涼を継ぐ 日光天然氷物語<3>先人の知恵 1000年超え 木の香りに包まれて、夏の主役たちが出番を待っていた。 日光・鳴虫山のふもと。採氷池の隣にたたずむ小屋が、四代目氷屋徳次郎・山本雄一郎さん(59)が天然氷を貯蔵しておく氷室だ。 扉をくぐれば、ひんやりした涼しさが肌を包み、目の前に背丈より高く日光杉のおがくずが積もる。
「この中に二月に採れた氷が入っている」と山本さん。
スコップで掘り出すと、白い冷気がさぁっと足元をはうように広がり天然氷が姿を見せた。
室内にわずかに漏れる陽(ひ)の光を受けて輝く結晶は、まさに宝石のようだ。 おがくずは解け出す氷の水分を吸い取り、空気中に蒸発させて熱を逃す。
冬の氷を一年中もたせる氷室は、自然の冷凍庫。「このやり方は千年以上も変わらないんだ」と山本さんが教えてくれた。 氷室の歴史は古い。
日本書紀にも登場し、平城京跡では、奈良時代の宰相長屋王が氷室を構えていたことを示す木簡が見つかった。
かの清少納言も枕草子で、氷を「あてなるもの(上品なもの)」の一つに挙げ、こう表現している。
「削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺(かなまり)に入れたる」 削った氷につる草の甘い汁をかけ、銀杯に盛る−。
作り方が変わらないとすれば、宮廷の貴族がめでた味も今と同じか。
ぼんやり考えていると、山本さんと一緒に働く長男の仁一郎さん(35)が笑いかけた。
「先人の知恵ってすごいですよね。
氷を造っていると、そんな歴史のロマンも感じる」 おがくずをきれいに洗い流され、きらきら光る透明な天然氷。
半年の眠りから覚め、全国へと旅たつ。
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