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書庫ベートーヴェン(1)

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ロシアピアニズム名盤選というシリーズから、ベートーヴェンの最高傑作と云われている三つの後期ピアノソナタ第31番の感想を書こうと思います。31番が収録されているCDの多くが30、31、32の三つのソナタが一枚に収められているので、後期ソナタを取り出す時は必然的に三曲セットの通しで聴くのが個人的な慣例となっています。ですが、定期的に31番だけを無性に聴きたい気分になる時があるのです。それが偶然今日であったのであり、たまたま棚から取り出したのがヴェデルニコフでありました。

ヴェデルニコフは中国のハルビンで生まれ、ネイガウス門下の名ピアニストとして有名でした。ネイガウスが最も才能ある4人の弟子たちとしてリヒテル、ギレリス、ザークとともにヴェデルニコフの名をあげています。

ヴェデルニコフの31番を聴いているとこの豪華なピアニストたちと肩を並べる彼の姿が想像に難くないです。31番はとても叙情的なソナタですが深い精神性も感じれますし、しかるべき箇所で音符を一つたりとも取りこぼさぬよう丁寧かつ力強いタッチです。

この曲の終楽章のフーガ部分、ここが最大の聴きどころだと個人的にはおもっているのですが、「おっ、ベートーヴェン!」と感じる部分でもあります。この部分で蹟かれると余韻に浸れなくなってしまいますが、ここでもしっかりと強い指先メッセージが指先から送られてくる感覚もヒリヒリします。特殊な環境下で保持されたロシアピアニズムの一個性として大変興味深い演奏です。

1969年録音の音源ですが録音自体は悪くない、というか良い方だと思います。ですが、如何せんピアノの音色がお世辞にも良好とは思えません(シュナーベル盤よりは随分ましです)。高音がひび割れ気味で惜しい部分もありますが、〔演奏〕という観点から聴くと申し分のない音源ではないでしょうか。


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