くフィラデルフィア管の音も素晴らしい。当時「テラーク・サウンド」という言葉もある位、このレーベルの音は生々しく、弦が絹のようである。
この演奏に限らないが、この曲はオーケストラの音の華麗さを味わうのに最適な音楽のように思う。
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