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涼を継ぐ 日光天然氷物語<2>極寒の採氷池 真心込めて2週間
緑深い山道を進むと、急に視界が開けた。目の前に小学校のプールほどの大きさの池が二つ。「関係者以外知らない、とっておきの所だよ」。四代目氷屋徳次郎こと山本雄一郎さん(59)が笑う。せみ時雨が響く日光・鳴虫山のふもと。この採氷池が、天然氷が育つ場所だ。
岩肌から染み出すわき水が、イワナが泳ぐほど清らかな沢となって池に注ぎ込む。太陽の通り道を杉が覆い隠し、冬はずっと日陰。五十年前、三代目吉新良次さん(72)の代から続く理想の場所で清水は氷に生まれ変わる。 「待っているだけではいい氷はできない」。山本さんが力を込める。極寒の季節、氷が張ると、毎朝四時からほうきを手に表面のほこりや落ち葉を掃き出す。雪が降ると氷が解けるので、一晩中でも掃いて取り除く。つらい仕事だが、「夏に氷を食べてくれる人の笑顔を思い浮かべれば頑張れる」と胸を張る。 こうして二週間。ゆっくり凍らす間に不純物は底に沈み、透明で硬い天然氷ができ上がる。厚さ十五センチになると電動のこぎりで切り出し、四千枚百六十トンの氷板にして氷室へ運ぶ。 ただ、苦労が報われない時もある。暖冬の影響で二〇〇九年に採れた氷は例年の半分だった。「お天道様にはかなわないが、地元日光の観測記録では、この三十年で四度も気温が上がった」。自然と向き合う日々の中で、地球温暖化を敏感に感じ取る。 それでも今年の氷は上出来だった。「いい氷にはね、木の年輪と同じで毎日できる日輪があるんだ」。山本さんの言葉に氷板をのぞくと、確かに無数の層が積み重なっている。その一層一層に、自然とともに生きる職人の真心がこもっていた。 |

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