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アカデミズムとラファエル前派とが融合したような、ビクトリア朝後期のこういう絵に登場する女性たちは、妖怪並みの美女揃い。規範の厳しかったイギリスならではの、反則すれすれの理想像だったようにも思える。画家たちの女性観とか、女性との実際の対他関係とかは、どういうもんだったんだろう。ちなみにコリアは、最初の妻と死別した後、妻の妹と結婚した。当時、許されざる結婚とされて、国内では挙式できなかったという。 |
ラファエル前派
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ラファエル前派 Pre-Raphaelitism
1848年、ウィリアム・ホルマン・ハント、ミレイ、ロセッティらが「ラファエル前派兄弟同盟」を結成したことが発端。
当時のイギリス画壇(ロイヤル・アカデミー)で支配的だった、ラファエロの絵画を模範とする慣習を退け、ラファエロ以前の素朴で誠実な絵画表現に理想を見出し、それへの回帰を主張した。
神話や聖書、アーサー王伝説などの中世史、イギリス詩や文学などの主題を、正確で細密に描くのが特徴。
アカデミーの様式に反対したラファエル前派だが、難解な画題を写実的ながらも、耽美的、理想主義的に、ロマンティックな演出をもって描く点は、実質上、アカデミズムと同じもの。両派は絵画上の特徴を共有し、ヴィクトリア朝後期の絵画の主流を形成した。
神話や文学を耽美的、幻想的に描く絵画理念は、アート・アンド・クラフト運動や象徴主義に影響を与えた。
代表的な画家は、ミレイ、ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、バーン=ジョーンズなど。
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この長い名前の女性は、ギリシャ神話中の人物。夫である、トロイア戦争でのギリシャ軍総大将アガメムノンを、凱旋の夜に、愛人と謀って殺害した。この絵はその直後のシーンだろう。愛人とともに夫を殺したせいで、悪女のように思われがちなクリュタイムネストラ。が、実際のところは、彼女欲しさに彼女と相思相愛の前夫を殺し、自らの失態の尻拭いに彼女の愛娘イピゲネイアを生贄にした、傲慢・強欲な夫アガメムノンへの、積年の恨みを晴らしたわけだから、それほどの悪女というわけでもない。 |
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この主題は、イギリスの有名な伝説。領主レオフリックの重税に苦しむコベントリー領民のため、妻であるゴダイバ夫人が、夫の出した条件を呑んで、白昼、裸で街を行進する。領民たちは夫人の名誉を重んじて、窓や戸を閉め切って家のなかに籠ったが、ただ一人、夫人の裸体を覗き見たトム(ピーピング・トム)は、神罰により失明した。ゴディバというと、有名なチョコレートのレーベル。ジョン・コリア(John Collier)はイギリス、ヴィクトリア朝後期の画家。 |
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ジョン・ラスキン(John Ruskin)はイギリス、ヴィクトリア朝の代表的な美術評論家。ラファエル前派を擁護した。画家でもある、と解説されているが、水彩やインクによるスケッチ的な絵しか見当たらない。が、どれも緻密なものばかり。彼の10歳年下の妻ユーフィーミア(エフィ)は、ミレイと出会って恋に落ち、夫との結婚が形ばかりのものにすぎないとして、結婚無効訴訟に出た。これは当時、離婚よりも不名誉なこととされ、物凄いスキャンダルとなったとか。 |
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ウィリアム・モリス(William Morris)はイギリスの工芸デザイナー。バーン=ジョーンズ同様、聖職者を志してオックスフォード大学に入学するが、そこでラスキンの影響を受け、バーン=ジョーンズとともにロセッティに師事。「モリス商会」を設立し、ステンドグラスやタペストリー、壁紙などを制作した。デザインの改良とそれによる社会改良を目指すモリスたちの運動は、「美術工芸(アーツ・アンド・クラフツ)運動」と呼ばれ、植物などの自然をモティーフにパターン化したモリスのデザインとともに、次世代アール・ヌーヴォーに大きな影響を与えた。この絵は、モリス唯一の油彩画らしい。 |




