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空の薄さに木霊する
海の鈍さに沈みゆく
地平つれづれに蠢き
涙なからんと懐探る
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詩
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聖筆 あの人はわたしのすぐ横を 何食わぬ顔で通り過ぎた その上わたしのことを 誰かと間違えもした 助けて欲しいと叫んでいた日のことを 誰かが告げ口でもしたのでしょう あの人が眩暈い探し続けていたことを わたしは知っている 夕暮れカラスが鳴くビルの屋上を 満潮の頃島と街を結ぶつり橋の上を そう危ないところばかり 最後はわたしが突き落としたから きっともう死んでしまった うっかり 日記を書き連ねた 室外機が泣いている 狭くて暑いベランダで |
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僕は喋れなくなってゆく 喋れなくなったカモメの話をしましょう カモメは喋ったりしない? いえいえ、カモメは喋ります 喋れていたのかもしれない あるいは喋っていたことにします または喋るものでした そんなふうに空を回遊している カモメは喋れなくなったのです 空を眺めているとあのカモメは 喋れなくなってしまったのだと 思えるようになりました 喋るカモメを見たことはないけれど カモメは喋れなくなったのです 喋れなくなったカモメの姿は 喋れないことこそ最も美しい とでも言いた気です カモメは嘘をついています カモメは喋れなくなったのです 喋れなくなったカモメを とても美しいと思う僕は カモメと僕の距離の分だけ とてもお喋りです 回遊するカモメは太陽と 溶け合っています |
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刹那 男は血の滴る男根をなぞった 女は乾いたブーケを粉々にした 二人はずっと手を繋いでいた 薄暗いバスの中で 話しもしないで 無表情のままで 愛を指先で伝えて 互いの思考は置き去って 誰かがおしゃべりをしているバスの中で 学生が本を読むバスの中で どっぷりと夜に浸かるまで バスが故郷へ辿り着くまで 何度も生まれ変わり再び出会う日まで 男は人差し指の動きを止めた 女は時計の音を聞くのを止めた 二人は一億年に流れた 朝が来なかったはじめのうち 二人はずっと手を繋いでいた 雲の変容は自由ではなかった 無為は繋いだ手を一つにした 浜辺の砂が身体を埋めた頃 二人はずっと手を繋いでいた 一つになった手は無くなった 一つになった肩は無くなった 一つになった無為が無くなった最期 二人はずっと手を繋いでいた 二人はいなくなった 一億年を流れ着いた二人は ずっと手を繋いでいた 迷い込んだ蛾の影も飛ばないバスの中で 夕暮れのバスの中で 男は今日を捨てた 女は明日を夢見た |
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春の笑顔 |






