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The Cat cher in the Rye brary
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イメージ 1【ザ・ロード】

空には暗雲がたれこめ気温は下がり続ける。目前には、
廃墟と降り積もる灰に覆われた世界が……。父と子は
ならず者から逃れ、必死に南への道をたどる。世界は
本当に終わってしまったのか?荒れ果てた大陸を漂流
する父子の旅路を独自の筆致で描く巨匠渾身の長篇。
ピュリッツァー賞受賞!『すべての美しい馬』
『血と暴力の国』著者の最高傑作。

BY BOOKデータベース

初コーマック・マッカーシー。どの著作を読んだらいいのかわからなかったので、
とりあえずピュリッツァー賞を獲った本書から読んでみることに。

舞台は近未来(定かではない)のアメリカで核戦争又は何かの致命的なことが起こり地球は
散々たる廃れた荒野へと化している。この二行を書いただけでもわかるように、この作品の
舞台設定や時代設定などほとんどのことが言及されておらず伏せられて話が進んでいくので、
そこらへんは読者の想像力に帰している。そして僅かに生き残ったであろう人々は動植物が絶えた
無政府状態の世界で飢えと戦いながら生き抜かなければならないのである。こんな過酷な中で
描かれる一組の父と子が主人公となっていて、終末世界を懸命に生きていくという終末SFモノで
ある。キングの『スタンド』はもちろん最近観た『アイ・アム・レジェンド』(地球最後の男)や
『北斗の拳』などもこの部類に入るだろう。終末SFモノはたくさん描かれていて飢餓、寒冷、病、
など終末SFの主要なテーマは描ききられた感があるが、これもその枠を脱しえないし新味はない。
しかし、隠し味はあってそれは父と子の鮮明な描写力とまだ見ぬ希望の南へと向かう起伏ある道中
であろう。残忍な<悪い人>たちと対峙したり数少ない食べ物を盗まれたりとギリギリに緊迫した
描写が伝わってくるし、何よりこの状況下で父と子の愛情・絆が読者を弾きつけてやまないだろう。
父の子に対する思いの強さゆえに鬼と化さねばならないその安楽のない毎日、飢えと緊張の連続で
痩せ細った子供が父との会話で見せる世界への不信と安堵。時折見せる子供らしい無邪気さがさらに
目頭を熱くするのを助長する。そしてなんといっても物語を進めるための文章が一番印象的で、すぐに
段落を変える短いそれぞれの文章が一種の詩を読んでいるかのような気分になる。そして、そのコロコロ
変える段落にときたま潜む前段落とは違和感のある不意の文章の登場。それは過去であり回想であり
宗教的哲学や深い思索へと繁栄させている表現方法はさすがピンチョンやエリクソンと並び称される
現代作家の筆致であった。そしてラストで見せる最大の山場は美しくて灰色の悲しみ満ちていて、
読後に微かな光を見るか闇をみるかは読者それぞれの感性に委ねられているのだった。

テーマは終末SFであるがカテゴライズするならむしろロード・ノヴェルといったほうが適切で、
その紡ぎだされる世界での恐怖感からホラー的な要素も伺えるピュリッツァー賞受賞も納得な秀作。

コーマック・マッカーシー 『ザ・ロード』 2008/06/25  ¥1800  早川書房
装画 : クサナギシンペイ    装丁 : 坂川栄治+田中久子(坂川事務所)   訳 : 黒原敏行

なむなむ!

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    これは今とても読みたい作品の一つです。
    コーマック・マッカーシーって前に聞いたことがある名前だと思っていましたが、「すべての美しい馬」の作者だったんですね。タイトルが印象的なので覚えていました。未読ですが、こちらもいつか読んでみたいです。

    ねこりん

    2009/3/4(水) 午後 8:46

    返信する
  • これは必読の本みたいですね。

    beck

    2009/3/4(水) 午後 11:40

    返信する
  • >ねこりんさん
    ねこりんさんも注目されてましたか。僕も「すべての美しい馬」や名前だけ聞いてましたが、どれを読んでいいのやら悩みました^^。運良くいい作品に出逢えたので嬉しかったです^^ねこりんさんが読んだ感想をお待ちしておりますね☆

    チルネコ

    2009/3/5(木) 午前 1:34

    返信する
  • >ベックさん
    なかなか読まされましたよ。ラストは灰色がかった美しさでした^^

    チルネコ

    2009/3/5(木) 午前 1:37

    返信する
  • 顔アイコン

    読んでみたいなぁ〜と狙っている作品です☆
    SFというよりロード・ノベルなんですね。ふむふむ!!

    ang*1jp

    2009/3/8(日) 午前 10:25

    返信する
  • >あんごさん
    マッカーシーさんのは初読でしたが、さすがの筆致でした。舞台設定はSFですが、その物語はロード・ノヴェルといった方がピッタリでしたよ^^

    チルネコ

    2009/3/9(月) 午前 0:16

    返信する
  • 前評判の良さを処々で聞いていたので、若干期待しすぎた部分はありましたが、じーんと余韻の残る良作でしたね。他の作品もぜひ読んでみたいです^^

    レイ

    2009/3/26(木) 午後 10:38

    返信する
  • >Tindyさん
    僕は前評判すらあまり知らなかったので、期待しなかったのが逆に良かったのかも(笑)この平坦な題材をここまで緊迫感を持続させたのはやはりマッカーシーさんの筆致のすごさだと思わされました^^他の著作も購入してしまいましたw

    チルネコ

    2009/3/27(金) 午前 0:29

    返信する
  • 忘れがたい物語ですね。静謐で残酷で灰色で。

    beck

    2010/6/28(月) 午後 11:15

    返信する
  • >ベックさん
    灰色の世界にポツンと置かれた親子の絆が印象的でしたね。僕はラスト光を見れることを想像してます^^TBありがとうございました。

    チルネコ

    2010/6/29(火) 午前 1:56

    返信する

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