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エッセー「杜若」

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「杜若」(カキツバタ)

.雨の晴れ間にアヤメやカキツバタの花が美しい。
 アヤメとショーブとカキツバタは、うっかり間違えやすい。
 アヤメは 乾いた土に生える  葉は細長い
 ショウブは 湿地に生える   葉の中央に突起
 カキツバタは 水中に生える  葉は幅広で長い
 花言葉は 「雄弁」

 杜若で思い出すのは、
高校の古典で習う、在原業平(ありわらの なりひら)の和歌である。
 「むかし、おとこありけり」で始まる『伊勢物語』のヒーローとみなされる業平は、
桓武天皇の孫に当たる御曹子で、世にもまれな超イケメンであったという。
 彼が多くの高貴な女性との恋に落ちたことは想像にかたくない。

 彼は和歌の詠み手で、天皇に和歌をたてまつったりして勤めていたが、
藤原氏の興隆により権力の中枢から外されて、関東に下らねばならなくなった。

 旅の途中、三河あたりの沢のほとりに、杜若が美しく咲いているのを見て、
お供の者が「かきつばた」を句に詠み込んだ一首をと言い出したので、

「から衣、きつつ馴れにし、妻しあれば、 はるばる来ぬる、旅をしぞ思う」
(着馴れたころものように馴れ親しんだ妻を 都に置いて来たつらい旅である)
と詠んだので居合わす者一同、涙の袖をしぼったのであった。

業平の短歌
   * つついつのいづつにかけしまろがたけ すぎにけらしな妻みざるまに

   * 風吹けば沖つ白波たつた山 夜半にや君がひとり越ゆらん

   * 駿河なる宇津の山辺にうつつにも 夢にも人にあわぬなりけり


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