子育て支援 | 智頭病院 小児科|2013年度末までの内容

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鳥取県立中央病院周産期センター
        における母乳育児支援


温故知新 : 自身の中病勤務時代に、全出生児を小児科で診るようになり、産科病棟の看護師・助産師の皆様の熱意・願いを受けて、BFHに向けた取り組みを推進しました。その後、胎児・新生児を取り巻く環境は、総合的な見地でとらえると、悪化していると言わざるを得ません。温故知新の観点からブログ化しました。当時の取り組みが参考になれば幸いです。


♪ 【原著】鳥取医学雑誌.26:186−190.1998.

♪ キーワード:母乳育児,母子同室,早期直接授乳,母子相互作用


は じ め に
♪ 哺乳動物である人間の新生児にとって,母親による母乳育児は生物学的当為1)である.母乳の持つ免疫学的な利点,乳首を介した母子相互作用2)など,論点は多々あるが,新生児にとって最も自然な栄養であることは間違いない.
♪ 一方,今日,子どもたちの育つ環境は劣化している.これを象徴する用語を列記すると,子育て体験の乏しい親,核家族,地域の子育て機能の低下,テレビゲームなど疑似体験の多い遊びと実体験不足,社会適応能力の低下,犯罪的行動など,実に多様である.
♪ 周産期センターの直接的な機能は,地域的なハイリスク新生児医療のシステム化3,4),3次救命救急医療にある.一方,ハイリスク新生児として出生しないことが本質としてあり,このための健康教育の役割も,今日的な課題である.それは,ハイリスク新生児との医療場面に,日夜,取り組んでいる医療者であるがゆえの健康教育の重みもあろう.また,新生児は社会的弱者であると考える.大人,医療者の観点からのみではなく,新生児の願いを支援する視点からの大人社会への啓発・健康教育5)も必要になろう.
♪ 当院周産期センターでは,WHO(世界保健機関)・ユニセフ(国連児童基金)が主催し,厚生省と日本医師会が後援している母乳育児支援に取り組んでいる6,7).今回,母乳育児支援の状況について検討したので報告する.


対象・方法
♪ 1995年に,当院で466例出生した.このうち,早期産ないし低出生体重児を除いた例,即ち,在胎週数37週以上で,かつ,出生体重2,500g以上の出生は393例あった.このうち無作為に100例を抽出し,以下の諸点を検討した.なお,対象とした100例と,残りの299例の在胎週数には,有意差がなかった(表1).
イメージ 1
♪ WHO・ユニセフは「母乳育児支援の十箇条」を提唱1)しており,この中に「生後30分以内を目標とした早期直接授乳機会」がある.授乳開始時期については,今回は出生後60分以内の直接授乳(以下,早期授乳)の有無を検討した.また,出生後24時間までの授乳回数,最低体重と日齢,退院時体重と日齢,退院時の栄養方法,および,これらに関わる帝王切開などの母体要因,NICU入院の有無などの新生児要因を検討した.出生後24時間までの授乳回数の把握は,看護婦が母に説明し,母と看護婦が記載した記録に基づいた.この記録には,授乳時刻,時間や糖液・人工乳の補給や,扁平乳頭の際に用いる保護器使用の有無などの情報が記載されている.
♪ 以上を基に,1 早期授乳機会の有無,2 生後24時間以内の授乳回数,3 栄養法に関わる諸因子,4 退院時栄養法について調べた.


結   果
1 早期授乳機会の有無
♪ 対象100例のうち,帝王切開での出産の有無,NICU入院の有無で分けて,早期授乳機会を検討した(表2).
イメージ 2
♪ 帝王切開群(以下,C群),NICU入院群(以下,N群)とC群,N群に該当しない例を健康群(以下H群)とすると,H群は64例64%で,このうち母親が早期授乳できた例(新生児からすれば,出生後60分以内に直接哺乳できた例)は,58例,90.6%であった.
♪ 残り6例の内訳は,アプガー1点の重症仮死で出生し,直ちに小児科医が気管内挿管し,蘇生され,速やかに回復し,NICU入院に至らなかった1例,双胎で他児に遅れて62分で直接授乳に至った例,出生後低体温があり99分で直接授乳に至った例,その他理由不明で開始が60分以上であった3例であった.
♪ 理由不明の3例は,各々77分,83分,99分で開始されていた.C群には早期授乳例はなかった.
♪ N群では,早期授乳例は,17例中15例88.2%であった.早期授乳に至らなかった2例は,出生後2時間強と4時間弱の授乳開始で,いずれも光線療法を施行されていた.なお,帝王切開で出生し,かつ,NICUに入院した3例はいずれも早期授乳機会はなかった.
2 生後24時間以内の授乳回数
♪ 8回以上の授乳例(表3)は,対象100例中56例56%で,10回以上の例が28例,最多は20回であった.H群64例中では41例64.1%,C群16例中2例12.5%,N群17例中1例64.7%が,生後24時間までに8回以上の授乳を達成していた.
イメージ 3
3 栄養法に関わる諸因子
♪ 早期授乳機会に続く早期母子同室への移行が遅れた例は,帝王切開例以外では81例中7例7.9%あった.遅滞した理由には,双胎例,高度難聴で分娩後の母の疲労が強かった例,絞扼輪症候群の新生児例,重症仮死で蘇生後母子同室まで経過観察を必要とした例,母子室が満床でなかった例があった.
♪ 母親の乳頭に関しては,扁平乳頭・乳首が短いや,逆に巨大乳頭など,新生児が哺乳する上で支障があるとされた例が9例あり,このうち4例がNICUに入院していた.
4 退院時栄養法
♪ 母乳栄養は,全体100例中91例,91%で(表4),混合栄養が8例,人工栄養が1例であった.人工栄養の1例は,出産後3日目,母体がDICで死亡していた.
イメージ 4
♪ H群は64例中61例,95.3%が母乳栄養で,混合栄養が3例であった.混合栄養となった3例は双胎例と,母親に高度難聴があり疲労を訴えた例であった.
♪ C群16例中14例,87.5%が退院時母乳栄養であり,2例が人工栄養であった.この2例は双胎例であった.
♪ N群は17例中14例,82.4%が母乳栄養であった.混合栄養で退院した3例の背景として,母親37歳,前回母乳分泌不良があった.N群では新生児高ビリルビン血症に対する光線療法入院であり,入院日は,日齢2に5例,日齢3に7例,日齢4に4例,日齢5に1例であった.


考   察
♪ WHOとユニセフが提唱する「母乳育児を成功させるための10カ条」は1989年3月に発表され,山内1)が紹介している.その後,ユニセフ提供日本語版ポスターには,「この10カ条は,お母さんが赤ちゃんを母乳で育てられるように,産科施設とそこで働く職員が実行すべきことを具体的に示したものです」の説明の後,表5に示した10項目が示されている.
♪ この中で,従来の方向性を一転させたのが,生後30分以内を目標とした早期授乳機会である.この根拠には,出生後2時間程度は新生児が覚醒状態にある8)ことも,早期授乳を促進する根拠となり得たであろう.
♪ 実際,出生に立ち会うと,生まれて間もない新生児は覚醒し,小生を追視しているのも確認できる.ベッドに横たわった母親に抱かれるようにして母親の乳首を吸い続けるのである.
♪ 我々は,いわば手探りの状態から当院における導入がスタートしたが,今回の集計は,出生後60分以内で母親の乳首を吸いはじめたか否かを記録に基づいて検討した.この体験に基づいた母親の気持ち9)は予測を越えて,積極的・能動的であった.
♪ 今後は,WHO,ユニセフの提唱通りの30分以内の事例を含めて,数を増やし,かつ,経年的に検討を進めたい.
♪ なお,1995年に当院における全出生数466例の15.7%を占めた37週未満,2,500g未満の新生児の栄養に関しては別途検討したい.
 
♪ 退院時の栄養法が,その後における栄養法に大きく影響している5)ことから,出生後数日間における母子関係のあり方が重要になる.
♪ 今回の100例を抽出した検討結果から,退院時完全母乳栄養の割合は90%を越えており,人工乳は母親が死亡した1例のみであった.帝王切開で出生した例においても,完全母乳栄養での退院が87.5%であったことは特筆できよう.
♪ 一方,当院では母子分離状態で,NICUにおける光線療法を施行している.母乳分泌が高まる生後2〜4日に,光線療法を受けた群の母乳栄養率は82.5%に留まった.光線療法の適応に至る要因は多々あるが,母乳分泌不良も一因である.光線療法を受けた新生児の母親の乳首が扁平であるなどの問題も見出せた.
♪ これに対しては,看護職員が適切な乳頭管理技術を提供していくこと10)が求められよう.また,母乳育児を継続する観点からは,光線療法を安全で,かつ,母子に優しい方式を開発するなど,今後の課題として残った.
 
♪ WHO,ユニセフは,母子が健康な場合,即ち,医学的な必要性がない場合は,安易に糖液の補給を行わないことも勧告している.健康な状態の母子にとっては,従来,安易に糖液や人工乳が与えられてきた経緯からすれば,これらの補給を避ける勧告は当然であろう.
♪ 一方,糖液を与える医学的な適応基準をいかにするかについての課題もある.今回は検討対象外としたが,出生体重2.5kg未満の低出生体重児,母子同室を導入した不当軽量児や巨大児,母体糖尿病児が相当する.この他,経過中に体重減少が10%前後に至った例,母の扁平乳頭があって保護器を用いている例,帝王切開での出生例や母体の疲労が目立つ例などである.
♪ さらに,どの時期から,どの程度の量を,どの程度の期間,糖液を補給するかの課題もある.最終判断は,休日を含め,日々回診する小児科医に判断が委ねられている.
 
♪ WHO,ユニセフが提唱する母乳育児支援(表5)の導入のためには,産婦人科医,助産婦,産科病棟看護婦と小児科医が連携し,小児科医に新生児管理責任が委ねられる体制において,新生児から乳児へと,前方視的に育児支援に関わることになろう.この点で,当院では,産婦人科側が母体に含めて新生児も診る旧来的な体制を,周産期センターに移行する時期に一致して論議し,今日の体制が導入されたことが底流にあった.
♪ 母子にとってやさしいあり方,順調な子育て・親育ちの出発点としての,出産施設における,生後30分以内を目標とした直接授乳機会,母子同室制,自律哺乳などのWHO,ユニセフが提唱する母乳育児支援(表5)が,社会一般にも受け入れられ,普及・定着することを願う.


結   語
♪ WHO,ユニセフが提唱している10カ条(表5)を基本指針とした当院における母乳育児支援の成積について検討した.1995年1年間に当院で出生例の中から在胎37週以上,出生体重2.5kg以上の中から無作為に100例を抽出し,出産後早期(60分以内)直接授乳機会,生後24時間以内の授乳回数,退院時の栄養法等を検討した.
♪ 出産後早期直接授乳機会は,100例中73%に提供できた.健康群,即ち,帝王切開例ないしNICU入院例を除いた64例中では9割を越えていた.生後24時間以内の授乳回数が8回以上であったのは,全体で56%,12回以上の例が10%強あった.健康群64例では6割を越えていた.
♪ 退院時の栄養法は,完全母乳栄養が9割を越え,人工栄養は母体が死亡した1例のみであった.健康群では,64例中61例95.3%が母乳栄養であった.
♪ 以上の成積に関わる諸因子についても検討し報告した.


文   献
1)山内逸郎:Rooming-in に思う.助産婦雑誌.43:1016−1019.1989.
2)小林 登:周産期医療の人間化.周産期医学.18:5−6.1988.
3)大谷恭一,中船えみ子,西尾巳和子 他:鳥取県東部地域における新生児医療地域化−母体搬送例の検討−.鳥取医誌.20:288−290.1992.
4)大谷恭一,常井幹生,星加忠孝 他:鳥取県東部地域における周産期医療地域的システム化の現状.鳥取医誌.22:119−124.1994.
5)大谷恭一:母乳育児の動向.鳥取医誌.鳥取医誌.26:180−185.1998.
6)大谷恭一,中船えみ子,西尾巳和子 他:周産期管理における母子同室制の検討.鳥取医誌.20:257−261.1992.
7)大谷恭一:総合病院における出産前小児保健指導の実際.周産期医学.24:712−716.1994.
8)山内逸郎:小児科医へのアドバイス(3)母乳育児.小児科診療.56:1934−1935.1993.
9)大谷恭一:鳥取県立中央病院における「母子同室制と母親の気持ち」に関する検討.鳥取医誌.26:191−195.1998.
10)山内芳忠:母乳哺育を成功させるための工夫.周産期医学.26:514−518.1996.
著 者:大 谷 恭 一 (鳥取県立中央病院 周産期センター・小児科 当時)


< 追 記 >
♪ 本稿は鳥取県医師会が発行している鳥取医学雑誌に原著論文として掲載(鳥取医誌.26:186−190.1998.)されたものです。
♪ 鳥取県立中央病院(中病)は、2002年、自治体立病院としては全国で最初に“赤ちゃんにやさしい病院・BFH”に認定されました。
♪ BFHは、“Baby Friendly Hospital”の略で、ユニセフ・世界保健機関(WHO)が進めているものです。



鳥取県立中央病院における   
「母子同室制と母親の気持ち」
           に関する検討


温故知新 : 自身の鳥取県立中央病院(中病)勤務時代に、全出生児を小児科で診るようになり、産科病棟の看護師・助産師の皆様の熱意・願いを受けて、BFH(:ユニセフの Baby Friendly Hospital 「 赤ちゃんにやさしい病院」)認定に向けた取り組みを推進しました。その後、胎児・新生児を取り巻く環境は、総合的な見地でとらえると、悪化していると言わざるを得ません。温故知新の観点から、ブログ化しました。参考にしていただければ幸いです。
(前 小児科部長 ・ 元 周産期センター長)


【原著】鳥取医学雑誌.26:191−195.1998.♪ キーワード:母乳育児支援,母親の気持ち,地域,生涯学習,アンケート調査


は じ め に
♪ 鳥取県立中央病院(以下,当院)ではWHO,UNICEFが主催し,厚生省・日本医師会も後援している導入している「母乳育児を成功させるための10カ条」に準じて,生後30分以内を目標とした最初の直接授乳場面に始まる母子同室制・母乳育児支援1〜4)を導入している.

♪ 今回,当院における母子同室制・母乳育児支援を経験した母親に対してアンケート調査を施行した.調査目的は,母親の気持ちを検討し,母子支援体制のあり方を客観的評価することにあった.


対象・方法
♪ 1994年に当院で出産した鳥取県東部地域在住の母親を対象として,1995年11月に調査用紙を郵送し,返信封筒で回収する方式のアンケート調査を記名式で実施した.調査時,新生児は10か月から1歳10か月になっていたことになる.
♪ 調査票の送付に関しては,新生児が死亡したり,基礎疾患を有し治療を継続していると分かっている例と,多胎例,かつ,未熟児などで母親の乳首を吸う機会が日齢2日以降になった例を除いた.よって,計197例について送付した.
♪ 調査項目は,性別,出生順位のほか,下記の諸項目とし,下記の各々の組合せで集計し検討した.また,帝王切開の有無,NICU入院の有無など関連する周産期項目を診療録で確認した.なお,重複を避けるため,各々の回答選択枝は割愛し,結果において示した.
「乳首をはじめて赤ちゃんに含ませたときの気持ちは?」
「生後30分以内を目標にした最初の直接授乳場面(母と子の触れ合いの場面)について,今,いかにお考えですか?」
♪ 上記の回答を,分娩室での最初に授乳機会の有無で検討した.
「これまでの育児は楽しかったですか?」
「今,子育ては楽しいですか?」
♪ 上記の回答を,完全母乳栄養の期間が“長期間”との回答群と“一時的”あるいは“なし”の群で検討した.
「母乳育児に関して,結婚までに講義,研修会,体験等の機会がありましたか?」

♪ なお,結果についてはχ検定を施した.


結   果
♪ 197例中,120例分を回収し,回収率は60.9%であった.回収状況は,性別には差がなかったが,出生順位では第1子の回収率が低く(p<0.05),とくに,男の第1子の回収状況が劣っていた (表1).
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♪ 分娩室における最初の授乳3,4)を96例,80%の母親が経験していた(図1).
イメージ 2
♪ 非経験者の内訳は,帝王切開での出生12例,NICUへの入院が12例,計24例であった.「乳首をはじめて赤ちゃんに含ませたときの気持ち」は,以下の10項目のキーワードを複数回答する形式とした.「快感」「幸せ」「安心」「安らぎ」「ほのぼの」「不快」「不安」「こわい」「緊張」「はずかしい」のうち,分娩室における最初の授乳経験者と非経験者で有意差がみられた項目があった.
♪ 「安心」「ほのぼの」は経験者に有意に多く,「こわい」「緊張」「不安」は非経験者が有意に多かった.
♪ なお,「幸せ」は,経験者と非経験者が,共に最も高率で回答しており,「安らぎ」が次いで高率であったが有意差はなかった.
♪ 逆に,「快感」「はずかしい」は,有意差はなかったが,各々非経験者が経験者の約2倍を占めていた.
イメージ 3
♪ 「生後30分以内を目標にした最初の直接授乳場面(母と子の触れ合いの場面)について,今,いかにお考えですか?」では,分娩室における最初の授乳経験者の45.7%が“強く希望したい”と回答し,“希望したい”と合わせると92.4%を占めた(図2).
♪ 逆に,非経験者は“強く希望したい”は18.2%に留まり,“どちらでも良い”22.7%と“止めてほしい”4.6%を合わせると27.2%が消極的意見を回答していた.
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♪ 「これまでの育児は楽しかったですか?」については,完全母乳栄養の期間で分けて集計した(図3).
♪ 即ち,実際の期間(月数)ではなく“長期間”と感じていた母親は,“一時的”ないし“なし”の母親に比べて,「これまでの育児が楽しかった」の回答が41.7%を占めており,逆に“一時的”ないし“なし”の母親は「大変だった」を29.6%が回答しており,“長期間”との間に有意差があった.
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♪ 「今,子育ては楽しいですか?」についても,完全母乳栄養が“長期間”であったと答えた母親の73.3%が“楽しい”か“楽しい方だ”と回答した(図4)が,“一時的”ないし“なし”の母親は14.5%が大変だと回答しており,有意差があった.
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♪ 「母乳育児に関して,結婚までに講義,研修会,体験等の機会がありましたか?」には119人が回答した(図5).
♪ “なかった”が104人,87.5%と最多であった.“あった.受けた”の回答は5名,4.2%であった.
♪ 5名中,看護婦,保健婦が各々2人で,学生時代にその機会があったと回答し,あと1人は「保健婦の親友があり彼女から学んだ」と回答していた.
考   察
♪ 周産期医療の「人間化」5)が唱えられ,また,WHO,ユニセフが母乳育児支援の方法を提唱し,厚生省・日本医師会もこの活動を後援している情勢6)にある今日である.鳥取県東部地域の周産期センターとして機能している当院7,8)においても母乳育児,母子支援の体制を育み,実践してきた1〜4).
♪ 周産期センターの役割・社会的ニーズは,母子の健康障害を来しかねない出産に対して,適切な医療支援を即時提供し得る地域医療体制7,8)を保証するとともに,一方では,出産後・出生後に母子が健康な場合には,より人間的な触れ合いの機会を尊重した母子支援・家族支援の提供をすることにあろう.本来,家庭的な重大事であった出産・出生の過程が,家族生活から分離され,医療施設において行われていることの認識も欠かせない.少子社会ゆえに,今後,地域の母乳育児サークル,市町村の子育て支援事業などとの連携もと含めて,母子支援の展開が重要になってこよう.
♪ 今回,アンケート用紙の回収状況を分析すると,男児,とくに,男の第1子を育てている母親からの回収率が劣った(表1).子育てに追われ,出産後を振り返るアンケート調査に回答する時間もない,といった状況であろうか.育児全般,あるいは,母乳育児を支援する地域的支援体制を構築する上で配慮すべき点だと考える.
♪ 当院(中病)ではWHO,ユニセフの提唱する出生後30分以内を目標とした分娩室における最初の授乳1,3,4)を8割の母親に提供できていた(図1).周産期センターにおける実践であるため,母体要因では帝王切開により出産後早期の授乳機会が提供できない例や,未熟児などで出生後早期の直接授乳が出来ない例の占める割合は,今後も同様に推移するであろう.
♪ 「乳首をはじめて赤ちゃんに含ませたときの気持ち」に対する回答(図1)は,単に母親の知識ではなく,体験に裏づけられたものであるがゆえに重みがある.「幸せ」は,分娩室における最初の授乳経験者と非経験者が,共に最も高率で回答しており有意差がなかった.最初の直接授乳に関するイメージとして共通の感情といえようか.今後,父親や一般人に対する同様のアンケート調査も実施してみたい.
♪ アンケート回答数は,全体で120例に留まったが,この設問に対する回答で「安心」「ほのぼの」が,有意差を持って経験者に多かったこと,「こわい」「緊張」「不安」が非経験者に有意に多かったことに注目したい.当院で妊娠期の健康管理を受けてきた体験者・未体験者は,共に妊娠中期の母親学級において,小児科医から文字,言葉により,即ち,知識として,母乳育児について学んでいる1,2)が,体験に裏づけられた今回の結果は,分娩室における最初の授乳機会支援を推進していく上で,重要視したい.今後,この追試を試みるとともに,出産に直面していない結婚間もない夫婦,生徒・学生,一般社会人に対しても同様のアンケート調査を通じて,啓発活動・社会教育にも役立てることが出来よう.こうした活動も,地域の子育て支援や生涯学習に関わる組織との連携があって効果を高める.地域における子育てに関わる多様な問題が噴出している昨今であるがゆえに,社会小児科学的見地からしても重要と考える.
♪ 生後30分以内を目標にした最初の直接授乳場面についての考え(図2)では,その経験者が有意に多く「強く希望したい」と回答していた.逆に,非経験者のみ「止めてほしい」の回答があったことも,体験の重要性を示唆していよう.
  完全母乳栄養の期間については,具体的な月数や現状を尋ねるとともに,“長期間”と感じているか,“一時的”あるいは“なし”と感じているかについても尋ねた.結果には示さなかったが,完全母乳栄養の持続期間,即ち,持続月数ないし継続中の月数は,感覚としての“長期間”と“一時的”の間に逆転現象もあった.
  母乳育児が“長期間”であったと回答した母親は,「これまでの育児は楽しかったですか?」と「今,子育ては楽しいですか?」の両項目において「楽しかった」が有意に多かった.逆に,“一時的”ないし“なし”の母親は「大変だった」「大変だ」が多かった(図3,図4).母乳育児の重要性を確認出来る結果であった.
♪ ただし,母乳育児が持続できない各種の要因を考慮する必要性がある.即ち,母乳育児を継続でき得る,乳児の健康状態,育児に専念できて,援助者にも恵まれているなどの家庭的な因子や,感想としての“長期間”であるか否かゆえ,母親の育児に対する感情なども要因として考えられる.今後,可能ならば,前方視的に,多因子解析を施す方法で追試したい.
  母乳育児の推進,あるいは,地域の子育て支援の観点からは最も基本的なことであるが,「母乳育児に関して,結婚までに講義,研修会,体験等の機会がありましたか?」は予想通り,大半の母親が,その機会がなかったと回答した(図5).看護婦,保健婦の専門職以外は,学校教育,生涯学習機会に,母乳育児に関する学びの場を得ていない現状にある.母乳育児は,母子を育む基本となるが,それを実践する上では,地域的な支援体制が必須であることには論を待たない.今後,各種・多様な教育に関する組織に対して,働きかけて行きたい.
結   語
♪ 鳥取県東部地域の周産期センターとして機能している当院で1994年に出産された,医療圏在住の母親を対象として,母乳育児に関するアンケート調査を行った.
  出産後分娩室における最初の直接授乳機会を体験した母親は,120例中96例80%(体験できなかった例は帝王切開例,新生児のNICU入院例)あり,その機会を肯定的にとらえていた.即ち,「安心」「ほのぼの」の回答が有意に高く,逆に「こわい」「緊張」「不安」が有意に少なかった.
♪ 母乳育児の期間が“長期間”であったと感じている母親は,有意に「子育てが楽しかった」「今子育てが楽しい」と回答した.
  結婚までに母乳育児に関する学習機会は,5例が受けていたが,看護婦,保健婦などであり,大半は学習機会を持たなかった.今後,地域的に母乳育児に関する理解を深める上での課題であろう.
♪ 調査にご協力いただいた中船えみ子現副看護部長ほかの諸姉に感謝いたします.

文   献
1)大谷恭一,中船えみ子,西尾巳和子 他:周産期管理における母子同室制の検討.鳥取医誌.20:257−261.1992.
2)大谷恭一:総合病院における出産前小児保健指導の実際.周産期医学.24:712−716.1994.
3)大谷恭一:母乳育児の動向 (総説).鳥取医誌.26:180−185.1998.
4)大谷恭一:鳥取県立中央病院周産期センターにおける母乳育児支援.鳥取医誌.26:186−190.1998.
5)小林 登:周産期医療の人間化.周産期医学.18:5−6.1988.
6)山内逸郎:Rooming-in に思う.助産婦雑誌.43:1016−1019.1989.
7)大谷恭一,常井幹生,星加忠孝 他:鳥取県東部地域における周産期医療地域的システム化の現状.鳥取医誌.22:119−124.1994.
8)大谷恭一,中船えみ子,西尾巳和子 他:鳥取県東部地域における新生児医療地域化−母体搬送例の検討−.鳥取医誌.20:288−290.1992.
著 者:大 谷 恭 一 (鳥取県立中央病院 周産期センター・小児科)

< 追 記 >
♪ このブログの内容は、鳥取県医師会が発行している鳥取医学雑誌に原著論文として掲載(鳥取医誌.26:191−195.1998.)されたものです。鳥取県立中央病院(中病)は、2002年、自治体立病院としては全国で最初に“赤ちゃんにやさしい病院・BFH”に認定されました。BFHは、“Baby Friendly Hospital”の略で、ユニセフ・世界保健機関(WHO)が進めているものです。

熱性けいれん と 対策を考える視点
 (例) 高波の被害と堤防
♪ 熱性けいれんを、高波が堤防を越えた場合の被害に例えて、抗けいれん剤の使い方 について考えてみましょう。発熱を高波に例え、けいれん発作の起こり易さを堤防に例えました。満潮・干潮の差を、その時の体調に例えて、以下の解説をします。
イメージ 1
♪ 図のモデルは、堤防の発達に個人差があることを示しています。通常、4〜5歳になると、少々の高波が来ても、びくともしない堤防に育ちます。が、これには個人差があります。
  そして、小さな高波や大きな高波があります。満潮と干潮では、同じ高波が来ても、安全な時と、被害を被る時がありましょう。
♪ そして、高波が堤防を越えて、被害が出た状態を、熱性けいれんとして考えてみます。
♪ 被害を回避するために、高波が来ると分ったら、土のうを積み上げます。これが、抗けいれん剤の一次的な使用で、一般的には、ダイアップ坐薬を用います。高波が来てから入れたのでは間に合いませんし、あるいは「高波がどの程度の波だろうか?」と眺めていて、土のうが後手になり、高波の被害が出ても困ります。早めに土のうを積み上げることが要になります。
  土のうにはいくつかの種類があります。1個が4mgの坐薬、6mgの坐薬、10mgの坐薬です。過去の被害の状況や、堤防の大きさ(体重)などを検討し、担当の医師に用いる土のうを決めてもらいます。

♪ 高波の被害が、再々繰り返されている例(熱性けいれんが何回もあったとか、24時間以内に複数回生じたなどの例)で、かつ、堤防がしっかりするまでに年月がかかる例(1歳から2歳前後の年齢)や、さらに、1回であっても被害が大きかった例(けいれん重積症の既往や左右差を伴うけいれん発作型など)では、仮設堤防を計画し、実践することがあります。(抗けいれん剤を毎日内服するわけです。)
♪ 仮設堤防の計画は、脳波検査など、評価を行った上でのこととなります。
♪ 仮設とはいえ、最初から大きな建築物にするわけにはいきません。(抗けいれん剤は必要最少限に留めたいのです。)ゆえに、仮設堤防を付けても、それ以上の高波が襲えば、被害が出る(熱性けいれんを来す)ことがあります。
♪ より大きな高波が予測された際には、仮設堤防に土のうを加えて、被害を押えようとすることもあり得ます。


♪ 以上の例えにおいて、例えば、被害の状況を調査し問題があると評価出来た例(明らかな左右差を伴うけいれん発作型)や、大した高波でないのに被害が出た例(38℃に至らない程度の発熱であったのにけいれん発作を来した)とか、堤防を調べて欠陥が発見された例(脳波異常や画像診断で大脳障害が見出されたり、けいれん発作以外に発達遅滞が認められる例)などは、かなりの長期間堤防の補修をしていくことになります(てんかんの診断で、抗けいれん剤(抗てんかん薬)を長期に内服することになります。)
♪ いずれの場合にも、堤防は発達していきますから(子どもの脳は発達しますから)、定期的な評価、方針の再検討などを繰り返していくことになります。
視点を変えて : まとめ
♪ 高波の被害を受けないことが願いになるわけですが、この対策として、三つの方法があります。
♪ どの方法を選択するかは、既に生じた高波の被害状況(けいれん発作の様子)を評価・分析して決定します。あるいは、今後は高波の被害を被らないだろう(けいれん発作が生じないだろう)との評価により、いずれの方法も“なし”で観察することもあります。


1:高波注意報が出た場合(熱が出そうだと感じたとき)に、一時的に、速やかに土のうを積む(ダイアップ座薬を用いる)方法があります。
2:平時から高波に備えるために仮設堤防を築いておく(抗けいれん剤を毎日内服しておく)方法があります。


♪ 以上は、お子さまの年齢、既往のけいれん発作の持続時間・左右差・体温や、お産・新生児期の状況、ことばや運動発達や、熱性けいれんの家族歴などを評価して決定することになります。

♪ 国民健康保険智頭病院


熱性けいれん : 見方・考え方 ♪
熱性けいれん ・ ひきつけのアレコレ
 ・ 熱性けいれんと解熱剤


Q 「熱が出たら解熱剤を早く!」は正しい?
Q 「38.5℃以上になったら解熱剤を用いる」は正しい?
Q 「熱が出たらひきつけるから解熱剤を早めに使う」は正しい?


♪ いずれも正解とはいえません。子ども達の急な発熱は、大半がウイルス感染症です。体の中にウイルスが入り込んで、「ウイルス血症」の状態になったために、体はウイルスが増えにくい環境とするために発熱するのです。つまり、正常な生体の防衛反応、免疫反応が発熱であるといえます。これは、大人も子どもも同様です。ですから、発熱に上手につきあうことが大切になります。機械的に体温が何度になったから解熱剤を使うというわけにはいきません。大人と比べて体重に占める水分量の割合が大きい子ども達の場合、体温が上昇しますと、脱水症に陥り易いので、水分摂取が大切になります。
♪ 水分を取らせようとしても、高熱で、辛そうにして、水分摂取が進まないときに、解熱剤を少し用いて体温を少し落として、水分摂取に努めたいのです。解熱剤をしっかり用いて、平熱まで下がると、再び体温を上昇させる生体の反応が働きます。結局、発熱 ⇒ 解熱剤 ⇒ 発熱と、かえって、子どもを疲労させ、発熱期間を長引かせることになり得ます。
♪ また、子ども達は平熱近くになると、遊び出して、安静が保ちにくくもなるでしょう。
♪ さらに、乳幼児の発熱に対して、解熱剤を多用すると、とくに、A型インフルエンザなどで、(現在では使用しませんが!強い解熱剤)アスピリンを用いると、急性脳症等の怖い状態に陥る危険性が高まることも分かっています。
♪ 一方、体温が39.5℃以上であってもニコニコしている乳幼児に出会うことがあります。稀ですが、体温がそう高くないのに重症感のある子どもさんにも出会います。即ち、体温と重症度は一致しないのです。
♪ 「熱性けいれん」の可能性がある子どもの場合には、私たちは解熱剤の使用を、とくに丁寧にと願います。熱性けいれんの起こりやすい状況を図で解説しましょう。
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♪ 熱性けいれんは、風邪などでの発熱時に、大脳が変化に耐えられず、いわば、パニック状態に陥って正常に機能できない状況だともいえます。熱性けいれんを来しやすいのは、図の(s1)・(s3)・(s3)などです。
♪ (s1)は、それまで元気であったのに急にひきつけてしまい、体が熱かった。つまり、発熱したという場合です。
♪ (s3)は、発熱し、急に高くなってひきつけたという場合です。
♪ そして、少数例ですが、(s3)のように、発熱後しばらくして、より体温が高い状態に変化するときに、いわばついに耐えきれなくなって、ひきつけたという場合です。
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♪ (A)は、乳幼児の体温のリズムを示しています。朝方には最も低く、午後に体温が最も高くなる「日内リズム」が私たちの体にありますが、乳幼児は大人より高いわけです。幼児期までは37.5℃前後までが平熱です。このリズムが大きく崩れるときにパニック状態、つまり、ひきつけるというわけですね。ひきつけない場合でも、熱の出始めは、子どもたちにとって、大人にとっても、つらいわけです。
♪ そして(B)で、高熱になったため水分摂取が進まない場合や辛そうにしている場合には解熱剤を用いることになります。用いる解熱剤は、少し熱が下がって、幾分楽になり、水分摂取が出来るようになることを目的としたいのです。(c1)の状態を目指したいのです。一方、強い解熱剤を用いて、(c2)のように平熱にまで下がりますと、再び体温を上げようとする身体の反応が生じます。つまり、(s4)のようになり、熱性けいれんの点からすると、再び、けいれん発作が起きやすい状態になります。
♪ 脱水症に進まないように、こまめに水分を取ることを大切に考えて、水分摂取に努めたいのです。多くの風邪による発熱は1日程度であったりしますが、中には、高熱が数日に及んだり、ウイルスの種類によっては1週間近くに及んだりすることがあり得ます。熱性けいれんの点からすれば、発熱が続いても(D)けいれん発作は通常起こらないのです。稀ですが、急性脳症とか化膿性髄膜炎など、大脳の病気の場合は例外で、(D)のように発熱が続くまでに診断され、治療が開始されていることでしょう。
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♪ 熱性けいれんの既往のある方の場合、年齢やけいれん発作の型、持続時間等を考慮し、これを予防するための坐薬を適切に用いることをお話します。ダイアップ坐薬という抗痙攣剤の坐薬を、図のように、子どもが不機嫌になり、ぐずぐずしはじめて「発熱するかもしれないな」思えたとき(⇒1a)に、あるいは「熱が出ている!」と気付いたとき(↑1b)に肛門から1個を入れます。そして、おおよそ8時間後に38℃以上の発熱が続いているとき(↑2)に、もう1個入れます。もし、6時間後に高熱であって、8時間後まで待てないときには、どうぞ2個目を用いてください。あるいは、深夜であったりした場合には、発熱が持続していることに気付いたときが6時間後であっても2個目を入れてから、休んでもよいでしょう。逆に、深夜に目覚めたら10時間後であった際にも、発熱が持続していたら2個目を用いてください。2個目を8時間後に入れるのは、決定的なことではありません。体温の状況、皆様の不安、生活時間帯を加味して、6〜8〜10時間後に2個目を用いることをお話しています。
♪ 最初の1個を肛門から入れてからの発熱期間が短く、体温上昇も38℃以下に留まっている場合は、2個目は不要になります。
♪ 以上の方法で、熱性けいれんを予防するのですが、しかし、けいれん発作が起きてしまったという場合や、出生前後の既往、発達歴、脳波所見など、その他多くの要因を考慮して、あるいは、抗痙攣剤の内服を、日々、期間を限って、開始することもあり得ます。
♪ お一人おひとりが異なりますので、保護者の方と、個別的な対応を考えていくことになります。


♪ # 以下は、鳥取県教育委員会・日本海テレビ制作の「すこやか子育て」において用いた資料です。


Q : 「急に意識をなくして、体をガタガタけいれんさせる」というのは、考えただけでも怖い感じがするのですが、実際にはどういう状況なのでしょうか?
A : 私たちは、心をかよわせ、目をみつめてお話しますが、これは「大脳が正常に機能している状態にあるから」とも言えます。大脳が機能するということは、実は非常に小さな電位ですが、電気的な活動が秩序良く動いている状態といえます。脳波を模式的に示します。
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♪ 乾電池は1個何ボルト? ⇒1.5Vですね。模式図で示した脳の活動を示す波の一つが、5ミリメートルの高さであり、これは何と100万分の50ボルトというわけです。脳波は年齢と共に、とくに脳の育ちが著しい乳幼児期〜学童期には、大きく変化・発達します。
♪ そして「けいれん発作」のときは、「正常な脳の活動が障害された状態にある」といえます。脳の障害がどの程度であるかによって、けいれん発作の状態が異なります。程度を決めるための要素としては、時間的なこと、意識障害の程度、ガタガタと体が震える強さ・広がり、呼吸が障害される程度や左右差など、多くの要素があるのです。


Q : 何が原因となってひきつけ(痙攣発作)が起りますか? 高熱のときにけいれん発作を生じる?
A : 発育期にある乳幼児の大脳の機能が未熟であることによって、発熱、とくに平熱の状態から熱がどんどん上昇していく変化が生じることが刺激となって、大脳の正常な機能を乱してしまう。これが原因として最も多い「熱性けいれん」です。
♪ 大人の場合は、通常、発熱があってもこの変化に耐えて、けいれん発作を来すことは無いのですネ。乳幼児、とくに歩行を獲得し、外に出る機会が増えて、感染症に罹りやすい時期に、1〜3歳に多いのですが、発熱というストレスに大脳が耐えられなくなって、機能異常を一時的に伴うのです。
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♪ 図の「A」は「平常に遊んでいたのに、急にひきつけた」というタイプで、「B」は「熱っぽいな、思っていたらひきつけた」というタイプ、そして、「C」は一層体温が上昇してひきつけた例。発熱直前から、発熱期の半日程度までにけいれん発作(ひきつけ)を来すことが多いのです。ひきつけるのは高熱のときだけではないのです。


Q:子どもの発熱は心配ですが、その上さらにひきつけるのは、一層心配なわけですねぇ。けいれん発作が強いとか重いとかは・・・? また、頻度は?
A : 頻度ですが、3歳児健診などを通じた調査で、7%程度に既往があるのです。
Q : 7%というと・・・、13人に1人程度ですか?! 多いですねえ!
A : 子どものけいれん発作、ひきつけは、まれなことではないのです。大半が「熱性けいれん」です。
♪ 私たちは、乳幼児に限らず、学童や成人でも同様ですが、ひきつけの様子や、けいれん発作を来す原因・背景を確認します。表を見ましょう・・・。
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* 熱性けいれんでは、通常左右差はありません。「左右差があるということは、ひょっとしたら大脳の一側に傷があるのかもしれない」と考えさせる要素となります。左右差がある場合には、脳波検査やCT・MRIなど大脳の画像検査の適応を決めます。
*けいれん発作の持続が長いと心配ですね。通常、熱性けいれんは5分以内で終ることが多いのです。
* 回数は、1回のみならば安心なのでしょうが、ときには、1日に数回繰り返しひきつける子がいます。

*体温は、通常38℃以上でひきつけるのが熱性けいれんの定義の一つとなります。低い体温でひきつけた場合には、てんかんの可能性を示唆しているともいえます。


Q : ひきつける年齢にはどういう意味がありますか?

A : はい。実は、新生児期、つまり生まれて1週間程度の時期におけるけいれん発作も多いのですが、この時期は、まだ家庭での生活・育児が始まっていませんから、育児や家庭看護、あるいは家庭における救急措置を考える上で問題になりません。大半を占める「熱性けいれん」は「感染症」にかかる機会などから、生後半年までは意外と少ないのです。そして、3歳を過ぎれば、大脳が発育し、発熱のストレスに耐えてけいれん発作を来さないようになります。この時期になって、初めて熱性けいれんを来した場合にも、私たち小児科医は丁寧に診ます。家庭医や小児科医は脳波検査などを勧めるでしょう。


Q : けいれん発作のときは、親として、どのように対処したらよいのですか?
A : とにかくあわてないことです。けいれん発作の時は、おう吐したり、口の中に分泌物が増えます、よだれが出るような状況になりますから、顔を横に向けます。そう、右肩をやや高くするなどです。これも表にしてみました。
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♪ けいれん発作が終って深い眠りにつくことが多々あります。大脳が疲労したことによる「けいれん発作後の睡眠」であり、このときは、静かに休ませることになります。
♪ 発作は、まれですが、30分以上けいれん発作が続く場合があり、救急の対象で、「けいれん重積症」と診断します。
♪ 心配な場合は、代表的救急診療対象である「けいれん発作」ゆえに、119番に電話するなり、或いは、かかりつけの小児科医に相談されることをお勧めします。


Q : 熱性けいれん以外の子どものひきつけには、どのようなものがありますか?
A : これも表でお示ししましょう。いろいろとあります。「泣き入りひきつけ」はお分かりですか?
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♪ 泣き入りひきつけは、乳児期から2〜3歳までにみられます。「泣く」という行為は、息を吐き続けるということで、泣きながら息を吸わないままでいると、当然しんどくなり、顔色も悪く、チアノーゼ・どす黒くなりますね。ついには、バタンと倒れたり、意識を失ったり、というわけです。幸いなことに、 泣き入りひきつけは年齢が大きくなると共に起こらなくなります。つまり、脳の発達が未熟なために生じる反応です。
Q : いろいろあるのですね。胃腸炎といえば、下痢をして・・・。
A:はい。季節では冬、ロタウイルスを主とする感染性胃腸炎で、熱がないのにけいれん発作を来すことが知られています。これも、大脳に異常があるためではなく、乳児期に特徴的なことといえます。
Q : けいれん発作は、繰り返すということもありますしょうか?
A : はい。熱性けいれんでは、多い場合は10回以上、まれに小学生例があります。通常は、いわゆる「風邪」の発熱に伴う熱性けいれんだというわけです。風邪の熱は人生で、一度だけということはありませんからね。ただし、発熱の原因がウイルス感染による咽頭炎など、いわゆる「風邪」によるのか、「細菌性髄膜炎」など、治療法が異なる中枢神経系の感染症であるのかの診断は不可欠です。
♪ 熱性けいれんの場合、2回以上経験する方は、熱性けいれん全体の約3割程度です。「てんかん」は、原因がはっきりしないのに突然に発作が生じることが特徴の一つとなります。
♪ 実は、子どもでは、てんかんの7割程度は治る(発作が止まる)のです。妊娠・分娩や新生児期の様子、成長・発達の経過や、けいれん発作の状況を詳細に検討し、脳波検査や脳の画像診断など必要な検査を基に、慎重に診断し、丁寧にお話しし、同意を得た上で、治療方針や経過観察の方針を決めます。
♪ かかりつけの小児科医は、小児神経の専門医を紹介されましょう。幸い、鳥取大学医学部には、全国で最初に、「小児神経学教室」が、設けられて、今日に至っています。私もその門下生の一人です。(日本小児神経学会員からは外れています。)


姉妹編 〔熱性けいれん と 対策を考える視点〕もご覧ください。



♪ 鳥取大学医学部 脳神経小児科 ♪
♪ 「臼蓋形成不全」・・・ 一般には馴染みが乏しい医学用語ですネ。
♪ 「股関節脱臼」・・・ これなら馴染みがある
♪ 「先天性股関節脱臼」・・・ 生まれながらに股関節脱臼があるお子様は、実は、非常に少ないのです。「股関節脱臼」に至った多くの例は「臼蓋形成不全」の兆候〜悪化が見逃され、「股関節脱臼」に至るのです。
♪ 旧 HP に随分長い間掲載していた情報を、今回、ブログに up することにしました。


健康な股関節に育てるヒント
:乳児期早期のあおむけ姿勢と股関節


♪ 下の写真は、生後1か月過ぎの赤ちゃんにおけるあおむけ(仰臥位・背臥位)姿勢です。顔の向いた方の手・上肢が伸びて、後頭部に位置する側は屈曲位を示しています。まるで「フェンシングをしている姿勢」、あるいは「弓を射る姿勢」のようですね。医学的にはATNR姿勢と言います。
♪ ATNR姿勢は、早い場合は、生後3週頃から出現します。
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♪ 股関節の発育とATNRの関連はこうです。ATNR姿勢が強いと、上の写真のように下肢の姿勢にも左右差が見られることがあります。

♪ 実は、股関節の発育にとって、右側()は良いのですが、左側()は「股関節脱臼」につながる姿勢なのです。


♪ ときには、下の写真のように、上肢に左右差がないときでも下肢の差がある子に出会います。赤ちゃんの右()は良い股関節の位置ですが、左側()は「股関節脱臼」に進む可能性のある姿勢です。
♪ また、矢印 → で示していますが、左側()は、下肢(大腿)が脱臼する位置にあり、股関節(臼蓋の)形成を阻害する姿勢です。
♪ 見逃すと、(程度は軽〜重とありますが、)やがて「臼蓋形成不全」に至り、さらに、「股関節脱臼」にも至るのです。
♪ 一方、右側()は股関節(臼蓋)形成に望ましい姿勢です。
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♪ 次の写真を見て下さい。手が見えていますが、左右差はないようです。顔は右を向いているようですね。そして、下肢・大腿(太股・ふともも)はどうでしょう。右側()は股関節の発育に良い姿勢です。左側()は立て膝の位置ですね。
 股関節をよりよく育てる位置は、右側()です。
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♪ 写真の女の子が、3〜4か月頃に「股関節脱臼」に関連した診断名が下されると、それは「臼蓋形成不全」で、装具・バンドを用いた治療を受けることになる可能性があります。
♪ 子どもたちの育ちに伴う病気は、当然ですが、全て、可能なら、予防したいわけです。「臼蓋形成不全」・「股関節脱臼」もそうです。つまり、「臼蓋形成不全」の診断名が付く前に、徴候を察知し、より良い股関節の発育を促すことが願いとなりますが、そのヒントが上記の姿勢にあるわけです。
♪ 3つの写真の各々右側()の位置を常にとらせることで、股関節(の屋根部分・大腿骨頭を受けて支える丸天井といえる)臼蓋の良い発育をうながしたいのです
♪ なお、生後1か月前後の赤ちゃんの場合は、小さすぎて、装具がありません。装具を用いるのではなくて、以下の方法で育てます。
おしめ・おむつを二重に充て、両下肢が開排位にあるようにする抱くときは股に手を入れるか、開排位で抱きます
♪ 股関節の発育を良くする姿勢のイメージとして、英語の「M]があります。股関節が「M」の位置にあり続けることが望ましいのです。
♪ なお、「臼蓋形成不全」は、男の子では、そう問題になりません。大半は女の子の病気と言えます。

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