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私はスーツケースとリュックを手に、東京を出た。
西表島しか見たことがないので、
住むかどうかを決めるにあたり、視野が狭くてはいけないと、
宮古島、波照間島、小浜島へ寄ってから、西表島入りするつもりだった。
意外に一人旅をしたことがない。
海外への飛行機には一人で何度も乗っている。
時にはイタリアの空港で、時にはポルトガルのホテルで友人と待ち合わせたり、
タイには家族が住んでいたから何度も訪ねた。
西表島にも1人で行った時も、島には誰かしら知り合いがいた。
最初から最後まで本当に一人きり、というのは初めてかもしれない。
外国なら旅人はある程度放っておかれるけれど、国内では住民との距離が近い。
しかも大学生ぐらいの子の、「いざとなれば外でも寝るわい、ブラリ一人旅」ではない。
新しいことへ一歩踏み出したことでワクワクする気持ちがある一方、
「大丈夫だろうか」という不安も大きかった。
最初の日には、「自家製野菜を使ったおいしい郷土料理を食べられる!」という津嘉山荘を予約していた。
トライアスロンの大会の時には選手もたくさん泊まるそうだ。
サトウキビ畑の中にポツンと宿はあり、畑にいた女の子が部屋に案内してくれる。
しかし、この日にかぎって、おかみさんが急用で留守!
食事を楽しみにしてただけにガックリしていると、
「宿代はただでいいです」
と言われた。
得したような、損したような。
荷物を置いて、レンタカーで宮古島をドライブ。
海があまりにもきれいなエメラルドグリーンで、
「バスクリンみたい…」
と不覚にもお決まりのセリフをつぶやいてしまった。
展望台で海を見ていると、農作業の途中で休憩していたおばちゃんがおいでおいでをする。
なんだろう、とちょっと不審に思いながらも近づいていくと、
おばちゃんはニコニコと東京にいる自分の息子のことや島のことをあれこれ話してくれた。
しかも気がつけば手をつないでいる。
すっかり打ち解けて、
「マンゴーを親に送りたいんですけれど、美味しいところはありませんか?」
と聞くと
「この先にあるよ。紳助が気に入ってテレビで言うもんだからすごい人気なのよ。」
と教えてくれた。
マンゴー農園には生まれて間もない子犬がいた。
私を見ると、網戸を破って私の足元にからみついてきて、可愛いことこの上ない。
農園のおばちゃんは忙しそうだったので、しばらく犬と遊んでいた。
このまま一週間遊んでいたいぐらいだ。
おばちゃんがひと段落したので、マンゴーを注文。
私が大のマンゴー好きとわかると、マンゴージュースと小さなマンゴーをくれた。
しばらくゆんたくして、別れをつげる。
旅の最初から島の人たち2人に親切にされて、私は幸せな気分だった。
3人目の親切さんは、東京のライブで知り合った宮古んちゅの人。
1度会ったきりなのに、電話をしたら、同窓生との飲み会に私も連れて行ってくれるという。
そこで初めて、噂に聞いた「オトーリ」を体験。
一人ひとりあいさつしながらお酒を飲む。
すごい飲まされる、と聞いたけど、別に無理じいするわけでもないし、飲めるだけ飲めばよかった。
初めて会った人ばかりだったけれど、みんな親切にしてくれて、楽しい晩だった。
緊張が解けた分、飲みすぎてしまった。
次の日、ひどい二日酔いだったから、津嘉山荘でご飯が出なくて、正解だったかもしれない。
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