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2010年05月

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 横長の、のっぴきならない窮屈な画面が、現実の墓を想起させる。生気を失ったキリストの屍。もはや何も見ていない白目がちの眼。早くも腐ろうとしている身体の先々。キリストの受難が、一個の人間の身に降りかかったものとしては決して美談ではなかったことを悟らせるリアリズム。「あの絵を見ていると、信仰をなくす人もあるかもしれない」と、ドストエフスキーが作中人物に語らせたほどの、すべての人間に避けようもなく訪れる、自然としての死の力。

 スイス、バーゼル美術館。

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 ホルバインの代表作として、よく教科書などに載っている絵。渡英先で描かれたもので、モデルの表情だけでなく、衣装や、背景のこまごまとしたものなど、すべてにわたって緻密に表現されている。が、私が印象に残っているのは、中央下の頭蓋骨のアナモルフォーシス。人物たちの邪魔をするかのように、びよーんと細長く伸びている物体は、斜めから見ると、れっきとした頭蓋骨になる。私ももちろん、図版を動かしてやってみた。本物を観るときにも、やってみるつもり。

 ロンドン、ナショナル・ギャラリー。

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 ハンス・ホルバイン(Hans Holbein the Younger)もドイツ・ルネサンスの画家。彼には同名の父親がいるが、子のほうが圧倒的に名声を得た。エラスムスに紹介され、ロンドンに渡ってトマス・モアのもとに身を寄せた彼は、宮廷画家となり、鋭い観察力と精緻な技巧でモデルの表情や装飾を描いた肖像画で活躍した。

 パリ、ルーブル美術館。

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 ルーカス・クラナッハ(子)(Lucas Cranach the Younger)はクラナッハの息子。父の工房に学び、父亡き後は工房を受け継いだ。多分意図的なものなのだろうが、彼の画風はあまりに父親に類似していて、何のインパクトもない。こうなると絵は職人芸。子は親の影となり、画家クラナッハをもう数年延命したということになる。

 ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク

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 クラナッハはこのテーマを何枚も描いている。「愚かな老人」というタイトルの場合もある。若いクラナッハ美人と明らかに年老いた男とのツーショット。娘は着飾っていて、老人のほうは裕福そうな衣装。二人とも顔や身体をやや前面に向ける形で抱き合っている。金目当ての若い美人に手玉に取られた老人の愚かさを描いているんだろうか。私としてはどちらも愚かに思えるのだが。

 ドイツ、デュッセルドルフ、クンストパラスト美術館(Museum Kunstpalast)。

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