山のあなた カール・ブッセ 上田敏訳 『海潮音』より
山のあなたの空遠く
「幸(さいわい)」住むと人のいふ。
噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く「幸(さいわい)」住むと人のいふ。
Over the mountains
Over the mountains,
far to travel, people say,
Happiness dwells.
Alas, and I went,
in the crowd of the others,
and returned with a tear-stained face.
Over the mountains,
far to travel, people say,
Happiness dwells.
カール・ヘルマン・ブッセ(Carl Hermann Busse1872年11月12日 - 1918年12月4日)は、ドイツの詩人・作家。
プロイセンのポーゼンに生まれ、新ロマン派に属した。ヘルマン・ヘッセの詩才を高く評価し、ヘッセの『詩集』を、自ら編集する「新進ドイツ抒情詩人」シリーズに加えている。
日本では、上田敏が1905年(明治38年)に訳詩集『海潮音』に収めた「山のあなた(Über den Bergen)」で知られる。
上田の名訳もあって「山のあなた」は国語教科書にもたびたび取り上げられた。
とくに冒頭の一節は、2代目三遊亭歌奴の新作落語『授業中』のネタにされたことから広く知られるようになり、ブッセの名はドイツよりも日本で有名、とも言われる。
なお、オトマール・シェック、アルバン・ベルク、下総皖一がこの詩による歌曲を作曲している(下総は上田敏訳による)。
<私の思い出>
中学・高校時代北陸の曇天が嫌いだった。
いつでも灰色の雲に覆われて陰鬱な青春を更に周りの環境がよどんだものにしているように思えた。
この曇天を抜け出し、カラット晴れあがった表日本へ行けば素晴らしい未来が待ち受けてくれているように思えた。
カール・ブッセのこの詩を「海潮音」で見つけて以来、いつでもこの歌は私の心の中で高鳴っていた。
いまでも。
やっぱり、まだまだ幸せお求めつづけたい。
2008年3月26日 藤井靖志
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