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11月5日、イラクの高等法廷は1982年のドゥジャイル村でのシーア派住民殺害事件(148人)で、フセイン元大統領に死刑判決を下した。この判決への反応は様々で、イラクでは、ナジャフやバグダードのサドルシティーで判決支持のデモが見られた。一方、スンニー派地域では、茶番劇だとの非難も聞かれている。国際社会においては、アムネスティー・インターナショナルやイスラム系人権団体から、同裁判は国際法の慣例に違反している点が多く見受けられるとの非難の声が出された。これに対し、米国とイギリス(死刑には反対)はそろって法の統治の回復を強調した。そこで、このように意見が分かれているフセイン裁判について考えてみたい。
イラク高等法廷は、2003年12月に占領当局によって設置された「イラク特別法廷」がもととなり、2005年に国内法に基づいて設置されたものである。この制度においては、終身刑以上の判決が下された場合、自動的に控訴院(裁判官9人)に送られ、裁判内容や法解釈のチェックを行うことになっている。今回の裁判の今後の日程は、1審の判決後10日以内に控訴審が開かれ、20日間ぐらいで審議を終えることになっている。そこで有罪となった場合、30日以内に刑が執行されることになる。欧米では、この30日以内の刑執行や、死刑という量刑について、この裁判に否定的な見方をする人も多い。
この裁判に関する評価の違いは、大別して二つの観点の違いからくると言えるのではないだろうか。第1は、国際協力学の観点である。この見方からすると、復興や紛争再発を防止する上で、紛争後の法の統治の回復が非常に重要だと考えられている。しかし、実際の紛争後の法の整備、治安体制、司法体制の確立は、過去の事例から見ても難しい。したがって、同観点からは、今回は国際介入から3年半経過した時点で国内法を基に裁判を行えたことを評価している。
第2は、司法の独立および法の運用面に注目する法学の観点である。この観点からは、サッダーム被告の弁護士が暗殺の対象となったり、裁判官が行政の圧力で辞任に追いやられ、さらに争点となるべき前政権時代の国家反逆罪に関する論争が不十分であることなどに注目している。これらの点から、公判のあり方自体に問題があるとして、報復判決だとの評価をくだしている。
この二つのどちらが正しいか、ということが問題なのではない。紛争後の国家の再建に際してはどちらも重要な観点であり、ケース・バイ・ケースでバランスをとっていく必要があるといえる。特に現状のイラクの場合は、帰属利益集団間の対立が最近激化しており、より現実的対応が求められることは間違いない。しかし、この判決が短期的に治安を悪化させたとしても、中長期的に見たイラク情勢にあまり影響を与えることはないと思われる。むしろ、米国の中間選挙後のイラク政策の変更内容が今後のイラクを大きく左右するカギとなるだろう

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