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私は近藤先生の「水道の蛇口とざる論」を受け売りして、宅建試験の受験者の女性に説いた。その時英語の勉強に使っていた録音機を例に出して言った。
録音機に習う内容を吹き込んでください。それを車の中、家に帰っても聞いてください。やる気さえあれば3ヶ月で宅建試験は受かります。
高卒で法律書なんか見たこともない女性が猛勉強を始めた。講習会毎に顔を合わすとうれしそうだった。試験間近になると迫力が出てきた。
「毎日夜勉強するとき録音機に吹き込みます。その吹き込んだのを朝食を作るとき、主人と子供たちのお弁当を作るとき聞きます。職場へ行く車の中で聞きます。藤井さん、ついにはお風呂場へも持ちこみましたよ。少しずつ法律が分かってきたわ。藤井さん誘ってくれてありがとう」
合格のお祝いにご自宅を訪ねると「私の人生観が変わりました。最初藤井さんの話を聞いたときうまいこと言っているわ。思っていたけど実行して素晴らしかった。録音機もだけれども最後には本もお風呂に持ち込んだのよ。ビニールに本を包んで読むの。私長風呂だからちょうどよかったわ」
中学・高校生の受験生を相手にする仕事を始めてからこの話をよくした。
ある年、高校3年生が10月になっても緊張した勉強が見られない。ウォークマンを買って歩く間も勉強する様に訴えた。次回の教室では3分の2の生徒が歩きながらも勉強するようになっていた。ある生徒が12月の全国模試で上智大学のフランス語科の最終判定がEだという。「水道の蛇口とざる論」と風呂でビニールに本を包んで読んだ話をした。次週、その生徒が言ってきた、「いま単語カードを風呂に持ちこんで覚えています。風呂ではカードは100枚単位だとくっついて離れないので10枚ずつくらいに小分けにしたほうがいいですよ」と報告してくれた。
それを横で聞いていた北大志望の生徒が驚いた。センター試験がよくできて2次をまたずもう受かった気分になっていた。
「センターがよかった者の方が危ないんだ」と言っても平気。「センターが悪かった人はこれ以上の努力をしたら君なんか吹っ飛ぶぞ」と訴えた。
その生徒も次週には「風呂でカードを使っています」と言った。
最初の生徒は、学校の先生の予想に反して上智の仏文に合格。あとの生徒は北海道大学に合格。
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