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4月28日、国際原子力機関(IAEA)がイランの核開発に関する報告書を国連安保理に提出した。報告内容のポイントは、(1)イランが平和利用の低濃縮ウラン(3.6%程度)の製造に成功したことを確認(新に2つの濃縮装置を設置)、(2)ナタンツの実験工場をはじめ同国の核開発疑惑解明を目指すIAEAの調査への非協力(核弾頭のマニュアルらしき資料の提出拒否)、(3)開発への軍事関係者の関与の指摘などである。同報告を受け安保理は、5月3日より協議を行うが、イランの核問題のコミットメント・グループ(安保理常任理事国プラス、ドイツ)は、これに先駆け2日に事務レベル会議を開催し(米仏提案の安保理決議案の審議)、さらに、9日にニューヨークで外相会議をもつ予定である。今後、安保理では国連憲章第7章に基づいた決議案づくりが主題となるが、ロシアと中国はイランに対する権益より、反対にまわる可能性が強い。4月28日にも、中国の国連大使は、第7章の適応は中東地域を混乱させるとの発言を行っている。
一方、イランは29日、サイディ原子力庁次長が国営テレビで、核開発問題をIAEAとの協議に差し戻すならば査察に応じる用意がある旨の発言をし、国際社会との交渉の余地挙があることをアピールしている。このように、イランは欧米が一方的に同国に制裁を掛けようとしているとのイメージをつくり出し、開発途上国を味方につけようとしている。また、アハマデネジャド政権は、イランの核保有はNPT体制の加盟国の権利であると主張し、それを阻止することは内政干渉に他ならないとの見方を国民に植え付けようとしている。そこでは、国際社会が共有している核拡散の脅威認識が深まる余地は少ない。
このような開発途上国とイラン国民の現状や原油価格高騰の中で、欧米側は経済制裁や武力行使を選択することは慎重にならざるを得ない。これに対しイラン側は、追い討ちを掛けるように、軍事訓練や武力行使への報復計画をマスメディアにリークするなど原油価格の上昇要因をちらつかせ、欧米諸国に国際経済の混乱という心理的圧力を掛けている。ここでリークの一例として、4月27日にイラン軍関係者がシャルクル・アウサトに語った内容の一端を紹介する。報復計画には、イランの核施設に軍事攻撃がされた場合、第1段階として、(1)ペルシャ湾諸国とイラクの米軍基地、大使館、石油関連企業などにミサイル攻撃、(2)ヒズボラがイスラエルの軍事施設を攻撃する、第2段階として、(1)カナダ、米国、欧州でのテロの実施、(2)イスラエルへの「シャハブ3」ミサイル攻撃の実施、第3段階として、化学兵器、核汚染物質などの大量破壊兵器の使用があるという。この計画のコードネームは「審判の日」で、イランの革命防衛大が中心的役割を担っていると報じられている。
現状のイランの核開発問題が、このような軍事的危機に結びつく蓋然性は低いと思われる。しかし、その蓋然性をさらに低くするために、紛争解決学から見て次のような方法が考えられる。第1は、イラン人の誇りを尊重し、民生用核開発を承認する。その際、低濃縮ウランしか製造しないことを神に誓約させ、遵守規定、査察方法、違反措置を定めた協定をIAEAと締結させる。第2は、IAEAとの交渉を継続する一方、一部の国が要人接触制限、資産凍結などの制裁措置を行う。第3は、国連安保理が軽度の制裁から段階的に経済制裁まで状況を見て実施していく。
国際社会はイラクでの教訓があり、イランへの武力行使にはより慎重に対応すると思われる。現状、イランが恐れていることは、国際社会での孤立化、経済制裁、原油価格の下落から生じる財政難であろう。こうしたことを踏まえ、国際社会は対イラン政策を考えねばならないのだが、重要な点は、イラン国民自身がイラン政府に向かって、核の平和利用はイエスだが核兵器開発にはノーと言えるよう啓蒙することだろう。
☆「複眼で見る中東報道」(http://cigvi.exblog.jp)もお読みいただければ幸いです。
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僕にとっていちばん疑問なのが、イラクの核開発がほんとうに平和利用のみのための開発であるかどうかという点です。現在の政治情勢を考えると、このタイミングで核開発を始めるというのは誤解を招いても仕方がないのではという気がします。しかし、本当に誤解だったらとんでもなく危うい方向に動いているわけだし、もし核兵器の製造を視野に入れているとすれば、それはさらに危ない方向だとしか言いようがありません。僕としては、今のこのタイミングで核開発というのはやめてほしかった。
2006/4/29(土) 午後 11:09 [ おさむ ]
イランの核開発の目的の一つは、石油、天然ガス、原子力エネルギーでビジネスができるエネルギー大国になることだと考えられます。この3つの柱でビジネスを行えているのは、現在、ロシアだけです。イランには大国として世界に認められたいとの強い思いがあるようです。また地政学的に、その延長で、防衛のための核兵器開発も視野に入ってるでしょう。ただし、核兵器にするには濃縮技術を高めねばなりません。国際社会にはもう少し交渉のための時間があるといえます。
2006/4/30(日) 午前 0:57 [ cigvi2006 ]